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8-5 神

8-5 神

 「テレビ見ろよ。ジュン君が神様になっちゃってるぞ」

 「今評判のウルトラ善人ね。これもきみがかれを100点にしたからだろう」

 「だから、小学校5年生の時に、おれが殴られているのを助けてくれた勇気のある良い奴だったからさ」

 「その話、何度も聞きました。遠い昔だろう。ただのやくざじゃん。神様になってからも、あくどく儲けているらしいよ。マスコミも、神様だからおおっぱらに批判できないらしいけどね。現代のタブーの一つにもなっているからね」

 「えっ、そんなになったんだ。おれたちが作った善人アプリが神様を生み出したんだ」

 「予想外だよね。善人アプリで日本中にいろいろなことが起こったけれど、神様が最大の事件だね」

 「あっ、ジュン君がバラエティに出てる」

 「過去に行った悪いことをしゃべるコーナーだ。悪事だって神様にかかったら受難らしいよ。都合がいいね」

 「あっ、これおれを助けてくれた話だ。

 なんだって、あれはおれを助けに来てくれたわけじゃないのか。転校する前に、自分をいじめた奴らの仕返しに、棒を持って殴り込んだんだって。おれを助けにきたわけじゃないの。この20年間、おれ勘違いしていたの。

 あっ、おれの話が出てきた。返り討ちにあった後、そばに倒れている奴がいたって。誰か思い出せないって。でも、そいつニコニコして嬉しそうな顔をしていたのを覚えているって。殴られて、頭がいかれたのかと思ったって。スタジオのみんな、一緒に笑っているよ」

 「は、は、は。とんだ思い出話だったね。記憶違いで神様にしちゃったんだ」

 「おれの感違いだったのか。おれはこいつの過去を自分の中で美化したというのか」

「そのようだね。誰しもあることだよ」

「こいつの点を下げることはできないの?」

 「おっ、復讐だね。でも、きみの勝手な思い違いだったんだよ。かれに罪はないんだけど」

「たしかにこいつに罪はないけど、悔しいじゃないか。おれのこと全然覚えていないんだぜ。おれの名前も知らないし」

「完全に八つ当たりだね」

「こいつに100点やったのが間違いだったんだから、その間違いを正すだけだよ。点数下げることできないのかよ」

「下げることはできるけど、それじゃ面白くないんじゃないの」

 「どうしたらいいんだよ。こいつを0点にしてやってくれよ。天国から地獄だ」

 「ぼくに一つの面白い考えがあるんだ。聞いてくれる」

 「聞くよ。早く話せよ。じらすなよ。そんな悪魔のような笑みを浮かべるなって」

「この際だから、他のみんなも100点にしてしまおうよ」

 「えっ、何を言い出すの。それじゃ、善人アプリは終わりってことじゃない」

 「そうだよ。そろそろ善人アプリは終わりにしよう。十分遊んだじゃないか。いろいろと予想外のことも起こったしね」

 「そうだな。もう十分だよな。おれがパテントを取らなかったから、一銭の儲けにもならなかったけどな。すまなかった、おれのドジだ」

 「いいよ。金が絡まなかったから、冷静に楽しめたじゃない。金儲けは次回にしよう」

 「そうだな。次は絶対にな」

 「じゃ、このゲームは終わりにするよ」

 「おっ、そろそろ彼女来るんじゃない?」


 ドアが開き、

 「メリークリスマス」


                               完


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