↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ダンジョン水耕栽培』~追放された王室庭師、不毛の地を「水」だけで最強の農園に変える~  作者: Gさん
第2章 『拠点』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/36

第11話 甘い生活と温泉猿

「……甘いものが、食べたいわ」


平和な午後のティータイム。


リリアーナが切実な声で呟いた。


王国からは今のところ、これといった反応は返ってきていない。


しばらくはこの農園の快適化に専念できそうだ。


現在の農園は


野菜、魚、キノコ、マヨネーズと食材は充実している。


だが、決定的に足りないものがあった。


「フルーツ……ですね」


「ええ。野菜の甘みも素敵だけど、やっぱり果物の甘酸っぱさが恋しいの」


俺は頷き、手製のダンジョンマップを広げた。


実は、以前から気になっていたエリアがある。


拠点のさらに下層。


俺が放った菌糸ネットワークが


異常な「熱源」と「湿気」を感知している場所だ。


「殿下。気温が高く、湿潤な環境……そこなら、アレが育っている可能性があります」


「アレ?」


「バナナ、マンゴー、そして……カカオ(チョコレートの原料)です」


その単語を聞いた瞬間、リリアーナが立ち上がった。


「行きましょう、クロード! 今すぐ冒険の準備を!」


王女の食への執念は、どんな戦士よりも頼もしかった。



我々は拠点を離れ、未踏の下層エリアへ降り立った。


そこは、別世界だった。


シューーーッ!


岩の裂け目から白い蒸気が噴き出し、視界を白く染める。


気温は30度を超え、まるでサウナの中にいるようだ。


「暑い……わね。でも、肌がしっとりするわ」


「硫黄の匂いがしますね。ここは火山脈に近い『地熱エリア』です」


俺は汗を拭いながら、周囲の植物を観察した。


巨大なシダ植物が生い茂り、見たこともない極彩色の花が咲いている。


俺の推測通り、ここは天然の「熱帯温室」だ。


地上の寒冷な気候では育たない南国フルーツも


ここなら自生しているはずだ。


(それに、この地熱……。うまく配管すれば農園の温水暖房や、蒸気タービンによる発電にも使える)


俺の脳内で、新たなプラント設計図が高速で描かれていく。



「あ! 見てクロード! あれ!」


霧が晴れた先、巨大な湯気が立つ「地底湖」――


いや、天然の「大露天風呂」が現れた。


そして、その湖畔に生えている木には


黄金色に輝く房がぶら下がっている。


「バナナだ!」


俺たちが駆け寄ろうとした、その時だった。


ザパァァァン!!


温泉の中から、巨大な影が飛び出した。


体長3メートルはあるだろうか。


真っ赤な顔と、雪のような白い毛並みを持つ、巨大な猿の魔物だ。


「あれは『スチーム・コング(温泉猿)』か! 縄張りを荒らされたと思って怒っている!」


コングは湯気を鼻から噴き出し、岩を掴んで投げつけてきた。


「キャッ!?」


「殿下、下がって!……戦うしかありません」


俺は『戦闘用植物』の種を取り出し――思い止まった。


コングの動きがどこかぎこちない。


よく見ると、背中を岩にこすりつけ、苦悶の表情を浮かべている。


(……肩こりか? いや、皮膚炎か?)


俺は武器を収め、代わりに腰の給水ポンプに手をかけた。


「殿下、攻撃魔法は待ってください。交渉します」


「交渉って、言葉が通じるの!?」


「いいえ。ですが、快楽は共通言語です」



俺はコングの前に進み出ると


ポンプのノズルを向け、水圧を最大まで上げた。


「くらえ! 『高圧水流ハイドロ・カノン』を!」


ドシュゥゥゥッ!!


激しい水流がコングの背中を直撃する。


普通なら肉を削ぐ威力だが


コングの分厚い筋肉と毛皮には、ちょうどいい刺激だったらしい。


「ウホォォォ……ッ♡」


コングが恍惚の表情で崩れ落ちた。


俺はすかさず、水流のポイントを肩、腰、そして足裏へと移動させる。


「これが現代知識が生んだ『ジェットバス』の威力だ!」



数分後。


そこには、すっかり骨抜きになり、俺に懐く巨大猿の姿があった。


コングは返礼とばかりに、木からバナナの房をもぎ取り


リリアーナに差し出した。


「……ありがとう、お猿さん」


リリアーナがバナナを受け取ると


コングは満足げに温泉の端へ移動し


「背中を流せ」とばかりに背中を向けた。


どうやら、専属マッサージ師として認められたらしい。


「ふふっ、最高の収穫ね」


その夜、俺たちは現地で収穫したバナナと温泉卵で祝杯を挙げた。


そして、リリアーナは岩陰の浅瀬で


久しぶりの「温かいお風呂」を堪能した。


「……極楽ね。もう王宮の狭い風呂には戻れないかも」


湯気越しに見える王女の笑顔は、どんな宝石よりも輝いて見えた。


こうして、俺たちの農園に


「熱帯フルーツ農園」と「天然温泉リゾート」が加わった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。