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デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第二章 ハルシネーション・モンキーズ
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9 いつ基準の未来/見張り

 新首都高に乗ってしばらく。

 

 新羽田国際インターチェンジを過ぎるあたり、夕闇から夜に切り替わる時間帯。このあたりの高速道路は、10年ほど前に、羽田空港と新首都方向を結ぶ経路を中心とした大規模改修が行われ、車線が多く、道幅も広く、混雑も大幅に緩和され、大型連休や年末をのぞげば常にスムーズだ。照明も緑と青を基調とした電光掲示板とナビシステムと連動したAR標識・案内が、走っているだけも遊園地のアトラクションに乗っているような気分にさせてくれる。

 

 「この道、きれいですよね。近未来って感じ」 そう言えば、助手席に乗ってじっくり道路の様子を眺めるのは初めてだった。そもそも小松さんの運転する車の助手席に乗るのも初めてだけど。


 「いつ基準の近未来だよ」

 「2168年ですかね」

 「なんで?」


 「小学3年生だったんで。その頃に社会科見学で来たことあるんです。その時は、ここらへん大規模工事中でしたよ。中学生になる頃まで工事してて、ここって永遠に工事中なのかと思ってました」

 「2168……もう就職して働いてたわ……」

 「あはは、そう考えると不思議ですね! まだランドセル背負って公園で鬼ごっこしてましたよ」


 「男子に混ざってそうだな」

 「男子より脚早かったですよ」


 「目に浮かぶわ。今でもランドセル似合いそうだし」

 「はぁ?! どういう意味ですか!?」


 「あ、運転に支障があるのでお静かにお座りください」

 「自動運転にすりゃ良いじゃないですか! せっかく綺麗なんだし、景色見ながら」

 「車は自分で運転するから楽しいんだ。お前もそうだろ?」


 む。


 「ま、それはそうですけど」

 くそ……何かごまかされた。

 

 とはいえ、言うに事欠いてランドセルが似合うだと?

 もう少し、色気のある格好してくるべきだった? 

 黒のニットシャツに細身のカラージーンズ。極めてシンプルな格好だけど、だってラーメン食べに行くのにそんな気合い入れるのも変だし。


 別にデートってわけでもない……。

 小松さんもグレーのパーカーにジーンズ。

 そう言えば、あんまり私服は見たことないけど。

 

 まぁ、可もなく不可もなく。

 

 ……別に、普段の職場の制服との違いに何か感じるものなんてない。

 

 ていうか、自分の格好だって、大人っぽいもんでもないじゃんか。

 

 そう言えば、小松さんの車に乗るのも初めてだ。国内最大手メーカーの豊出自動車、そのド定番看板車種「リード」の、ワゴンタイプの黒。あんまり車にこだわりがないのか……と思ったけど、それは外見だけで、中身はかなりカスタムされてる。音響システムはオーディオブランドの「オトダマ」のカーオーディオ高級ラインのものに交換されてるし、所々木目調のパーツや黒のレザーに付け替えられていて、何か上質な感じ。


 「内装に金使ってるな、と思っただろ」

 「え?」


 「基本目立ちたくないんだよ。この車は、日本中どこにでも走ってるし、その黒か白なんてそれこそ山ほどある。お前の神岡自動車の「ミューズ」なんてめっっったに見ないから、知ってる人が見たら、あ、西園寺がいるぞってすぐばれちまう」

 「な……いいじゃないですか! めっちゃ可愛いんですよ! 内装も個性的だし! 今度乗せてあげます」

 

 あれ?

 黙った。

 

 「誰に見られてるか分からんから、止めとく」


 はぁ?


 「すごい警戒心ですね……スパイにでも追われてるんですか?」

 「可能性はあるぜ」

 「え?」

 

 ん?

 何だ?


 「この車、通信遮断機能もオプションでつけてんだ。ちょっとだけ、閉鎖モードにするぞ」

 小松さんが、ナビの下側に手を伸ばすと、何か物理スイッチをパチンと押す音が響いた。

 

 ARナビが消え、今時珍しい、後付けの物理速度メーターだけが光を放っている。

 

 「お前、仕事してて、見張られてるって思ったことはないか?」


読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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