第15章 帰還の条件と、欠片を集める旅
移動要塞が山道を進む中、突然視界に大規模なシステムメッセージが浮かび上がった。
【重要告知:セッション統合後、特別帰還条件が発動しました】
俺とタカシは同時に顔を見合わせた。
【現実世界への帰還条件】 ・魔王「アズラ=デウス」の討伐 ・「世界の記憶の欠片」を合計5個集める ・起源のセーブポイントを活性化させる
【注意:上記を満たさない場合、魔王討伐後もこの世界に永続的に留まることになります】
タカシが眼鏡を押し上げながら呟いた。
「……本気かよ。
ただ魔王倒せば終わりじゃなかったのか。
RPGっぽく条件が増えてる……」
俺はため息をつきながら地図を広げた。
「まあ、当然といえば当然だな。
俺が転生した時点で、ただの『プレイヤー操作ゲーム』じゃなくなってる。
この世界は、俺たち二人にちゃんと『物語』を歩ませようとしてるんだろう。」
タカシが少し興奮気味に言った。
「つまり、残り3つの四天王を倒しながら欠片を集め、最後に起源の森に戻ってセーブポイントを活性化……ってことか。
結構本格的なエンドコンテンツじゃん!」
「喜ぶなよ。
お前が変態建築で世界をめちゃくちゃにしたせいで、
こんな複雑な条件が追加された可能性もあるんだぞ。」
俺が軽く毒を吐くと、タカシは肩をすくめた。
「まあ、楽しもうぜ。
次の四天王『影のヴェルティス』が守ってる隠し遺跡に、最初の欠片があるらしい。
行ってみよう。」
二日後。
俺たちは影に覆われた古代遺跡の前に要塞を停めていた。
周囲は不気味な闇が濃く、普通の光源ではほとんど視界が利かない。
タカシが要塞から魔力探知結界を展開しながら言った。
「ヴェルティスは幻術の専門家。
影から本物と偽物を同時に攻撃してくるらしい。
俺の結界で影の動きを制限するから、ユウタは光属性スキルで一気にぶち破ってくれ。」
「ああ、任せろ。」
遺跡内部に踏み込むと、すぐに影が蠢き始めた。
無数の分身が俺たちを取り囲み、刃を振り下ろしてくる。
「無駄だ……お前たちなど……」
ヴェルティスの声が四方から響く。
俺は新しく得た「自由意志の解放(EX)」を全開にし、
光の剣を大きく振り回した。
「光は影を払う——!」
一閃で周囲の幻影が吹き飛び、
本体の位置を特定。
タカシが即座に魔力結界を狭めて動きを封じ、
俺がトドメの光撃を放つ。
「ぐああああっ……!」
影の四天王は黒い粒子となって崩れ落ち、
その体から輝く青い欠片が浮かび上がった。
【世界の記憶の欠片(影)を入手しました】
【残り:4個】
タカシが欠片を拾い上げてニヤリと笑った。
「一つGET!
やっぱり二人でやると効率いいな。
俺の建築と結界、お前のチート、相性抜群じゃん。」
「素直に褒めんなよ……
でも、確かに悪くない組み合わせだ。」
遺跡の最奥で、もう一つ収穫があった。
ヴェルティスが守っていた古い石碑に、起源のセーブポイントに関するヒントが刻まれていた。
【起源の森のセーブポイントは、すべての欠片を集めた者のみ活性化可能。
勇者とその伴侶が共に触れることで、真の帰還の扉が開く】
俺は石碑を読みながら小さく笑った。
「伴侶って……お前がそれかよ。
なんか嫌な予感がするな。」
タカシが大笑いした。
「ははは! 俺がお前の伴侶!?
現実に戻ったら一生ネタにされるぞこれ!」
「うるさい!!
うわああああ!! 絶対に誰にも言うなよ!!!」
その後も旅は続いた。
次の火山地帯で「炎帝の残党」との戦い、
雪山での「凍てつく四天王」との激闘。
それぞれで欠片を1つずつ入手し、
俺のレベルは110を超え、タカシの建築スキルも「戦略的支援」としてどんどん洗練されていった。
道中、俺たちは何度も喧嘩した。
「おいタカシ! また勝手に要塞の砲台増やしてるだろ!
RPG感が台無しなんだよ!」
「でもこれ便利だろ! 魔物一掃できるし!」
「便利じゃなくて、冒険感が死ぬんだよ!!」
そんなやり取りを繰り返しながらも、
少しずつ欠片は集まっていった。
残り1個。
最後の四天王を倒した夜、要塞の上で俺たちは星を見上げていた。
タカシが静かに言った。
「ユウタ……全部集めたら、本当に現実に戻れるんだな。
お前、戻ってから何したい?」
俺は少し考えてから答えた。
「普通に生きる。
残業しすぎて死ぬような人生はもう嫌だ。
……お前とまた、普通にゲームやるのもいいかもな。」
タカシが照れくさそうに笑った。
「俺もだ。
今度はお前がプレイヤーで、俺が苦労する側な。」
「約束だぞ。」
二人は拳を軽く合わせた。
残るは最後の欠片と、起源の森でのセーブポイント活性化、そして魔王戦だけ。
『Brave New World Online』は、
俺とタカシが作り上げた、
少し歪で、でも確かに「俺たちらしい」物語の、
終わりへと近づいていた。
第15章 終わり




