6 すごいねかざまくん
「風間君ってさ、何か、時々異様に強いよね?」
報告書を作成していた僕に、急に、西園寺さんが話しかけてきた。
「あの工場の事件の時の動き、すごかったもんね」
「急にどうしたんですか?」
「ね、そう言えばさ、風間君と組み手、したことないよね」
「そう言われてみれば、そうですが」
「今日、この後暇?」
「え?」
今日は、このまま待機。特に予定はないので、事務処理のつもりだったが。
「組み手、相手してくれない?」
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「僕とですか?」
何を考えてるんだ?
今更、何で僕と組み手なんて。
いや、ちょっと待て。
「西園寺さん、装甲具の着用禁止は……」
「さっき、解除された。もう好きに使って良いって」
ええ?
聞いてないぞ……。
ナツのデータ解析が終わったのか?
「リミッターをね、自力で解除できるようになったみたいなの。だから、実戦でも危なげなく使えるように、練習しなきゃって」
西園寺さんが、笑った。
***
メンテナンスエリアの先。体育館としても使われる、署内の多目的ホール。
無駄をそぎ落とした、薄い灰色でのっぺりとしたデザインの訓練用装甲具。
それをまとった僕と西園寺さんは、無人のホールで向き合っていた。
こうやって対峙するのは、初めてだった。
そして、自分の抱いている感情に、驚いた。
緊張。
不安。
「それじゃ、いくよ」
西園寺さんの声。
それは、どこか、喜々とした響きをはらんでいた。
床を蹴った。
一瞬で、攻撃可能範囲に飛び込まれ、鳥肌が立つ。
慌てて後退し、首元を掴もうとした右手を交わす。
速すぎる。
訓練用のスペックで出せる速度じゃない。
「えー、これかわすの? やっぱ普通じゃないねぇ! 風間君!」
甲高い、西園寺さんの声。
それは、自分の意思を増幅する装甲具の力に酔っているようだった。
再び、瞬時に間合いを詰められる。
リミッター解除。
人間の限界を超えた動き。
それは、C級スペックしかない、訓練用装甲具すら、兵器のような機体に変える。
僕は西園寺さんの放った手刀の動きを読み切り、右手首を掴んだ。
「えー?! 何で? どうしてそんなことができるの?! おかしくない?!」
キィキィと頭に響く、甲高い、耳障りな西園寺さんの声が響く。
それを完全に無視し、腹部に横蹴りをたたき込んだ。と同時に、右手首を離す。
「ごほっ」
不快な声を発しながら、西園寺さんが吹き飛び、床を転がる。
間髪入れず飛びかかる。
床に転がった西園寺さんの頭部に跳び蹴りを放つが、瞬時にかわされ、床に振動が走る。
これを避けるか。
とんでもない反応速度。
僕の蹴りを交わしながら、体をブレイクダンスのように回転させ、足払いを仕掛けてくる。それを飛んで交わした僕は……。
リミッターを解除した。
僕の放った右の拳が、鈍い音とともに、西園寺さんの頭部にめりこみ、床に叩きつける。
訓練用装甲具の破片が飛び散る。
西園寺さんの顔の一部が露出した。
虚ろな目。
「す……ごいね、かざま、君」
僕は、振り上げた拳をもう一度その頭部にたたき込んだ。
鈍い、柔らかい感触と、液体の付着感が拳から伝わってきた。
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