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『ダンジョン水耕栽培』~追放された王室庭師、不毛の地を「水」だけで最強の農園に変える~  作者: Gさん
第2章 『拠点』編

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第15話 一夜城の伝説

「おいおい、押すな!列に並べって言ってるだろう!」


 ダンジョンの入り口前広場は、かつてない喧騒に包まれていた。


 ガリウスたち冒険者ギルドの面々が、必死で交通整理をしている。


 集まっているのは、帝国の商人だけではない。


「お願いします! 子供が飢えているんです! 野菜を分けてください!」


「俺は鍛冶屋だ! 王国じゃ仕事がねぇ、ここで雇ってくれ!」


 王国から流れてきた『難民』たちだ。


 王国の経済制裁(という名の自爆)により


 物価は高騰し、食料不足が深刻化している。


 対して、ここは『楽園』だという噂が広まり


 人々が雪崩れ込んできたのだ。


 その数、すでに300人以上。


「クロード、どうする? 追い返すか?」


 アナスタシアが面白そうに聞いてくる。


 俺は首を横に振った。


「労働力はいくらあっても足りません。……それに、客を選り好みするのは商売人のすることじゃない」


 俺は眼下に広がる荒れ地を見下ろした。


「ちょうどいい。農園の拡張ついでに、『街』を作ってしまいましょう」



 俺は集まった人々の前に立ち、拡声器代わりの魔道具を使った。


「これより、居住区の建設を開始します! 働ける者は手を貸してください。報酬は『3食の食事』と『安全な寝床』、そして『風呂』です!」


『食事』と『風呂』


 その言葉に、絶望していた人々の目に光が戻る。


「やります!何でもやらせてくれ!」


 建設といっても、石を積むような旧来の方法ではない。


 俺は地面に手を突き、大量の魔力を流し込んだ。


「やるか……。『急速成長ハイ・グロウ』……構造材、展開!」


 ズズズズズ……!


 大地が震え、巨大な樹木が規則正しく生えていく。


 それらはただの木ではない。


 俺が品種改良した『鉄木アイアン・ウッド』だ。


 四角い形状に育ち、そのまま家の柱やはりになる。


「す、すげぇ……木が勝手に組み上がっていくぞ!?」


「隙間を『石化蔦ペトラ・アイビー』で埋めろ! それが壁になる!」


 元・鍛冶屋や大工たちが、俺の指示に従って内装を整えていく。


 彼らはプロだ。


 適切な素材と指揮さえあれば、驚くべき速さで仕事をこなす。



 建物だけではない。


 俺が最も重視したのは『衛生』だ。


 王都の路地裏は汚水で悪臭が漂っていたが、ここではそれを許さない。


「地下水路を連結。各家庭に、浄化フィルター付きの『上水道』を引きます」


 竹のような植物パイプを張り巡らせ


 ダンジョンの湧水を各戸へ供給する。


 さらに、生活排水は


 地下の「バイオ分解槽(スライム入り)」へ流し


 肥料としてリサイクルする。


 夕方になる頃には


 荒れ地だった場所が、整然とした「ログハウスの街」に変わっていた。



 そして、夜。


点灯ライト・オン!」


 俺が指を鳴らすと


 街路樹に植え付けた「発光苔」が一斉に輝き出した。


 ぼうっとした優しい青白い光が、街全体を幻想的に照らし出す。


 電気代ゼロの街灯システムだ。


「きれい……。王都の貴族街より明るい……」


 薄汚れた服を着た少女が、光を見上げて涙を流していた。


 その日、彼らは久しぶりに温かいスープを飲み


 泥のないベッドで眠りについた。



「……信じられないわ」


 完成した街を見下ろす高台で、リリアーナが呟いた。


「たった一日で、こんな立派な街ができるなんて」


「まだ仮設住宅ですよ。これから学校も病院も必要になります」


 俺は図面を広げながら言った。


「ここはもう、ただの農園じゃありません。『迷宮都市ヴェルデ』。それが、俺たちの新しい拠点の名です」


 アナスタシアが満足げにワイングラスを傾ける。


「よい名だ。……見ろ、クロード。あそこを」


 彼女が指差した先。遠く離れた王都の城壁から


 こちらを監視する兵士たちの姿が見えた。


 暗闇に沈む王都とは対照的に、不夜城のように輝くこちらの街。


 その光は、王国にとって『逃した魚』の大きさをまざまざと見せつける


 残酷な道標みちしるべだった。


「さあ、忙しくなりますよ。明日は入国審査と、職業斡旋所の開設です」


 俺の言葉に、リリアーナが力強く頷く。


「ええ、私は『市長』として、しっかり働かせてもらうわ!」


 追放された庭師と王女が作った小さな農園は


 今や世界中が注目する『最先端都市』へと進化しようとしていた。

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