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裏切られた俺だけが覚醒した 《契約支配(ドミネーション・コントラクト)》 ――奪われたすべてを、奪い返す 〜今さら謝ってももう遅い〜  作者: 竜太郎


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320/444

第320話「地方で生まれた名前」

 王国南部、小さな村。


 夜、炉端に三人が座っている。


 農夫と、元兵士と、行商人。


 話題は王都だ。


 最近はいつもそうだ。


「……まだいるらしいぞ」


 農夫が言う。


「何もしないのに?」


「ああ、座ってるだけだと」


 行商人が口を開く。


「王都で見た。本当に動かない」


 沈黙。


 炉の火が揺れる。


「……何者なんだ」


 元兵士が呟く。


 誰も正確には知らない。


 だが噂はある。


 十年閉じ込められた男。


 裏切られた男。


 それでも生きている男。


「……名前、なんていうんだ」


「ゼル、とか」


「ゼル」


 元兵士は繰り返す。


 覚えておこう、という顔をしていた。


 それだけだった。


 だがその夜、南部の小さな村で、一人の男がその名前を記憶した。


 王都から遠く離れた場所で。

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