第123話 貴族たちのざわめき
―王都・上層区・貴族会館―
(貴族視点)
「……聞いたか」
低い声。
重い空気。
―貴族A―
「……何をだ」
表情は崩さない。
だが。
視線が揺れている。
―貴族B―
「……エリナが……消えた」
短く言う。
―沈黙―
数秒。
誰もすぐには反応しない。
―違和感―
“死んだ”ではない。
“消えた”。
その言い方。
―貴族C―
「……どういう意味だ」
声が低くなる。
―貴族B―
「……屋敷の中だ」
「……何も起きていない」
「……だが……いない」
―理解不能―
あり得ない。
警備もある。
結界もある。
侵入は不可能。
―貴族A―
「……あり得ん」
即答。
だが。
否定に力がない。
―貴族B―
「……だが事実だ」
視線を逸らす。
―空気の変化―
ざわつく。
静かに。
だが。
確実に。
―貴族C―
「……他は」
小さく聞く。
―貴族B―
「……まだ動きはない」
「……だが……」
言葉を切る。
―全員の理解―
“まだ”。
それが。
一番重い。
―別視点:若手貴族―
「……冗談だろ……」
椅子に座ったまま。
動けない。
―若手貴族(心中)―
(……あの時の話……)
地下。
噂。
封じられた話。
―恐怖の連鎖―
(……まさか……)
思い出す。
消したはずの記憶。
―場面転換―
―貴族会館・奥の間―
(上位貴族視点)
「……静かにしろ」
一言。
空気が止まる。
―上位貴族―
「……確定情報か」
―報告役―
「……はい」
短く。
迷いなく。
―上位貴族―
「……そうか」
それだけ。
だが。
その一言で。
全員が理解する。
―意味―
否定されなかった。
つまり。
事実。
―締め―
まだ何も起きていない。
だが。
確実に。
“何かが始まっている”。
そのざわめきは。
やがて。
逃げ場のない現実へと変わっていく。




