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第205話「広場の噂」
昼。
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王城前広場。
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人が増えていた。
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以前の恐怖一色とは違う。
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見に来る者。
様子を窺う者。
ただ通る者。
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奇妙な空気だった。
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誰も近づかない。
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だが。
離れない。
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「……まだ動かないんだな」
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露店の男が呟く。
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パンを並べながら。
ちらりと王城前を見る。
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ゼル。
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まだ立っている。
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「……なんかさ」
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客の男が小声を出す。
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「……最初は怖かったんだけど」
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一瞬止まる。
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「……今は」
「……王城の方が怖くねえか?」
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沈黙。
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危険な言葉。
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だが。
誰も怒鳴らない。
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否定もしない。
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以前なら。
絶対に口にできなかった。
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それが。
少しずつ。
王都の空気を変えていた。
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一方。
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ゼルは動かない。
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風だけが吹く。
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市民の会話にも。
視線を向けない。
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ただ。
王城を見る。
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その姿が。
逆に。
人々へ静かな圧を与えていた。




