第108話 会うべきではない相手
―王都・上層区・エリナの部屋―
夜。
静寂。
だが。
落ち着きはない。
―エリナ―
「……っ……」
床に座り込んでいる。
呼吸が整わない。
視線が揺れる。
―残留する記憶―
地下。
暗闇。
冷たい床。
そして。
“ゼル”。
―確定した事実―
見ていた。
知っていた。
止めなかった。
関わった。
―エリナ―
「……なんで……」
震える声。
答えはない。
ただ。
事実だけが残る。
―恐怖の変化―
今までの恐怖とは違う。
これは。
“来る恐怖”。
―直感―
「……来る……」
小さく呟く。
理由は分からない。
だが。
分かる。
―存在の気配―
何も起きていない。
音もない。
変化もない。
それなのに。
空気が変わる。
―エリナ―
「……やめて……」
無意識に言う。
誰に向けてかも分からない。
―外視点:屋敷前・近衛騎士―
「……ん?」
騎士が顔を上げる。
何かに気づく。
―騎士A―
「……どうした」
―騎士B―
「……いや……」
言葉を濁す。
―違和感―
何もない。
だが。
“何かがおかしい”。
―騎士B(小声)―
「……空気が……重い……」
理由は分からない。
だが。
確実に。
違う。
―場面転換―
―王都・上層区・通り―
(一般人視点)
「……なんだ……?」
人が立ち止まる。
周囲を見る。
変わらない街。
だが。
妙に静か。
―違和感の共有―
「……急に……」
「……寒くないか……?」
誰かが言う。
気温は変わらない。
だが。
感覚が違う。
―本質―
“何かが近づいている”。
だが。
誰も正体は分からない。
―場面転換―
―エリナの部屋―
エリナは動けない。
立てない。
逃げられない。
―エリナ―
「……来る……」
はっきりと言う。
もう否定しない。
―確信―
これは勘ではない。
理解でもない。
“確定”。
―締め―
会ってはいけない。
分かっている。
だが。
止められない。
その距離は。
確実に。
縮まっていた。




