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黒い翼の魔法少女~指名手配された彼女は今日も元気にBLを嗜む~  作者: 浦野 情


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第8話 実力検査①

 

 先輩を覆う氷はあっという間に全身にまで及び、そして砕けた。その時には既に、先輩は魔法少女に変身していた。


 青を基調としたその魔法少女服は、一言で言えばバレエ衣装のようだった。

 体のラインを強調する出来栄えなのはもちろんのこと、手首まで伸びてあるフリルがその存在感を強調している。

 

 スカートは薄く長すぎず短すぎない程度に膝まであり、マリンブルーで彩られたその衣装はさながら本物のフィギュアスケート選手のように艶やかで、頭に飾られた銀の髪飾りはさながら魔法少女としての強さを象徴しているかのようだった。


「綺麗……」


「ふふっ、ありがとう〜。でも、本番はここからよ!」


 私が思わず感嘆の声を漏らすと、先輩はまた微笑んで、前に向かって前傾姿勢をとる。


 直後、先輩は氷の剣を創り出したかと思うと、数十メートルは先にある大きな案山子に向かって跳躍し、一瞬で案山子の目の前まで到達した。


 そして、氷の剣で案山子を大きく切り裂いた。


「まだまだ! 『ダイヤモンドダスト』!」


 その後、跳躍して距離を取ると、先輩はその背後に幾つもの氷の塊を生み出して、案山子を狙う。

 そのほぼ全てが命中し、案山子の両腕部分を抉ってみせた。


「「「おおっ!!」」」


 再び皆が歓声を上げる中、先輩は私たちの前に綺麗に着地し、おまけにもう一つと氷のバラを創り出して、それを私たちに差し出すようにして決めポーズをとった。


「いかがでしょうか、早苗さん」


「うん、素晴らしいわ。流石はベテランね。そしたら他の皆さんも魔法少女に変身して頂戴。これからどれくらいの実力があるか、どんな適性があるかを確認します」


 早苗さんが拍手をしながら、私たちに、魔法少女に変身するように促す。


 すごい……あれが魔法少女。私が想像していたよりもずっと迫力があって、そしてかっこいい。


 私は、先輩のその姿に魅了せずにはいられなかった。


「おーっほっほっほっほ! それじゃあまずはわたくしからいきますわよ! でていらっしゃいメーラ!」


 続いて前に出たのは、真っ赤な炎のようなものを肩に乗せた西園寺さん。勝気な目でにっと笑い、指を鳴らした。


 その瞬間、西園寺さんの体が炎に包まれ、それが爆ぜた時、既に魔法少女の姿になっていた。


 こちらはただでさえ派手なフリフリのロングスカートのドレスだったのが、魔法少女に変身したことでさらにボリュームが上がってスカート部分がふんわりと膨らんだものになっていた。

 所々に炎で出来た花があしらっており、まるでおとぎ話に出てくる貴族様のよう。心なしか彼女の瞳にも炎が彩られている気がする。


「わたくしの炎で、全てを燃やして差し上げますわ!」


 魔法少女になった西園寺さんは両手に炎を形作ると、いつの間にか元通りになっていた巨大な案山子に向かって投げつける。


 うち片方は外してしまったが、もう片方が案山子の右腕部分に命中し、その部分を黒く染め上げた。


「あーーー! 両方当てるつもりでしたのに一発外してしまいましたわ!」


「まーしょうがないよ。ほんじゃあ次はあたしねー」


 悔しがる西園寺さんをフォローしつつ、次は翠蓮さんが前に出る。


「出てきて、ヴェントス」


 そう言って出てきたのは、手のひらに収まるくらいに小さな竜巻だった。周りの砂を若干巻き込んではいるものの、本当に小さな竜巻なので私たちにかかることはない。


 「あの、精霊って出し入れできるものなんですか?」


 ここで私は、如月先輩にずっと気になっていたことを聞いてみた。

 プロアマチュア問わず、みんなさっきから当たり前のように精霊を何もない空間から顕現しているのだが、私はそんなことしたことがない。如月先輩だからできるのかとスルーしていたのだが、西園寺さんや翠蓮さんまでもが出来ているのを見ると、どうやらそういうわけじゃないらしい。


「あら、精霊はほとんどが自然界の物質をまねて作られているから、大体の精霊はその自然に融合することで姿を隠したり顕現したりできるのだけれど、インキュバッスちゃんは違うのかしら~?」


「うーん、確かにインキューは自然というよりもどっちかというと悪魔みたいな見た目ですからね。ねえインキュー、そこんとこどうなの?」


『あー、そうだな。俺のルーツがどういうモノなのかは知らねえけど、確かに他の奴らみたいに姿を隠したりすることは出来ねえな』


「そうなんだ……」


 なるほど。精霊が、人間が住む自然と似た特徴を持っているがために、その自然に融合する形で姿を隠したりすることができるわけか。


 うん? でも精霊って元はユートピアっていう世界から来たんだよね。なんで人間界の自然の特徴を持っているんだろう。


「さあヴェントス。あたしを風で包んで」


 そんなことを考えていると、翠蓮さんがヴェントスと呼ばれた精霊に息を吹きかける。

 すると、翠蓮さんの体がたちまち風の渦に包まれて、それが収まった時、魔法少女になっていた。


 翠蓮さんの場合は軽装を主体とした格好のようだった。

 ミニスカートに上はへそ出しの半そで姿で、学校の体操着を意識しているかのよう。それでも黄緑色を基調としたその姿はちゃんと魔法少女としての服装をしていて、ここまでスタイリッシュな体を強調されている服装は初めて見たかもしれない。


 そのうえ、髪色も黄緑色に変色していて、ポニーテールは大きくボリュームアップしている。


『なんか歩夢と被っていないか? 変身方法といい、髪色の変化と言い』


「インキュー、それは言ってはいけないわ」


 余計な事を言うインキューに私は釘をさしておく。

 私のは厳密にいえばインキューが引き起こす竜巻の中で、魔法陣によって変身するのだから、違うものだ。髪色の変化だって、あっちは確かに明らかに変わっているけれど、こっちはどちらかというと脱色した感じになるのだから、これも違うものだ。断じて、違うものである。


「切り裂け、風の刃よ」


 そして翠蓮さんはてを前に突き出すと、周囲の大気をその掌に収束させ、風の刃を作り出した。それらは案山子に向かっていって全て命中し、案山子のいたるところに傷をつけた。


「まー、こんなもんかなー」


「ちょ、ちょっと翠蓮! わたくしより目立ってどうするのですわ!? 本来このわたくしをおぜん立てすべきだというのに!」


「まーいーじゃないの。そんだけ彩芽との間に実力の差があったということでしょ」


「こ、このぉ!!」


 自分の実力より子分(という設定の友人)の実力の方が上回っていることにぷんぷん起こっている西園寺さん。それを軽くあしらう翠蓮さん。仲が良くて何より。


「さて、次は歩夢さん。お願いします」


 早苗さんが私を呼ぶ声がする。それと同時に早苗さんが指を鳴らす音も。


 その瞬間、所々に風の刃で傷がついていた案山子が、何事もなかったかのように元通りになっていた。一体どういう仕掛けなのかわからないが、これで私が実力を見せる手はずは整ったというわけだ。


 次は、私の番だ。


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