表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デッドリィ・ストライプ  作者: 鳩峰浦
第二章 ハルシネーション・モンキーズ
59/59

6 すごいねかざまくん

 「風間君ってさ、何か、時々異様に強いよね?」

 報告書を作成していた僕に、急に、西園寺さんが話しかけてきた。


 「あの工場の事件の時の動き、すごかったもんね」

 「急にどうしたんですか?」


 「ね、そう言えばさ、風間君と組み手、したことないよね」

 「そう言われてみれば、そうですが」

 「今日、この後暇?」


 「え?」


 今日は、このまま待機。特に予定はないので、事務処理のつもりだったが。

 「組み手、相手してくれない?」


 ????


 「僕とですか?」

 何を考えてるんだ?

 今更、何で僕と組み手なんて。

 いや、ちょっと待て。

 「西園寺さん、装甲具の着用禁止は……」


 「さっき、解除された。もう好きに使って良いって」


 ええ?

 聞いてないぞ……。


 ナツのデータ解析が終わったのか?

  

 「リミッターをね、自力で解除できるようになったみたいなの。だから、実戦でも危なげなく使えるように、練習しなきゃって」

 西園寺さんが、笑った。

 

 ***

  

 メンテナンスエリアの先。体育館としても使われる、署内の多目的ホール。

 無駄をそぎ落とした、薄い灰色でのっぺりとしたデザインの訓練用装甲具。

 それをまとった僕と西園寺さんは、無人のホールで向き合っていた。


 こうやって対峙するのは、初めてだった。 

 そして、自分の抱いている感情に、驚いた。

 

 緊張。 

 不安。

 

 「それじゃ、いくよ」

 西園寺さんの声。 

 それは、どこか、喜々とした響きをはらんでいた。

 

 床を蹴った。

 

 一瞬で、攻撃可能範囲に飛び込まれ、鳥肌が立つ。

 慌てて後退し、首元を掴もうとした右手を交わす。

 速すぎる。

 訓練用のスペックで出せる速度じゃない。

 「えー、これかわすの? やっぱ普通じゃないねぇ! 風間君!」

 

 甲高い、西園寺さんの声。

 それは、自分の意思を増幅する装甲具の力に酔っているようだった。

 再び、瞬時に間合いを詰められる。

 

 リミッター解除。

 人間の限界を超えた動き。

 

 それは、C級スペックしかない、訓練用装甲具すら、兵器のような機体に変える。

 

 僕は西園寺さんの放った手刀の動きを読み切り、右手首を掴んだ。


 「えー?! 何で? どうしてそんなことができるの?! おかしくない?!」


 キィキィと頭に響く、甲高い、耳障りな西園寺さんの声が響く。

 

 それを完全に無視し、腹部に横蹴りをたたき込んだ。と同時に、右手首を離す。

 「ごほっ」

 不快な声を発しながら、西園寺さんが吹き飛び、床を転がる。

 間髪入れず飛びかかる。

 床に転がった西園寺さんの頭部に跳び蹴りを放つが、瞬時にかわされ、床に振動が走る。

 

 これを避けるか。

 とんでもない反応速度。


 僕の蹴りを交わしながら、体をブレイクダンスのように回転させ、足払いを仕掛けてくる。それを飛んで交わした僕は……。



 リミッターを解除した。



 僕の放った右の拳が、鈍い音とともに、西園寺さんの頭部にめりこみ、床に叩きつける。


 訓練用装甲具の破片が飛び散る。

 西園寺さんの顔の一部が露出した。


 虚ろな目。


 「す……ごいね、かざま、君」

 

 僕は、振り上げた拳をもう一度その頭部にたたき込んだ。

 

 鈍い、柔らかい感触と、液体の付着感が拳から伝わってきた。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ