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第207話「広場の習慣」
朝。
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王城前広場。
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冷たい風。
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だが。
もう。
誰も驚かない。
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ゼルはいる。
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静かに。
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王城を見ている。
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それが。
少しずつ。
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王都の“習慣”になり始めていた。
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「……今日は少し寒いな」
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露店の男が呟く。
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湯気の立つ飲み物を並べる。
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客も頷く。
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「……あいつ」
「……寒くねえのかな」
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一瞬。
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視線がゼルへ向く。
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濡れた石畳。
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風。
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動かない男。
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誰も近づかない。
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だが。
見てしまう。
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そして。
少しだけ。
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慣れ始めている。
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「……変だよな」
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「……怖いのに」
「……いるのが普通になってきた」
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返事はない。
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だが。
皆。
同じことを思っていた。
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一方。
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近衛騎士たちは。
その変化が恐ろしかった。
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広場が。
日常へ寄っていく。
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なのに。
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自分たちは。
まだ恐怖の中にいる。
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その温度差が。
静かに精神を削っていた。




