↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Forget me not  作者: 林檎亭
PR
25/44

残酷な現実

ルキアの誕生日まで一週間となった。

シィルがルキアの部屋を訪れて三日間、ひたすらクロノの事を考えていた。

クロノの事を考えないために、会わないようにしたというのに、クロノとの別れについてずっと頭を悩ませていた。

そのせいで、ルキアは実生活に於いても支障をきたしかねないほどに、弱っていた。

そんな日の事、ルキアは別れの挨拶のために、ある貴族の屋敷を訪れていた。

ここ一月程、ひたすらこうやって縁者の元を回っている。

屋敷につくと、その貴族の夫婦は丁重にルキアを迎えてくれた。

そこで、ルキアは二人の子だという少年に出会った。

「いらっしゃいませ、ルキア様!」

「はい、お邪魔しますね」

「ルキア様、ご結婚おめでとうございます!」

その結婚の意味など知らない少年は、たどたどしい口調で祝福をしてくれる。

「うん、ありがとう」

ルキアも気持ちを受け取り、お礼を言う。

この時のルキアの心中は比較的穏やかだった。

しかし、子どもとは無知故に稀に残酷な言葉を無邪気に突き出す。

「ルキア様、赤ちゃんは男の子がいいですか? 女の子がいいですか? 僕は男の子がいいですっ」

少年は結婚をすれば勝手に子どもが出来るものだと思っていた。

また、子が生まれることは無条件で良いことなのだと。

「男の子だったら、一緒に遊ぶんだ!」

少年は底抜けに明るい笑顔をルキアに向ける。

しかし、ルキアの顔は青ざめ、今にも倒れそうになっていた。


そこからの記憶はあやふやだった。

ルキアは気付いたらベッドに倒れ込み、天井を見ていた。

「子ども」

ふと無意識にその単語が口をつく。

(そうか、子ども、作ることになるよね)

もちろん、少年と違ってルキアはその意味を理解していた。

政治的な事も、立場の事も、行為の事も。

一瞬だけその事が頭をよぎる。

「ひっ」

背筋に寒気が立ち、悲鳴が漏れた。

ルキアは頭を強く横に振ると、頭まで布団を被り、目を閉じた。

何も考えないように、ひたすらそれだけに専念する。

そして、そうしている内にいつしかルキアは眠りに落ちていた。



(あれ? ここは?)

ルキアは知らないベッドに寝転がらされていた。

場所を把握しようと首を廻らせると、一人の男が目に入った。

(クロノ? ううん、違う。誰?)

次第に輪郭がハッキリしてくる。

そして気付く。

金の髪に金の瞳。

(レックス!?)

レックスは服も着ずに、ルキアが横たわるベッドにこちらを向いて座っていた。

(何? どういうこと?)

何が起こっているのか。

ルキアは必死に声を出そうとするが、何故か音が喉に詰まる。

代わりに手足を動かそうにも、緩慢な動きしか出来ない。

そうして、ルキアが四苦八苦している間にレックスがこちらに近付き、覆いかぶさるように、ルキアを上から覗き込む。

口元には相変わらず気分の悪くなりそうな笑みが張り付いている。

そしてレックスはゆっくりとルキアへ手を伸ばす。

(何をする気!? 止めて! 触らないで!)

しかし、ルキアの手足は動いてはくれない。

抵抗が出来ないまま、レックスの手がルキアの頬に触れる。

触れられた瞬間、ルキアの全身に悪寒が走った。

そんなルキアの反応を知るか知らいでか、その手を下へと下げていく。

(いや! 止めて!)

そしてルキアの胸へと手が乗せられる。

そこで気がついた。

ルキアは何も着ていなかった。

その為、レックスの手は直接ルキアの胸に触れている。

(ひっ!)

悪寒・吐き気・嫌悪感が一気に沸き上がる。

さらにレックスの手は全身を這い回るように撫でていく。

その間もルキアは動けないし声も出ない。

ひたすらに気持ち悪さを我慢するしかなかった。

それがどれだけ続いたか、レックスはルキアの腰を抱くように抱えた。

そして、腰を押し付けるようにルキアの下腹部へ突き出してくる。

――まさか。

ルキアはこれまで以上の嫌悪感、いや恐怖を感じた。

(いや、止めて。お願い、止めて! お願いします! 止めて! いや、いや、いや!)

その懇願は聞き届けられることなく―


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。