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第317話「看板が外れた日」
王都北通り。
商会の看板が外れた。
昨日まで掛かっていた。
今日はない。
通りがかった男が立ち止まる。
見上げる。
壁に釘の跡だけ残っている。
閉めたわけではない。
移ったのだ。
王都の外へ。
男は少し考えて、歩き出す。
特に驚きはなかった。
最初に驚いたのは、もう先月の話だ。
今は慣れた。
慣れてしまった、という方が正確かもしれない。
通りを抜けると、広場が見える。
ゼルはいる。
今日も椅子に座っている。
男はそちらを一瞥して、目を逸らす。
何かを言う気にはなれなかった。
足音だけが石畳に響く。
看板の跡は、雨が降れば消えるだろう。
それだけのことだった。




