表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い翼の魔法少女~指名手配された彼女は今日も元気にBLを嗜む~  作者: 浦野 情


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/14

第4話 歩夢へーん、しん!!


『……ま、魔法少女? お前が?』


 少しの間をあけて、インキュバッスは目をパチパチさせながら、うわずった声でそう呟いた。


「そう、ずっと憧れだったの! お願い。私を魔法少女にして!」


『ちょ、ちょちょちょっとまった!』


 インキュバッスはどこか慌てた感じで、私と距離を置く。


「どうしたの? 精霊は、魔法少女を増やすことが使命なんでしょ? だったら、早く私を魔法少女にしてよ。私の保身のためにも!」


『いやだから、物事には順序ってものがあってだな!?』


 一体どこに躊躇う必要があるのか、インキュバッスはごほんと咳ばらいをすると、改めて私に向き直った。


『さっきはお前の質問に答えてやったんだ。今度はこっちの質問に答えてもらうぞ』


「へっ? な、何よ?」


 精霊のほうから質問されるなんてちょっと意外だった。一体何を聞いてくるんだろう?


 いや、まて。もしやこれは、私が魔法少女にふさわしいかどうかを試す、いわば面接ってやつ?

 いいじゃない、受けて立つわ!


『まず第一に……お前は誰だ? 名前を教えろ』


「私は一ノ瀬歩夢。14歳。今を生きる現役中学生よ」


『つまりは、俗にいう人間ってやつだな?』


「へっ? あ、当たり前じゃない!」


『そうか。んで第二に、ここはどこだ?』


「私の部屋だけど?」


『お前の部屋……? 人間の部屋って言うのはこんなにも広い物なのか?』


「広い? 別に普通だと思うけど」


 私は自分の部屋を見渡す。

 確かに、机やベッド、テレビなどの専有面積を除いても、ストレッチなどの軽い運動ができるくらいにはスペースがあるとは思うけど……。


『まあいい。第三にだが、俺はどうしてここにいるんだ?』


「魔法少女セットを買ったら、そこの箱からあんたが出てきたのよ」


『魔法少女セット? 買った?』


「うん。あんたがさっき読んだBL本についていたQRコードを読み取って、そこから買ったの」


『QRコード? なんだそれは?』


 ああ、そこから説明しないとだめなのか……。


 私は、そこそこの時間をかけて、現代の売買システムについてこのへんてこな精霊に解説した。


『な、なるほど。そんな画期的な取引が存在するのか』


「ねえ、精霊ってもう20年前からこの地球に来ているんでしょ? そういうのとか知らないわけ?」


『だ、だから俺には記憶がないんだよ! 現代のあれこれとか言われてもわかんないの!』


「ふーん……」


 そういうものなのだろうか? なんか記憶がないにしては都合がよすぎる気がしなくもないけど、そう言われてしまったらこちらとしても何も言えない。


『つ、つまり、それは俺をお前が買ったってことなのか? なぜそんなことをした?』


「そんなのこっちが聞きたいわよ。まさかあんたが出てくるなんて思わなかったし」


『う、嘘だろ……いや、まあいい。そんで第四にだ。俺をこれからどうするつもりなんだ?』


「だから言ったじゃない。私を魔法少女にしてくれって」


『つまりそれは、俺を相棒にしてくれってことか?』


「相棒?」


『ああ、魔法少女と一緒に戦う精霊の事を、その魔法少女の相棒って言うんだ。俺のなけなしの知識から引っ張ってきたものだけど』


「へー。まあ、そうね。そんなかんじよ」


『……なぜ、魔法少女になりたいんだ?』


「ずっと魔法少女に憧れていたから。それと、あんたを私が買ったってことがばれたら、いろいろまずいことになるかもしれないからよ」


『そ、そんな理由で魔法少女になりたいのか? 魔法少女ってのは命がけなんだぞ。わかっているのか?』


「もちろんわかっているわよ。でも意外ね。精霊ってもっとこう、魔法少女にするのに一生懸命なイメージがあったんだけど」


『そりゃあ俺には記憶がねえからな。魔法少女にするのが使命だって言われてもピンとこねえよ』


「ふーん、じゃあ私がお願いするから、私を魔法少女にして?」


『お前なあ……』


「お願い!」


 私は両手を合わせて神頼みをするようにインキュバッスにお願いする。するとこの精霊、頭をポリポリかきながらとんでもないことを言い放った。


『いや、そうは言われてもなあ……どうやって魔法少女にすればいいのかよくわかんないんだよなあ』


「はあああああああああ!?」


『いや、だから俺記憶がないんだって……』


 キーワードは覚えているのにやり方はわかんないって、どういうバグ!? どんな都合のいい頭してるわけ?


 私はふわふわと漂うインキュバッスを両手でわしづかみにした。


「いいから思い出しなさい! 精霊って本能で女の子を魔法少女にできるもんじゃないの? いや、できるはずよ! だってあんたは精霊なんだから!」


『無茶言うなよ!? あとそんな揺らさないで頭が割れる!』


「ああもう仕方ないわね!」


『いでっ!?』


 使い物にならない精霊を放り投げて、私はテレビの下にしまってあるDVDの束を取り出した。全て魔法少女に関するものだ。


 その中に確か、偶然変身シーンを撮影することに成功した映像があったはず。


 ……これだ!


 早速DVDプレイヤーに差し込んで、再生してみる。


『おいお前なあ! 精霊は丁重に扱えと何度言ったら――』


「ちょっと静かにして」


 騒ぐインキュバッスを手で制して、私たちは画面を見守る。

 そして、映像が流れた。


 それは、曇天の空の下、建物の屋上にいる少女の姿だった。

 その少女のまわりを精霊とおもわれる小さな点がくるくると一周、二周したかと思うと、少女が光に包まれて――次の瞬間には、魔法少女になっていた。


 そして少女は、建物から飛び降りて、姿を消した。


「これをまねしてみなさい! 私の周りをぐるぐる回り続けるのよ」


『え、いや、なんで俺がそんなことをしないといけないわけ――』


「いいからやりなさい! じゃないと警察に突き出すわよ! 間違えてへんな商品を買ってしまったので処分してくださいって」


『ひどすぎない!? ああもう、わかったやるよ! やればいいんだろ?』


 絨毯の敷いてある広いスペースの中心に立った私の前に、しぶしぶといった感じでインキュバッスが浮かんでくる。


 そして、ゆっくり私のまわりをふわふわ回り始めた。


 一周、二周……。


 何も起きない。


『おい、何も起きないぞ』


「おかしいわね。もっと早く回ってみてくれない?」


『いや、なんでそんな――』


「警察」


『だあああああわかったよちくしょう!!』


 インキュバッスはさっきよりも速いスピードで回り始めるが、やはり何も起きない。


「もっと早く!」


『うおおおおおおお!』


「もっと早く!!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 インキュバッスの回る速さはやがて竜巻並みの風力を起こし、机の上の物やさっきばらまいたDVDの束など、あらゆるものが風力によって散乱した。


 すると同時に、私の体にも変化が起こった。


 部屋の中で発生した小さな竜巻の中心で、上昇気流のせいか私の体はなんと宙に浮いたのだ。

 それと同時に、足元と頭のてっぺんに、謎の黒い魔方陣が展開される。


「へっ?」


 足元の魔方陣は下から上に、頭の方の魔方陣は上から下に、私の体を飲み込む形で移動し、交差する。


 そして竜巻がやんだ時には、全てが変わっていた。


 まず、全身を纏うのは、黒を基調とした魔法少女服だった。

 黒いヒールに膝まである黒いソックス。スカートの丈は太ももの中間位までしかないミニだったが、絶対領域はなんとか隠せるライン。


 服装は、露出が少ないタイプのドレス。ワンピース型と言った方がいいだろうか。

 肩や背中も特に肌がむき出しになっているようなことはなく、全身が黒一色で統一されていた。


 グローブは二の腕まであり、頭にはヴェールのついたトークハットまで被っていた。これらももれなく全部黒。

 一見すると、どこぞの暗黒令嬢を思わせるような服装だった。


 ただ、ヒールやスカート、ほんのり膨らんだ胸元など、ところどころに黒ではなく白のリボンがあしらわれているのはいったいどういうことなのか。

 できればこのあたりも統一してほしかった感はある。


 だが、一番変わったのは服装ではなく、髪の毛だ。


「……えっ、なにこれ。色が変わってる」


 肩まで下がっていた私の黒の髪が、いつの間にか白髪になっていたのだ。

 銀髪ともまた違う、完全に色素が抜けた真っ白な髪。これだけ聞くとおばあちゃんに思えるかもしれないが、十分な髪がある少女の白髪というのは、また違った趣があって、これはこれでいいかもしれない。


 目の色は変身前と変わらず薄い紫色。我ながら綺麗な目をしているなと感じる。


 と、ここまでが部屋に置いてある全身を映す鏡を見た私の感想だ。


『も、もうむりぃ、目が回るぅ……』


 回りすぎて床にへばっているインキュバッスは置いておいて、私は鏡の前でいろいろなポーズをとったりくるんと一回転して見せたりした。うん、これ結構気に入ったかも!


「ほら、インキュバッス起きて。てかもうめんどくさいからインキューでいい?」


『なっ!? お、俺のこの華麗なる名前を略すなんて、なんて失礼な!』


「あーはいはい。それでさ、魔法少女になったのはいいんだけど、これからどうすればいいの?」


『はっ? いや、そんなの俺に聞くな。記憶喪失のこの俺がわかると思うか?』


「いばって言うことじゃないでしょ……」


 でも確かに、魔法少女になったあとどうすればいいかっていうのはまともに調べてなかったかも。今からでもスマホで検索かけてみよっと。


 そう考えていた時だった。


「ちょっと歩夢!? さっきから音がすごいんだけど、一体何をやっているの!?」


 バタンと部屋のドアを開けて、お母さんが乱入してきた。


 あ、やばい。


「…………」


「……歩夢。その服、どうしたの?」


 私は初日で、魔法少女になったことが親にばれてしまいました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ