第125話 最初に崩れる者
―王都・中層区・小貴族邸―
(小貴族視点)
「……大丈夫だ……」
何度も繰り返す。
意味はない。
分かっている。
―小貴族―
「……ただの偶然だ……」
机を握る。
手が震えている。
―記憶―
地下。
暗闇。
拘束。
あの“少年”。
―呼吸―
「……っ……」
浅い。
止まらない。
―否定―
「……関係ない……」
「……俺は……」
言葉が途切れる。
―真実―
見ていた。
笑っていた。
軽く扱っていた。
―崩れ―
「……っ……違う……!」
立ち上がる。
だが。
足が動かない。
―違和感―
静かすぎる。
屋敷の中。
音がない。
―小貴族―
「……誰か……!」
叫ぶ。
返事はない。
―恐怖の確定―
“誰もいない”。
使用人。
護衛。
全員。
いない。
―理解―
「……来てる……」
小さく呟く。
否定できない。
―気配―
背後。
何もない。
だが。
“いる”。
―小貴族―
「……やめ……」
振り向く。
―視線―
目が合う。
―ゼル―
そこにいる。
静かに。
何も変わらず。
―停止―
声が出ない。
体が動かない。
―小貴族―
「……あ……」
意味にならない音。
―記憶の再現―
地下。
同じ目。
同じ距離。
―ゼル―
「……見ていたな」
淡々と。
―小貴族―
「……違……」
言い切れない。
分かっている。
無駄だと。
―崩壊―
膝が落ちる。
立てない。
逃げられない。
―締め―
最初に壊れたのは。
弱い者ではない。
“理解した者”だった。




