323/444
第323話「使者が持ち帰ったもの」
地方領の使者が戻ってきた。
王都から。
館の主が出迎える。
「どうだった」
使者は少し間を置いた。
「……見てきました」
「それで」
「……ゼル・アークレイドという男が、王城前に座っています」
主は頷く。
噂では聞いていた。
「兵は動かなかったか」
「動きませんでした。百日以上、誰も手を出していません」
沈黙。
「近衛は」
「……減っています。街の者たちは普通に暮らしていました。ただ」
使者が言葉を選ぶ。
「……王城だけが、沈んでいるように見えました」
主は窓の外を見る。
自分の領地。
静かな田畑。
煙が上がる家々。
王都とは別の世界のようだ。
だが繋がっている。
そしてその繋がりが、少しずつ変わり始めている。
「……分かった」
短く言って、主は部屋を出た。




