7 ガリレオ
「……いくら何でも、趣味が悪すぎるんじゃないか?」
全身から吹き出る汗が、装甲具装着者用スーツを濡らす。送風乾燥スイッチを押して、呼吸を整える。
高精度VRシュミレーター「ガリレオ」。
日本の「木下映像研」が開発した製品。当初はゲーム会社から出資を受けて開発されたものだった。
ヘッドマウントディスプレイに脳波制御用電極を併用した、独自の機構は、視覚、感触、嗅覚さえも、現実と相違なく再現する。
あまりの没入感に、商業用の販売が禁止されたものの、その技術は各国の軍事、医療分野からの注目を集め、特殊訓練用VRシステムとして普及した。
「動きは、本物よ。強かったでしょう? 西園寺さん。慌てて、本能的に、第一段階のリミッター解除をしちゃうくらいに」
「……」
「殺されるって、思った?」
質が悪い。
それが、本当の目的。
ー西園寺さんのリミッター解除のレベルをはかってみない? あなたの訓練にもなると思うからー
リミッター解除状態の装甲具のデータは少ない。特に、最近の西園寺さんの力は、警察庁中央集中情報処理システム「アマテラス」が予測を外した、リミッター解除データの特異点の一つ。
僕の訓練なんかじゃない。
西園寺さんの、リミッター解除のシュミレーターによる再現。それが、さっきの、あの狂気に満ちた、攻撃性だというのか。
それを僕がどう感じるか、その脳波や心拍……僕の心理状態のデータを取ろうとした。
「……ナツ……」
「でも、さすがね。あの西園寺さんを、シュミレーターとはいえ、倒しちゃうんだから。捜査第5課も喜ぶわね。上にも言っておくわ。引き続き、第2小隊もアンダーコントロールですって」
第1小隊も、第2小隊も、見る人が見れば、すぐに分かる。
これは、国家の戦力だと。
「さて、次は本当に訓練だけど、まだやれる?例のお猿さん達。状況をコントロールするために、対処の仕方を練習しておいてほしいの」
僕は深くため息をついた。
「仰せのままに」
ナツが……嬉しそうに微笑んだ。
それを見て、喜んでいる自分は、たいがい狂ってるな、とそう思った。




