3-4 スーパー善人
3-4 スーパー善人
「ところで、善人アプリについてどう思われます」
「ただのお遊びじゃろうけど、よくもまあこれだけ世の中に広まったものじゃのう。正直、訳が分からん」
「そうですよね。訳が分からないですよね。そもそも、善人ってどんな人か、客観的な定義がないんですから。善人って、わかりますか?」
「年寄りたちは、善行を積んでいる人間が善人じゃ、と解釈したんだよ。それだからわしの過去の善行を発掘しているんだね。これは遺跡の発掘と同じように、村の教育委員会の管轄じゃないかね」
「善人が善行を積んだ人間だとするならば、善行の質と量で測ればいいんじゃないですか。それがただの人相占いのようになっているんですよ。へんじゃありませんか」
「へんというか、滑稽というか。でも、わしのようなスーパー善人を発見して、その善行を調べる、という逆転の発想もなかなかのものだと思うけどな。まあ、初めから意図されたものじゃないんだろうけどな」
「年寄りがやっていることに罪はないですね。どこもなかなか面白いことをやっているとは思いますよ。それは悪人にフォーカスをあててないところがいいんですね。悪人にフォーカスを当てたら、悲惨なことになってますよ」
「そりゃあ、魔女狩りじゃろう。そんな意地悪なことをしたらいけない。それは遊びの域を超えている。善人もいないけど、悪人はもっといないからね。悪い奴は牢屋に入っているよ。そもそも、こんな村で農業をしたり、家の中でぼーっとしてはいないよ」
「でも、昔は悪いことしていた奴もいるんじゃないですか」
「もう、昔のことは不問じゃ。昔のことをほじくり返すほど、意地悪じゃないからね。すべて水に流すんよ。流せんことも、表に出さないだけよ。出してしまったらボケのたわごとよ」
「年寄りのほとんどが80点なのが、少し分かってきたような気がします。そしてたまに40点や90点の人がいることも。おそらく、桃源郷とはこんな感じなんでしょうね。40点や90点は神様の気まぐれで、そこに本人の責任は何もないのですね。40点や90点の人は、イノウエさんには失礼ですが、その人じゃなくても、他の人でもよかったのですね。神様は退屈な世界に少し変化をつけたかっただけなのですね。変化をつけることによって、社会は予想外の活性化をもたらす。きっと神様はどこかでほくそ笑んでいますね」
「そうかもしれないね。でも、90点がわしじゃない方がよかったけど、なってしまったからには受けて立つしかないからね。それがわしの宿命というものだ」
「えらい。いろいろと大変なこともおありかと存じますが、天から与えられた宿命を果たしてください。きっといつか息子さんやお孫さんも戻ってこられることがあるかもしれませんから」
「そうだ。狸の慰霊碑を建ててやろう。村の名所になるかもしれないからな」
つづく




