第106話 逃げられない記憶
―王都・上層区・エリナの部屋―
夜。
静かだ。
だが。
その静けさが。
逆に重い。
―エリナ―
「……ゼル……」
もう。
自然に出る。
止める意識すらない。
―変化―
拒絶は残っている。
だが。
押さえ込めていない。
―侵食の深化―
暗闇。
地下。
冷たい床。
そして。
“あの場所”。
―断片の拡張―
人影。
複数。
その中で。
自分も。
“立っている”。
―エリナ―
「……私……」
初めて。
“自分”が入る。
―理解未満の接続―
見ていた。
そこにいた。
関わっていた。
それが。
否定できない。
―拒絶の崩壊直前―
「……違う……」
言う。
だが。
声が弱い。
―核心の影―
何かをした。
決定的な何か。
取り返しのつかない何か。
―エリナ―
「……やめて……」
小さく呟く。
今までで一番弱い声。
―感情の発生―
怖い。
逃げたい。
見たくない。
―だが―
止まらない。
消えない。
むしろ。
はっきりしてくる。
―決定的直前―
地下。
暗闇。
そして。
“彼”。
視線。
何も言わない。
ただ。
“見ている”。
―エリナ―
「……あの時……」
言葉が出る。
初めて。
“時間”が繋がる。
―停止―
だが。
その先。
言葉が出ない。
―限界―
「……っ……!!」
頭を押さえる。
呼吸が乱れる。
体が震える。
―拒絶の最終ライン―
ここから先。
思い出せば。
戻れない。
―本能―
それだけは分かる。
―締め―
逃げ場はない。
だが。
まだ。
“思い出してはいけないライン”で止まっている。
その境界が。
今。
崩れようとしていた。




