第13章 四天王の影と、二人の初共同戦線
移動要塞は北の山脈に向かって、轟音を立てながら進んでいた。
車輪が大地を震わせ、魔力浮遊装置が低く唸る。
俺とタカシは操縦席で地図を広げ、情報を整理しながら旅を続けていた。
「次の街まではあと半日か。
そこから山道に入ると、四天王の一人『炎帝ガルド』が守ってるって情報だったな。」
タカシが眼鏡を押し上げながら言った。
俺は腕を組んでため息をつく。
「炎帝……火属性の強敵か。
お前の要塞、火に弱くないだろうな?
全部木と石で作ってるみたいだけど。」
「安心しろ! 魔力耐火コーティング済みだ。
俺がプレイヤー時代に『最悪のケースも想定して』ってやり込んでた成果さ。
ユウタがチートスキルで援護してくれれば、無双できるはず!」
「……お前、プレイヤー時代からこんな最終兵器作る気満々だったのかよ。
普通に魔王倒すルートを進めてくれればよかったのに。」
俺が毒を吐くと、タカシは笑いながら操縦レバーを調整した。
「だって面白かったんだもん!
お前が『待て! クエスト無視すんな!』って心の中で叫んでるの、
画面越しに想像してニヤニヤしてたよ。」
「うわああああ!! 今そのニヤニヤ顔がめっちゃムカつく!!
親友のくせに、俺の絶望をエンタメにしてたのかよ!!」
二人がいつものように喧嘩を始めると、要塞の自動警報が鳴り響いた。
【前方に高出力魔力反応! 四天王級の存在を確認!】
山道の先、炎を纏った巨漢が道を塞いで立っていた。
身長五メートルは超える筋肉の塊。
全身から赤黒い炎が噴き出し、周囲の木々を一瞬で灰に変える。
「フハハハ! 勇者よ、よくぞここまで来た!
我が名は炎帝ガルド! 魔王陛下の四天王の一人……って、なんだその巨大な城は!?」
ガルドが要塞を見て目を丸くした瞬間、
タカシが操縦席で興奮気味に叫んだ。
「来たぜ、ユウタ! 初の四天王!
俺の要塞で迎撃準備! お前はチートスキルで援護頼む!」
「了解……ってお前、迎撃って要塞ごと突っ込む気か!?
待て待て、普通に戦えよ!!」
俺が止める間もなく、要塞が加速した。
四つの巨大車輪が回転を上げ、炎帝に向かって突進していく。
ガルドが両手を広げ、巨大な火球を放った。
「愚かな! 焼け落ちろ!!」
火球が要塞に直撃——したはずだったが、
魔力耐火コーティングが炎を弾き、車輪が火を踏みしめてさらに加速する。
タカシが操縦席でガッツポーズを取った。
「やった! 耐えてる!
ユウタ、今だ! スキルぶちかませ!」
俺は塔の先端に飛び乗り、魔力無限を全開にした。
「剣術の才能(SS)……発動!」
光の剣が俺の手に現れ、
一閃で火球を切り裂きながら、ガルドの胸に突き刺さる。
「ぐおおおっ!? この威力……勇者め、ただ者ではないな!」
ガルドが炎の拳を振り上げて反撃してきたが、
要塞の車輪がその拳を跳ね返し、
俺が追加で光の連撃を浴びせる。
タカシが要塞の側面から小型ゴーレムを大量射出。
ゴーレムたちがガルドの足元に群がり、動きを封じていく。
「ユウタ、ナイス!
この調子でいけば、四天王なんて楽勝だぜ!」
「楽勝じゃねえよ!!
お前の要塞がなかったら、俺一人で苦戦してたわ!
でも……まあ、悪くないコンビだな。」
二人の息が合った攻撃が続き、
ついにガルドが膝をついた。
「く……っ、魔王陛下……この力……!」
最後の光の剣がガルドの胸を貫き、
四天王の一人が灰となって消え去った。
要塞の上で、俺とタカシはハイタッチをした。
「やったな、ユウタ!
初四天王撃破!」
「ふん……お前の変態要塞がなければ勝ててなかった。
でも、次からはもっと普通の戦い方を提案してくれよ。
街の人たちが『勇者と一緒に巨大要塞が来た!』ってパニックになるの、
俺の心が痛いんだぞ。」
タカシは笑いながら要塞を再び発進させた。
「了解。でも移動要塞はもう手放せないぜ。
次は『影の四天王』がいるって情報だ。
あいつは幻術が得意らしいから、俺の要塞で物理的にぶっ飛ばそう!」
「幻術に物理でぶっ飛ばすとか、お前らしいな……」
二人は夕陽を背に受けながら、要塞を北へ進めた。
道中、遭遇した魔物たちは要塞の車輪に巻き込まれ、
または俺のチートスキルで一掃されていく。
夜のキャンプでは、要塞のてっぺんで焚き火を囲んだ。
タカシが干し肉を齧りながら言った。
「ユウタ……現実に戻ったら、また一緒にゲームやろうぜ。
今度は俺が主人公でお前がプレイヤーな。」
俺はビールを飲みながら、軽く笑った。
「その時は絶対に変態プレイ禁止な。
俺が操作する時は、普通にストーリークリアするから。」
「約束するよ。
……でも、ちょっとだけ建築はいいだろ?」
「却下!!
うわああああ!! また建築の話かよ!!!」
二人の笑い声が、夜の山間に響いた。
四天王を一人倒したことで、
魔王軍の動きが活発化している気配を感じた。
残る三人の四天王、そして魔王本人。
道はまだ長い。
それでも、俺とタカシは喧嘩をしながら、
笑い合いながら、
『Brave New World Online』の世界を突き進んでいた。
親友二人が作る、
史上最もカオスで、最も熱い魔王討伐の物語は、
着実にクライマックスに向かっていた。
第13章 終わり




