10 はぐらかすよりもっと
「え? 職場で?」
何の話を始めたんだ?
「職場も、現場も。どっちもさ」
「小松さんは、あるの?」
「分からない」
「……あのですねぇ……」
何だその話は……。
「別に根拠や証拠があるわけじゃないんだ。だけど、な。第二小隊に配属されて……いつ頃からだったか。俺の行動や、作戦状況、イザナギの運用状況、そういうのが全部、見張られている感じがして、な。お前は、そういうの無いか?」
「えー……うーん……」
か、考えたことも無かった……。
シートベルトの位置を直しながら、悩んでしまう。
……。
「ぷはっ」
あははははは。
急に小松さんが笑い始めた。
「な、何ですか?」
「いや、良いんだ。お前はそれでいい」
「あ、絶対今、バカにしてますよね?!」
「そんなことないさ。部隊に復帰できてよかったと思ってる。思いの外、早く許可が降りたもんだ。あの新しい力も、心身への悪影響は認められない、と。とりあえずそれは良かった」
「はぐらかすのはずるいですよ!」
「不安はないか?」
「え?」
「不安な時は、あの力は使わなくて良い。そもそもさ、リミッターを外さないといけない現場なんて、そんな状況にしちゃいけないんだよな。だから、俺はお前がリミッターを外さなくて済むように、頑張る」
……。
「何ですか、急に……」
そんなの、はぐらかすより、もっとずるい。
ほんと、子供扱いしてるから、そういうことも平気で言えるんですよね。
いやいや、単なる部下を気遣う発言だし。
しかし、それはそれで、そのまま受け取る訳にはいかないな。
「必要な時は使いますよ」
「ん」
「それが必要なら、それで何かをあきらめずに済むなら、私は迷わないです」
ちらりと、小松さんが私の方を見た。
パチン、と押す音が響いて、ARナビが復活する。
「もうすぐ着くぜ。もう腹ぺこで死にそうだ」
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