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黒い翼の魔法少女~指名手配された彼女は今日も元気にBLを嗜む~  作者: 浦野 情


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第6話 ようこそ、天桜院へ!

 

 いつもと違う車に乗っていると、それだけで見慣れた街も違う場所に感じてくるものだから不思議だ。

 それこそ、リムジンともなればなおのこと。


『なにじろじろ窓の外見てるんだ?』


「いや……なんか、私これから魔法少女として活躍するんだって思ったら、なんか不思議な感じがして」


『別に、お前にとってはいつもと変わらない景色だろ。まあ、俺にとっては全てが真新しく見えるがな』


「そういえば、あんたと一緒に外出するのって、市役所に登録しに行ったとき以来だもんね」


『周りの人から見られるのが嫌だからってあんなだだっ広い部屋に閉じ込めやがって。失礼な話だぜ』


「だってあんたの見た目、見ようによっては変態か露出魔の恰好してるし」


『それこそ失礼な話じゃないか?』


 車が交差点を右に曲がった。これだけ長い車だと曲がるのも大変そうだが、運転手の人は巧みなハンドルさばきでこともなげに曲がって見せた。


『そういやお前、学校とやらには行ってないのか? ここ数日、部屋でだらだら過ごしていたけどよ』


「……うん、今は行ってないの。ちょっと、色々あって」


『へぇ。別に行かなくてもいいものなのか。母親はだいぶ深刻そうな顔してたけど、案外気楽なもんなんだな』


「…………」


 車は国道をぐんぐんまっすぐに進んでいく。都会のど真ん中を走ってるとは言っても、こんな大きい車目立ったりしないのかな。


「そういえばあなたの精霊、言葉を喋れるのね」


 助手席に座っていた早苗さんが話しかけてきた。


「えっ、はい。普通の事なんじゃないんですか?」


「いいえ。普通の精霊は人間の言葉を喋れないのよ。昔は話せる精霊もそこそこいたけど、今は本当に数が少なくなっちゃったの。だから、申請書で言葉をしゃべれる精霊がついているって書いてあったのを見た時は、最初本当なのか疑っちゃったわ」


「そうなんですか……」


「まあ、言葉をしゃべれる精霊と契約した魔法少女は素質が高いって研究結果もあるし、あなた、相当運がいいわよ。神様に感謝しなさい」


『だとよ。お前と契約してやったこの俺に感謝するんだな』


「感謝するのは神様であってあんたじゃないでしょ……」


「ほら、着いたわよ」


 なんやかんやしゃべっているうちに、車は大きな横開きの門を通った。


「ここが、魔法少女育成施設、通称『天桜院』よ」


 そこは、幾多の建物が立ち並ぶ、研究機関のような場所だった。


 敷地面積は広すぎてよくわからないけれど、中学の敷地の何倍もあることは確かだった。そういえば、有名大学の中でも広い敷地を持つ大学の広さがこれくらいだったと聞いた覚えがある。


 敷地の中には、広いグラウンドやテニスなどをする球戯場が設けられているスペースもあった。この調子だと、おそらく体育館のようなジム施設もあると思う。


「こういったスポーツをする場所は、魔法少女たちにとっての心身を養う機会につながりますからね」


 私の興味に合わせるように、早苗さんが解説してくれた。


 だが、そんなスポーツ施設の中に、とても大きな案山子のようなものが置いてあるだだっ広い広場があるのを見つけた。あれは一体……?


「あれこそ、魔法少女としての技術を図るための訓練場です。あそこの周りには魔導機関による特別な結界が張られていて、並大抵の魔法少女の技では壊れないように出来ているんですよ」


 またもや解説をはさんでくれる早苗さん。というかまるで私の心を読んでいるようで少し怖いんですけど……。


「なんかまるで学校みたいですね。色々な設備が整っていて、なんというか……」


「そうね。確かに魔法少女はほとんどが学生さんだから、見慣れた雰囲気にするためにも、あえて学校を意識している部分はあるかもしれないわね」


「な、なるほど……」


 学校か。本来の学校にはあんまりいい思い出がないけれど、ここなら私もまた、あの頃みたいに活躍できるのかな。


「さあ、到着したわよ。降りて頂戴」


 ボディガードの人にドアを開けてもらった私は、恐る恐る車を降りる。


 なんだか、場違い感がすごい……。ここまでしっかりと舗装された綺麗なコンクリートの地面はあまり見たことないかも。


「この建物よ」


 早苗さんに案内されるがまま、私は数階建ての小さなビルの中に入った。


「あなたが所属するのは、魔法少女課第14部。これからあなたには、ベテランの魔法少女の先輩一人と、あなたを含む新人の魔法少女4人でチームを組んでもらうわ」


 長い階段を登りながら、早苗さんが説明する。


「既にあなた以外の四人は部屋に集まっているわ。結構個性的な子が多いけれど、仲良くしてあげてね」


 この部屋よ、と早苗さんが一つの部屋のドアの前で立ち止まった。

 そして、コンコンとノックした後、ドアを開ける。


「あら、いらっしゃ~い。あなたが新しい魔法少女さん?」


 その時、私の目に映ったのは、今までずっと憧れていた人の姿だった。


 聡明な青い瞳とは裏腹に目立つ、可愛らしいツインリングの髪型。整った顔立ちから発せられる笑顔は、人々に安心感を与える女神さまのよう。


 そして、夏の季節にはふさわしくないはずなのに、何故か着慣れている感を醸し出している青いセーターは、青の髪色と相まってとても美しく映える。それはまるで、氷の国のお姫様がそのまま出てきて、現代の文明になじんだ姿のよう。


 私は、尊敬する人を前にして、しばらく緊張で動けないでいた。


 そこへ、


「歩夢さん、自己紹介を」


 早苗さんに促されて我に返った私は、慌ててその人に自分の名前を名乗る。


「は、初めまして。私、新しく魔法少女になった一ノ瀬歩夢と言います! これからよろしくお願いします!」


 すると相手は、これまたにこっと見る者の心がポカポカするような笑顔を向けて、


「うふふ、そんな緊張しなくていいからね~。うちは如月藍里。これからよろしくね~」


 と言って、なんと手を差し出してきたのだ。


 す、すごい。


 憧れの如月先輩に認めてもらえただけでなく、まさか握手までしてくれるなんて!


「は、はい! よろしくお願いします!」


 だから私も、手を差し出す。


 そうして、私と如月先輩の手が触れようとして――


「ちょーーーーーっと待ちなさーーい!!」


 甲高い声に差し止められた。


「おーっほっほっほっほ! このわたくしを差し置いて如月さんと握手しようだなんて、随分と肝が据わっているのね!」


 せっかくの先輩との握手を邪魔して横から割り込んできたのは、やけに華やかな格好をした女の子だった。


 どれくらい華やかなのかと言えば、一言でいえば真っ赤なドレス姿だった。

 小さく膨らんだ胸から上は肌がむき出しになっている、つまり肩が露出しているタイプのドレスで、スカート部分は足全体を覆うほどで、フリフリがついていた。


 だが、ドレス姿よりも何よりも目を引くのは、とても大きな赤いツインドリルの髪。

 これでもかってくらい誇張していて、それはもう漫画に出てくるようなお嬢様まんまの姿だった。ついでに羽がいっぱいついてる扇子を口元にあてている部分もポイントが高い。


「いや、先輩に挨拶するのは当然だし……ていうかあなただれ?」


 私が素朴な疑問を口にすると、赤髪お嬢様キャラの女の子は嬉しそうな笑みを浮かべて、


「あら、そんなにわたくしの名前が気になりますの? 気になっちゃいますの?」


「いや、別にそこまでじゃないけど……」


「おーっほっほっほ、謙遜しなくていいですわよ。仕方ありませんね。そこまで言われちゃ教えないわけにも参りませんわね!」


『まるで聞いちゃいねえなこいつ』


 インキューがボソッと小さな声で呟いた。


「わたくしの名前は西園寺彩芽。西園寺グループの御令嬢とはこのわたくしのこと! 平民たちよ、お金の事ならこのわたくしになんでも相談するがいいわ。魔法少女でもあるこのわたくしにひれ伏すのならね。おーっほっほっほっほ!!」


「その通り。彩芽様に知らぬことなし! あんたたちがたてつくなんて百年早いのよ!」


 彩芽と名乗る謎のお嬢様の背後から突如現れたのは、いかにも彼女の取り巻きですって感じの女の子だった。


 こちらは特に目立った特徴はなく、私が通っていた中学の制服を着ている栗色髪のポニーテールだった。

 しいて挙げるならば、なにかスポーツでもやっているのか程よい筋肉が付いており、スタイルがいい。モデルとして活躍していると言われても不思議ではない程だ。


「平民たちよ、このわたくしにひれ伏すがいいわ!」


「彩芽様の言うことは絶対! カースト最上位のこの方の前で私語は慎みなさい!」


 おーっほっほっほっほ! と二人して賑やかな笑い声を上げている始末。これはなんだか波乱の予感がする……。


『西園寺グループってなんだ? そんなに有名な財閥なのか?』


「いや、私も聞いたことがあるようなないような……。あの、西園寺グループって何をやっているところなんですか?」


「うん? 西園寺グループなんて存在しないわよ?」


「『はっ?』」


 取り巻きの女の子があっけらかんとした様子で答えた。


「あたしはただ、彩芽の御令嬢おままごとに付き合ってあげてるだけ。確かに本人の家はちょっとしたお金持ちだけど、全体から見れば大したことないわ」


「ちょ、ちょっと翠蓮! そんなあっさりネタ晴らししないでよ! あ、いや、しないでくださる? わたくし、もう少し遊びたかったですのに!」


「いやでも、このままいつまでも誤解されたままっていうわけにもいかないでしょ? 前なんかそれで勘違いされて『本物』からガチ目のパーティーに誘われたときなんか本気で肝を冷やしたんだから」


「うっ……そ、それはそうですけど!」


「まあそんなわけだから、面倒かもしれないけどしばらくこのおままごとに付き合ってあげてねー!」


 翠蓮と呼んだ取り巻きの女の子の頭をポカポカ叩く彩芽。それにかまわずにこにこしながら付き合っている翠蓮。


 傍から見れば微笑ましいはずなんだけど、波乱の予感がぬぐえないのは何故だろうか……。


 それにしても西園寺か……。やっぱりどこかで聞いた気がするんだけど、なんだったっけな。


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