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第319話「ヴァルディスの静止」
ヴァルディスは地図を広げていない。
報告書も読んでいない。
窓辺に立っている。
それだけだ。
近くに騎士が一人いる。
何も言わない。
言えない。
広場にゼルがいる。
百日を超えた。
ヴァルディスはそれを数えていた。
正確に。
毎朝確認していた。
百十四日目。
剣を抜かない。
声を上げない。
命令を出さない。
それなのに王国は変わり続けている。
「……おかしい」
独り言だった。
「何が、とは言わない」
騎士は黙っている。
「全部だ」
静かな声。
窓の外、広場の人々は笑っている。
子供が走っている。
王城の中だけが、少しずつ重くなっていく。
ヴァルディスはそれを眺めている。
研究するように。
ただ、眺めている。




