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第318話「伝令の顔」
王城の廊下を、若い伝令が走っていた。
書類を抱えている。
急いでいる。
だが途中で止まった。
届け先の執務室、扉が閉まっている。
ノックする。
返事がない。
もう一度。
やはりない。
隣の部屋を確認する。
そこにいた文官が顔を上げた。
「……ああ、昨日付けで」
言いかけて、止まった。
「……退役です」
短い言葉。
伝令は頷く。
では誰に渡すか。
文官も分からない顔をしている。
二人で少しの間、廊下に立っていた。
書類は急ぎだ。
だが渡す相手がいない。
どこかで処理されるはずの案件が、ここで止まっている。
伝令は書類を胸に抱え直す。
また走り始める。
届け先を探しながら。




