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『ダンジョン水耕栽培』~追放された王室庭師、不毛の地を「水」だけで最強の農園に変える~  作者: Gさん
第3章 『聖女教会』編

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第22話 湯けむりの向こう側

 王国の貴族たちから搾り取った資金で


 俺は農園の拡張工事を行っていた。


 地下水脈を確保するため


 コングと重機ゴーレムが岩盤を砕くこと数時間。


 プシュッ……ドバアァァァッ!!


 地下から勢いよく噴き出したのは、冷たい水ではなく


 硫黄の香りがする熱湯だった。


「これは……天然温泉!?」


 成分分析メガネが光る。


 疲労回復、美肌効果、そして高濃度のマナを含有した極上の湯だ。


「よし、予定変更だ。今日中にここを『大浴場』に改造する!」


 俺の号令で、農園の仲間たちが動き出した。



 その日の夕刻。


 先日、帝国の公務のために帰国したはずの皇女アナスタシアが


 息を切らして農園に戻ってきた。


 転移魔法を乗り継いできたのか、少し髪が乱れている。


「クロード。聞いたぞ。新しい『魔力回復施設』を作ったらしいな!?」


「ああ、アナスタシア様。お帰りなさい。……早かったですね」


「当たり前だ。そなたの作るものを見逃すわけにはいかない。……それに、私がいない間に変な女が住み着いたと聞いた。それを確認しに来た」


 彼女の視線の先には


 農園の仕事着(ジャージ)を着た聖女セシリアがいた。


「あら、あなたが噂の『鉄血皇女』様ですか? はじめまして、ここの従業員のセシリアです」


「む……! その余裕は。……なるほど、ちょうどいい浴場があるようだな。どちらがこの農園にふさわしいか見定めてやろう」


 こうして、王女リリアーナ、聖女セシリア


 そして皇女アナスタシアによる、雪の中の入浴会が幕を開けた。



 ヒノキ(ダンジョン産香木)で作られた露天風呂。


 雪景色の中、白濁した湯がこんこんと湧き出ている。


「はぁぁ……極楽ね……」


 最初に声を漏らしたのはリリアーナだ。


 金の長髪をアップにまとめ、白磁のような肢体を湯に沈める。


「クロードったら、こんな快楽装置を作るなんて……罪な男だわ」


「ふあぁ……。教会の聖水より、ずっと温かいですぅ……」


 セシリアがとろけた顔で、豊満な胸元までお湯に浸かる。


 彼女の肌は、イチゴと野菜のおかげですっかり健康的になり


 湯気の中で桜色に輝いている。


 そして、対抗心を燃やしていたアナスタシアも


 お湯の魔力には勝てなかった。


「くっ……悔しいが、最高だ……! 帝国の宮殿にもこんな浴場はない」


 彼女はセシリアの隣に陣取り、その肌をじろじろと観察した。


「……そなた、いい肌してるじゃないか。毎日クロードの野菜を食べてるからか?」


「はい。皇女様の肌も、白くて素敵ですよ?……あ、背中流しましょうか?」


「えっ? すまないな……お願いしようか」


 いつしか対抗心は霧散し、キャッキャという笑い声が響く。


「ねえ、クロードのこと……どう思ってるの?」


「ご飯が美味しいので、一生ついていきます」


「単純だな……でも、わかる気がする」


 湯気の中で、身分も国境も超えた「女子会」が繰り広げられていた。


 ――なお、男湯(岩一つ隔てた隣)では。


「……アナスタシア様、戻ってくるなり元気だな」


「ウホ(やはり騒がしい)」


 俺とコングは、壁の向こうの華やかな声をBGMに


 静かに星を見上げていた。



 風呂上がり。


 休憩室の囲炉裏を囲んで、全員でキンキンに冷えた瓶を傾ける。


 中身は、俺が開発した『特製フルーツ牛乳』だ。


「ぷはぁっ!」


 アナスタシアが腰に手を当てて一気飲みし、口元に白い髭を作る。


「……反則だ、これは。お風呂上がりの体に、甘さが染み渡る」


「おかわりください!」


 セシリアが空き瓶を差し出す。


 アナスタシアは、満足げにため息をつき、俺に向き直った。


「クロード。この温泉とフルーツ牛乳……帝国でも導入したい。技術提携を結ぼう」


「おや、商魂たくましいですね」


「当然だ。それに……こうして頻繁に来ることもできる……」


 彼女は少し顔を赤らめて、そっぽを向いた。


 こうして、クロード農園に新しい施設が完成した。


 王国の食糧難をよそに、ヴェルデの夜は温かく更けていく。

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