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【完結】可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第63話 「帝国の未来」

帝都へ戻って数日後。


「呼び出しです」


伝令の言葉に、談話室が静かになった。


「また?」

ミレーユが言う。


最近多かった。帝国軍。帝城。会議。依頼。ろくな予感がしない。


「今度は何ですかね」

ユナが不安そうに言った。

「夜型解除とか」


カレンが言う。全員が期待した。一秒だけ。


「ないわね」


フィアナが即答した。夢を見るのは自由だった。現実は厳しい。


その時、ソファに寝転がっていたルナが、珍しく起き上がった。


「私は今回、留守番する」

「珍しいわね」


ミレーユが少し意外そうに言う。いつもなら真っ先について来たがるはずだった。


「なんとなく」


それだけ言うと、ルナはまた寝転がってしまった。理由は分からなかったが、誰も深くは追及しなかった。


「じゃあ、行ってくる」

「うん、いってらっしゃい」


いつもと変わらない、気楽な見送りだった。


---


そして翌日、リリアたちは帝城へ呼ばれた。豪華な会議室。以前より明らかに偉そうな場所だった。リリアは落ち着かない。


「お菓子ない」


そこか。ミレーユがため息をついた。


---


しばらくして、数人の貴族と軍関係者が入室する。その中には、以前報告書を読んでいた老紳士もいた。穏やかな雰囲気の人物だった。


「本日は来ていただき感謝します」


優しい口調だった。少し安心する。ユナだけは緊張していた。


老紳士は続ける。


「今回は依頼ではありません」


全員が少し安心する。


「では何ですか?」

エレノアが尋ねた。

「君たちの意見を聞きたいのです」


静かになる。意外だった。


「意見?」

セリナが聞く。


老紳士は頷く。


「帝国の未来についてです」


さらに静かになる。重い空気だった。フィアナが小さく息を吐く。


「なるほど」


ようやく呼ばれた理由が分かった。若い世代の意見を聞きたいらしい。


---


まず話し始めたのはセリナだった。


「冒険者を育てるべきだと思います」


真面目な答えだった。


「最近の災害でも人手不足が問題になった」


全員頷く。確かにそうだった。


続いてルシェ。


「物流です!」


力強かった。


「橋と街道にもっと投資するべきです!」


商人らしい意見だった。老紳士も興味深そうに聞いている。


エレノアは言った。


「地方との連携を強めるべきですわ」


貴族らしい視点だった。


続いて、ノアが小さく手を挙げた。


「森の情報、大事」


短い発言だった。老紳士が続きを促す。


「詳しく聞かせてもらえますか」

「地形も、獣道も、災害の前触れも、森を知ってる人にしか分からないことがある。狩人の意見、もっと聞いた方がいい」


普段の口数の少なさからは想像できないほど、まとまった意見だった。老紳士が感心したように頷いた。


ティアも、少し遅れて口を開く。


「装備の話をするなら、俺は現場を知る職人の意見も反映してほしい。書類の上だけで決められると、現場が困ることが多い」


鍛冶師としての立場からの、実感のこもった一言だった。


---


フィアナも続く。


「同盟国との交流を増やした方がいいと思います」


会議室が少し静かになる。だが、誰も反対しなかった。フィアナは続ける。


「今回の災害で分かりました」

「困っている人は同じです」

「国境は関係ありません」


優しい声だった。老紳士もゆっくり頷く。


「良い意見ですね」


フィアナは少し照れた。


---


カレンも、手帳を開きながら発言した。


「データが足りていません。災害の発生傾向、地質、季節による変化。感覚だけで対応するより、記録を積み重ねて予測できる体制を作るべきだと思います」


理屈っぽい提案だったが、老紳士は真剣な顔でメモを取っていた。


「有意義な視点です」


---


やがて、話題はリリアへ向いた。


「リリア殿はどう思いますか?」


静かになる。全員が見る。嫌な予感しかしない。


リリアは考える。長かった。珍しく。本当に珍しく。そして、


「仲良く」


短かった。会議室が静かになる。ミレーユが頭を抱える。


「説明しなさい」

「えー」


嫌そうだった。しかし、少し考えてから続ける。


「みんな仲良い方がいい」

「帝国も」

「同盟国も」

「街の人も」

「冒険者も」


さらに考える。


「困ってる人が少ない方がいい」


静かになる。誰も笑わない。リリアは真面目だった。本人も気付いていないくらい。


「助けられるなら助けたいし」

「笑ってた方がいい」


それだけだった。難しい理論はない。立派な政策もない。ただの本音だった。


しかし、会議室の空気は柔らかくなっていた。老紳士は微笑む。


「なるほど」


小さく頷く。


「それが一番難しいのかもしれませんね」


会議はそこで終了となった。


---


帰り道、帝城の廊下を歩く。ユナが聞いた。


「先輩って凄いですね」

「なにが?」

「帝国の未来について話してました」


リリアは首を傾げた。


「ご飯の話じゃなかった?」


全員が止まる。数秒後、フィアナが吹き出した。ルシェも笑う。セリナも苦笑する。


ミレーユは天井を見上げた。


「やっぱりリリアだったわ」


安心したような声だった。


---


拠点へ戻ると、ルナが窓辺に座って、ぼんやりと空を見上げていた。


「ただいま」

リリアが声をかける。

「おかえり」


いつもの調子だったが、その視線は、どこか遠くを見ているようだった。


「留守番、暇だった?」

「うん、まあまあ」


ルナはそう言って、いつもの笑顔に戻った。だが、ほんの一瞬だけ見せた真面目な横顔を、リリアは少しだけ覚えていた。


---


その日の夜、帝城。老紳士は窓の外を見ていた。帝都の灯りが美しい。机の上には会議記録。最後の頁には一言だけ記されていた。


『困っている人が少ない方がいい』


老紳士は小さく笑う。


「単純だ」


そして、


「だからこそ忘れやすい」


誰にも聞こえない独り言だった。


帝国の未来は、まだ分からない。だが、少なくとも今、その未来を考える若者たちは確かに存在していた。

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