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第206話「城内の沈黙」

 王城内部。


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 廊下は静かだった。


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 使用人たちは。


 必要以上に喋らない。


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 足音も小さい。


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 笑い声は消えた。


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 誰もが。


 空気を読んでいる。


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 張り詰めている。


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 理由は。


 外。


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 王城前。


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 ゼル。


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 そして。


 変わらないヴァルディス。


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「……まだいるそうです」


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 若い侍女が小声を漏らす。


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「……知ってる」


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 年配の使用人が即座に返す。


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 少しだけ周囲を見る。


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「……余計なこと言うな」


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 短い声。


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 怖いのだ。


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 何を口にしても。


 どこへ繋がるか分からない。


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 一方。


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 最上階。


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 ヴァルディスは静かに窓際へ立っていた。


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 遠く。


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 王城前。


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 ゼル。


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 まだ動かない。


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「……沈黙は人を壊す」


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 小さな呟き。


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 感情はない。


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 ただ。


 事実を眺めるような声。


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 近くの騎士が息を呑む。


---


 城の沈黙。


 広場の沈黙。


 近衛の疲弊。


---


 全部。


 少しずつ積み重なっている。


---


 王国の均衡が。


---


 音もなく。


 軋み始めていた。


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