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第110話 向き合う罪

―王都・上層区・エリナの部屋―


 静寂。



 何も動かない。



 音もない。



 ただ。



 二人がいる。



―エリナ―


「……っ……」



 呼吸が乱れる。



 視線が外せない。



 逃げられない。



―ゼル―


「……」



 動かない。



 立っている。



 それだけ。



 だが。



 圧がある。



―沈黙の重さ―


 言葉が出ない。



 出せない。



 出した瞬間。



 すべてが壊れる気がする。



―エリナ―


「……」



 口を開く。



 だが。



 閉じる。



―繰り返し―


 言おうとする。



 止まる。



 また。



 止まる。



―本能―


 言ってはいけない。



 そう分かっている。



 だが。



 何も言わないのも。



 許されない。



―ゼル―


「……」



 見ている。



 何も言わない。



 責めない。



 だが。



 逃がさない。



―エリナ―


「……あの……」



 声が出る。



 かすれる。



 途切れる。



―言葉未満―


 意味にならない。



 繋がらない。



―ゼル―


「……」



 反応しない。



 急かさない。



 ただ。



 待つ。



―時間―


 数秒。



 長い。



 異常に長い。



―エリナ―


「……私……は……」



 言葉が続く。



 止まらない。



 止められない。



―記憶の重さ―


 地下。



 暗闇。



 視線。



 沈黙。



―エリナ―


「……見てた……」



 小さく。



 はっきりと。



―確定―


 否定しない。



 できない。



―ゼル―


「……ああ」



 短く返す。



 それだけ。



―その一言の重さ―


 否定しない。



 責めない。



 だが。



 “事実として受け取る”。



―エリナ―


「……止めなかった……」



 続く。



 震える声。



―涙―


 こぼれる。



 止まらない。



 初めて。



 完全に。



―締め(未完)―


 言葉はまだ続く。



 だが。



 それを最後まで言うには。



 まだ。



 “時間が足りなかった”。





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