8-4 神
8-4 神
「神様、驚かないでください。ぼくも100点になりました」
「えっ、ゴロー君、いつの間に100点になったんですか」
「今朝です。起きて測ってみたらいきなり100点ですよ。うそ、うそって思って、そこらじゅうのスマホで測ったんですが、オール100点なんです」
「ゴロー君も神様になったんですか。まさか余の点は減っていないでしょうね。やっぱり100点ですね」
「いったいどうしたんでしょうね。ぼくも100点取ったから、神様を名乗っていいんでしょうか」
「いいんじゃないですか。これからは神様二人体制で行きましょう。この頃やたらめったら仕事が増えてきましたから、仕事が分担できて丁度いいですね。一か月後にローマで開かれる世界宗教者会議にはどちらが出席します? 国連での演説も頼まれていますね。ゴロー君には、そうした真面目なのに出ていただきたいですね。余は政治家や社長との宴会に出席しますから」
「100点になったからといって、いきなり一人で国連はないですよ。これまで通り二人で出席しましょうよ」
「ゴロー君も100点になったんですから、もう弟子じゃありませんよ。神様として独り立ちしてもらわないと困ります。ところで、私たちはなんて区別したらいいんでしょう。神様1号、2号ってのはどうでしょう?」
「もう少しかっこいいネーミングはないんですかね。それじゃいくら何でもありがたみがないというものです」
「それもそうですね。それともゴロー君は新しい教団起こしますか? ルターさんを見習って」
「そのルターさんってどなたさんですか」
「ゴロー君、ルターさんも知らないのですか。修行が足りませんね。神様になったんですから、これからは今まで以上に修行に励むことですね」
「神様だって、聞きかじりじゃないですか」
「この聞きかじりが大事なのですよ。
ルターさんってのはですね、カトリックに反逆して、プロテスタントという団体を起こしたとてもえらい人です。いまじゃ一大派閥ですよ」
「おれずっと神様と一緒の方がいいです。そのルターさんって人にはなりたくないね。兄貴に逆らうなんて考えたこともないからさ。兄貴、見捨てないでくれよ」
「わかった。わかりましたから、泣かないでください。ゴロー君、まだまだ修行が足りませんね。
今後のことはともかくとして、とりあえずゴロー君が100点になったことを祝して、乾杯しましょう。よかった、よかったですね」
「兄貴、本当に見捨てないでくれよな」
「えっ、今日も100点の奴が出た。いったい何人だ」
「今日は1,038人です。ここ一週間で57,809人になります」
「100点じゃない信者は、いったい何人残っているんだ」
「7人です。そうした連中も明日には100点になってしまうのではないかと。みんなが100点になるのはもはや時間の問題かと」
「みんな神様じゃない。100点になった奴ら、いったいどうしているんだ」
「当初、みんな戸惑っていましたが、これも修行のおかげだと教団に感謝していました。そのうち、日本中に100点の人が続々登場し、もう100点ではない人はほとんどいないそうなんです」
「世の中、いったい何が起こっているんだ」
「テレビでは、民衆の解放だと言っています」
「おれが解放したのか」
「いえ、善人アプリが善人社会を壊して、迷える人々を解放した、と言っているのです」
「善人アプリこそが、この善人階級社会を作りだしたんだろう。それを善人アプリが壊したと。いったい誰がそんなことをしゃべっているんだ」
「評論家たちです」
「評論家か。あいつらは好き勝手にしゃべるからな。
善人アプリはウイルスに汚染されたんじゃないのか」
「多分そうです」
「それならそのウイルスを取り除いて、世界を正常に戻せないのか」
「60点未満の悪党と蔑まれてきた人たちは歓喜しています。ウイルスが自分たちを解放してくれたと街をパレードしています。みんなスマホを投げ捨てています。マスクも外しています」
「老人たちはどうしているんだ。80点で満足していただろう」
「みんな100点になったから、これで成仏できると喜んでいます」
「おれの教団はどうなったんだ」
「神はいなくなった、と言ってみんなやめました」
「おれは日本でただ一人の100点満点の男ではなくなったのか。革命はいきなり起こるな。おれ何も準備していなかったのに」
「兄貴、おれたちがため込んだ金や宝石、みんな持って行かれましたぜ」
「そいつらみんな泥棒じゃないか。悪党だぜ。いったい何を修行してきたんだ」
「兄貴、しょうがないよ。だって、兄貴が神様だったんだもの」
「そうか、そうだよな。でも、これで世の中から善人はいなくなってしまうぜ」
「兄貴、それならおれたち悪党の復活じゃないですか。善人稼業も窮屈でしたからね」
「おっ、そうだな。おれたち本来の悪党稼業に戻るとするか」
「兄貴、どこまでもついていきますよ」
つづく




