4-2 ホームルーム
4-2 ホームルーム
「笑ったり、怒ったりしても、たいして点数が変わらなかったけど、もしかして、セロハンテープを使ってみたらどうかな」
「おっ、そりゃおもしろそうだな。誰かテープを持ってる」
「目をたれ目にして、口も下げてみよう」
「面白すぎ」
「さて、えっ、これだけ変わっても70点。全然違いがないんだ」
「元が悪いんじゃないの。それならおれがやってみよう。可能性はおれの方があるかもしれないからね」
「69点に下がったじゃない。どうしてだろうね」
「誤差の範囲だよ。テープごときじゃ、ほとんど変化しないんだ。これいったい何を感知しているんだよ」
「アイラインで目元を黒っぽくしてみない」
「そうだ。だれかアイライン持ってる。誰も持ってないの」
「とりあえずカラーペンでいいんじゃない」
「とれなくなるよ。誰か水溶性のペン持ってないの」
「あるよ」
「それじゃ、誰に塗るんだよ。立候補する人」
「よし、おまえでいこう」
「女子が塗った方が、うまいんじゃないか」
「そうだ、ここは化粧のうまいマドカでいこう」
「じっとしといてよ」
「おお、いいじゃん。なんか中東の人みたいでエキゾチックだよ」
「バカ言ってないで、早く測ろうぜ」
「70点。面白くないの」
「じゃあ、今度は女子で試してみない」
「そうだな。では、マドカが自分でやってみたら」
「どう」
「さすがだな。目元ひとつで顔がしまったじゃん」
「えっ、いつもはしまってないというの」
「でも、69点だよ。1点減点」
「眉毛、剃っちゃうか」
「誰の眉毛剃るんだよ」
「立候補する人」
「誰もいないな。それじゃ、マドカのその描いている眉毛、洗ったらなくなるんじゃない」
「そうだね。洗ってきてよ」
「なんでそんなことまでしなきゃならないの」
「研究のためだよ。協力してよ」
「見ても笑わないでよ」
「笑わないって。ほら洗面所に行って洗って来なよ」
「ハンカチで顔を隠さないでよ」
「じゃあ、ハンカチをとったらすぐに測ってよ」
「顔上げて」
「えっ」
「おっ」
「お、お、お」
「71点」
「1点上昇」
「これで、点が上がるの? 嘘だろう」
「それしても1点上がっただけじゃない」
「眉毛のない顔に圧倒された割には、点数にたいした変化はなかったな」
「凡人の顔をいじってもたいした変化はないから。ここはやっぱり43点のアッチャンに登場してもらおう。名付けてアッチャンの善人度向上作戦」
「そうだよ。今日のホームルームのテーマは、そもそもアッチャンの善人度が低いことだったんじゃないか」
「ぼく、顔いじられるの嫌だよ」
「大丈夫。悪いようにはしないから。少しでも善人度が増したら、もっとみんなから好感もたれるからさ。高校入試や大学入試、就職試験にも有利になるかもしれないからさ」
「おれこの善人アプリできるまで、みんなと同じように好感度は普通だったんだから。別に悪い存在じゃなかっただろう」
「そりゃあ、おれたちが気づかなかっただけなんじゃないの。これからの世の中、善人アプリの時代になるかもしれないからさ。なってからじゃ遅いよ。社会に出たら、誰も助けてくれないよ。おれたち友達だからおまえのこと心配しているんじゃないか」
「ぼく何をしたらいいの」
「これまでのテープやアイラインを試してみるんだ。眉毛は剃らないから安心しろよ。別にいじめてるわけじゃないんだから。みんなおまえのことをおもっているんだから」
「何をやっても43点から45点の幅じゃないか。見かけはずいぶん変わったように見えるんだけど。目元をもう少し明るくしてみるか。ピンクのカラーペン持ってる」
「それなら頬紅を使ってみたら」
「そうだな。さすがにマドカは上手だな」
「ずいぶん明るい顔になったぞ。これなら60点くらいは行くんじゃない」
「えっ、44点。このアプリおかしいんじゃない」
「じゃあ、ハルヨチャンの顔。やっぱり83点か。狂ってないな」
「このアプリ、おまえに恨みがあるんじゃない」
「そんなバカな。ぼく何もしていないから」
「このアプリ。いったいおれたちの何を見ているんだ。まさか心の中か」
「わたしたちの前世じゃないの」
「えっ、オカルトかよ」
「アッチャンは前世で何か悪いことをしたの? おまえ何か心当たりある?」
「バカじゃない。あるわけないじゃん。おまえ、自分の前世知っているのかよ」
「知らないよ。でも、前世の因縁ってよく言うだろう」
「前世がどうであっても、それはアッチャンの責任じゃないじゃん」
「そうだよな。アッチャンが悪いわけじゃない。これちょっと不気味じゃない」
「これは善人アプリじゃなくて、前世アプリかもしれないぞ。気持ち悪い」
「あっ、おまえのそばに誰か立ってる」
「タカシが立っているだけだよ」
「そうじゃない。おまえの肩に手をかけている奴」
「え、そんな奴いないよ」
「きゃあ」
「嘘だよ」
「こんな時、冗談なんか言わないでよ」
「ねえ、この善人アプリ、封印しない。気味が悪いもの」
「そうだな。おれたちはもう金輪際使わないようにしよう。みんないいな」
「いいよ」
「いいよ」
つづく




