憔悴
「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!」
ルキアの悲鳴が部屋中に響き渡った。
いや、声の大きさから考えるに、廊下にも簡単に聞こえるくらいだ。
「はぁっはぁっはぁっ」
ルキアの呼吸は乱れ、額には玉のような汗が浮かび、頬を涙がつたった。
「―っ、はぁ、あ、え? ゆ、夢?」
飛び起きたルキアの視界に入ったのは見慣れた自分の部屋だった。
自分の体をペタペタと触ってみると、服も着ているし妙な所もない。
先程のは夢だったようだ。
「よかっ、た…」
夢だったと分かり、一安心するルキア。
だが、安心した直後に夢の映像が頭の中に浮かび上がる。
「あ、あ…」
そしてガタガタと全身が震え出した。
レックスに犯される夢。
それは恐怖の楔となり、ルキアの心に打ち込まれていた。
しかし、同時にルキアは思う。
あれはおそらく正夢だ、と。
これから自分は他国へ嫁ぐ。
嫁ぐということは、間違いなく夫となる人物に抱かれるということ。
夢の相手がレックスだったのは、嫌悪の象徴的な相手だったからだろう。
だが、問題はそこではない。
クロノ以外の男性に触れられる。
それが恐ろしかった。
それが全てだった。
「クロノ、クロノ、クロノ…」
愛しい人の名を呼び、姿を思い浮かべる。
「あぁ、会いに行かなきゃ」
今のルキアには決定的に思考能力が欠けていた。
ただ、愛しい人に会いたい。
それだけを思い、ルキアはふらふらと歩きだした。




