第2話 水着なんて、恥ずかしいですよ。
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Today's Heroine
西園寺 あかり
CLIENT DATA
年齢:22歳
身長:166cm
職業:大学4年生・フリーモデル
雰囲気
・明るい
・人懐っこい
・仕事になると真剣
・少し天然
外見
・栗色のロングヘア
・健康的なスタイル
・笑顔が眩しい
主人公への第一印象
★★★★☆
恋愛タイプ
甘え下手
依頼内容
『海での撮影を手伝ってください。』
秘密
『一人で海へ行くのが少し苦手。』
ドキドキ度
★★★★★
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朝九時。
潮の香りが漂う海岸で、神崎湊はスマホの画面と周囲を何度も見比べていた。
依頼人との待ち合わせは、この海水浴場の駐車場。
平日だから人は少ないが、釣りをする人や散歩を楽しむ人の姿はちらほら見える。
「神崎さんですか?」
振り返ると、一人の女性が大きなキャリーケースを引きながら立っていた。
白いパーカーを羽織り、キャップを深くかぶっている。
「西園寺あかりさん?」
「はい。今日はよろしくお願いします。」
笑顔と一緒に頭を下げる。
その笑顔は、人前に立つ仕事をしているからなのか、とても自然だった。
「荷物、結構ありますね。」
「全部衣装なんです。」
キャリーケースのほかにも、大きなバッグが二つ。
女性一人では確かに大変そうだ。
湊はすぐに一つを持ち上げる。
「ありがとうございます!」
あかりはほっとしたように笑った。
◇
撮影場所は、人がほとんど来ない岩場の近く。
「ここなら背景もきれいなんですよ。」
そう言ってスマホを取り出す。
「今日はこれで撮ります。」
「カメラじゃないんですね。」
「最近のスマホ、すごくきれいに撮れるんです。」
軽い三脚を組み立て、スマホを固定する。
タイマー撮影もできるが、今日は湊がシャッター係だ。
「じゃあ……着替えてきます。」
あかりは近くの更衣室へ向かった。
数分後。
「お待たせしました。」
振り返った湊は、一瞬だけ言葉を失う。
淡い水色のビキニに、透け感のある白いパレオ。
派手というより、夏らしい爽やかな雰囲気だった。
「やっぱり恥ずかしいですね。」
あかりは照れ笑いを浮かべながら、パレオの裾をぎゅっと握る。
「見慣れないですか?」
「……仕事ですから。」
「質問の答えになってませんよ?」
「正直に言うと、ちょっと緊張してます。」
そう答えると、あかりは吹き出した。
「ふふっ。」
「笑いましたね。」
「だって、もっと慣れてる人だと思ってました。」
「恋人代行より緊張するかもしれません。」
「それ、モデルとしてはちょっと複雑です。」
二人で笑う。
そのおかげか、さっきまでのぎこちなさは少し薄れていた。
◇
「まずは立ったままでお願いします。」
「こうですか?」
「もう少し海の方を向いて……あ、その角度いいですね。」
シャッターを押す。
画面を確認すると、海と青空を背景にした一枚が映っていた。
「あ、いい感じ!」
あかりは湊の隣へ駆け寄る。
「見せてください!」
二人でスマホをのぞき込む。
肩が軽く触れた。
「あ……。」
お互いに少しだけ距離を取る。
「す、すみません。」
「いえ!」
また同時に謝ってしまい、二人とも笑ってしまった。
午前中の撮影は順調だった。
立ち姿、座ったポーズ、波打ち際を歩く姿。
最初は硬かったあかりの表情も、少しずつ自然になっていく。
「神崎さん。」
「はい?」
「写真、上手くなってません?」
「モデルさんがいいからですよ。」
一瞬、あかりの動きが止まる。
「そういうこと、さらっと言うんですね。」
「本当のことです。」
照れたように笑ったあかりは、小さく首を振った。
「その調子で褒められると、ちょっと照れます。」
昼が近づき、日差しはさらに強くなっていた。
「あっ。」
あかりがバッグの中をごそごそ探し始める。
「どうしました?」
「日焼け止め、塗り直さないと。」
腕や首筋へ手際よく塗っていく。
脚にも塗り終えたところで、困ったように動きが止まった。
「……やっぱり届かない。」
「え?」
振り返ったあかりが、小さく笑って見せる。
「背中だけ、自分じゃ無理なんです。」
少しだけ間が空く。
波の音だけが聞こえた。
「あの……。」
恥ずかしそうに視線を逸らしながら、あかりは小さな声で言う。
「お願いしても……いいですか?」
波の音だけが、静かに耳へ届く。
「あの……。」
あかりは日焼け止めを差し出したまま、照れくさそうに笑った。
「お願いしても……いいですか?」
湊は一瞬だけ固まった。
「ぼ、僕でいいんですか?」
「神崎さんしかいませんし。」
そう言われると断る理由もない。
「……分かりました。」
日焼け止めを受け取る。
「じゃあ、失礼します。」
「はい。」
あかりは髪を前に流し、背中を向けた。
白い肌に、海風がそっと吹き抜ける。
湊は必要以上に見ないよう意識しながら、手のひらへ日焼け止めを出した。
「冷たっ。」
「すみません。」
「ふふっ、大丈夫です。」
できるだけ手早く、ムラにならないように伸ばしていく。
指先が触れるたび、自分でも分かるくらい緊張していた。
「神崎さん。」
「はい。」
「手、震えてますよ。」
「……ばれました?」
「ばればれです。」
くすっと笑う声に、湊は苦笑いを返す。
「仕事なのに情けないですね。」
「私は、その方が安心します。」
「え?」
「慣れた感じで触られるより、ずっと。」
振り返ったあかりは少し照れながら笑った。
「ありがとうございます。」
その一言で、湊の肩から力が抜けた。
◇
午後の撮影は、午前中とは別人のようだった。
「そのまま笑ってください!」
「こんな感じですか?」
「いいですね!」
レンズ越しに見えるあかりの笑顔は、さっきまでよりずっと自然だった。
「神崎さんのおかげかも。」
「僕ですか?」
「はい。最初は緊張して笑えなかったんです。」
照れ笑いを浮かべるあかりに、湊も笑みを返す。
「それならよかった。」
一通り撮影を終えると、あかりは大きく伸びをした。
「終わったぁ!」
青い海へ目を向ける。
「少しだけ、海を歩きません?」
「もちろん。」
靴を脱ぎ、波打ち際を並んで歩く。
ひんやりした海水が足元をくすぐるたび、あかりは子どものようにはしゃいでいた。
「気持ちいい!」
「仕事なのを忘れそうですね。」
「今日は、半分くらい楽しんじゃってます。」
その瞬間だった。
「きゃっ!」
濡れた岩で足を滑らせる。
湊は反射的に腕を伸ばした。
「危ない!」
ぐっと引き寄せた勢いで、あかりの体が湊の胸へ飛び込む。
二人の距離が、一気に縮まる。
目が合った。
あと少し動けば、おでこが触れてしまいそうな距離。
「…………。」
「…………。」
波の音だけが、二人の間を流れていく。
先に我に返ったのは湊だった。
「す、すみません!」
慌てて手を離す。
あかりは頬を赤く染めたまま、小さく息をついた。
「いえ……。」
胸へ手を当て、照れ笑いを浮かべる。
「びっくりしました。」
「ケガはありませんか?」
「はい。」
少しだけ間を置いて、あかりは湊を見上げた。
「でも……。」
「?」
「神崎さんがいてくれて、よかったです。」
その笑顔は、朝よりもずっと柔らかかった。
◇
帰り支度を終え、駐車場まで荷物を運ぶ。
「今日は本当に助かりました。」
「こちらこそ。」
「実は最初、便利屋さんって少し不安だったんです。」
あかりは照れくさそうに笑う。
「でも、今日一日で考えが変わりました。」
「それはよかったです。」
「写真だけじゃなくて、ちゃんと私のことも気にかけてくれて。」
少しだけ視線を逸らし、小さな声で続ける。
「もし次も撮影するなら……また神崎さんにお願いしたいです。」
湊は笑って答えた。
「便利屋みなとは僕一人なので、予定が合えばいつでも。」
「あ、そうでした。」
あかりも笑う。
「じゃあ安心ですね。」
二人は笑顔で手を振り、それぞれの帰路についた。
◇
事務所へ戻った湊は、机に荷物を置く。
そのタイミングでスマホが震えた。
『便利屋みなと 新しい依頼が届きました。』
画面を開く。
『部屋の片付けをお願いしたいです。
一人では動かせない家具があります。
できれば長時間お願いできる方を探しています。』
「部屋の片付けか。」
そこまでは、よくある依頼だった。
だが、依頼内容の最後に書かれた一文を見て、思わず画面を見返す。
『散らかりすぎて、玄関から入れません。』
「……どんな部屋なんだ。」
次回『部屋、散らかりすぎました。』




