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第101話 抑えきれない記憶

―王都・上層区・エリナの部屋―


 静かだ。


 昼。


 光が差し込む。


 変わらない景色。


 変わらない部屋。


 変わらないはずだった。


―エリナ―


「……」


 椅子に座っている。


 動かない。


 視線は前。


 だが。


 見ていない。


―違和感の継続―


「……また……」


 小さく呟く。


 同じ。


 何度も。


 頭の中に浮かぶ。


―侵食―


 暗闇。


 冷たい床。


 鎖の音。


 そして。


 “誰か”。


―エリナ―


「……誰……」


 前よりも。


 はっきりと言う。


―断片の強化―


 黒い髪。


 無表情。


 静かな目。


 ただ。


 見ている。


―反応―


「……っ……!」


 息が乱れる。


 胸が締め付けられる。


 理由は分からない。


 だが。


 確実に。


 “何かがある”。


―記憶の接続未満―


 知っている。


 関わっている。


 重要な何か。


 だが。


 繋がらない。


―崩れかける均衡―


「……違う……!」


 強く言う。


 今までよりも。


 明確に。


―拒絶の強化―


「……関係ない……」


 繰り返す。


 自分に言い聞かせるように。


―限界―


 だが。


 消えない。


 むしろ。


 濃くなる。


―初の“音”―


「……ゼ……」


 止まる。


 言葉が途切れる。


―エリナ―


「……今の……」


 初めて。


 “言葉”が出かけた。


―恐怖―


 知らないはず。


 覚えていないはず。


 なのに。


 出た。


―動揺―


「……違う……!」


 立ち上がる。


 椅子が倒れる。


 初めての乱れ。


―呼吸の崩れ―


 息が荒い。


 視線が揺れる。


 手が震える。


―自己否定―


「……違う……違う……!」


 繰り返す。


 止まらない。


―締め―


 抑え込んでいたもの。


 消したはずの記憶。


 それが。


 初めて。


 “言葉”になろうとした。


 その瞬間。


 均衡は。


 完全に崩れ始めていた。



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