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【完結】可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第61話 「深夜の出動」

深夜、救助隊の新しい拠点。みんな寝ていた。当然だった。時計は午前一時。静かな夜。その平和は、玄関を叩く音で終わった。


どんどんどん。


「起きてください!」


大きな声。一階に部屋を持つミレーユが真っ先に反応し、扉を開けた。二階からは、ルシェとユナが慌てて階段を駆け下りてくる音。研究室で作業していたカレンは、椅子から転げ落ちた。


「何ですか!?」


扉の向こうには兵士が立っていた。


「緊急依頼です!」


一つ屋根の下にいる利点は、こういう時にこそ発揮された。誰かを起こしに走る必要も、集合場所を探す必要もない。玄関ホールに、あっという間に全員が集まった。工房で寝泊まりしていたティアも、寝間着のまま道具箱を担いで駆けつけている。


「早いな」

セリナが感心したように言う。

「拠点が同じだからな」


隊長からの説明通りだった。専属宿舎の意味を、全員が実感した瞬間だった。


---


十分後、リリアたちは帝都の外へ向かっていた。事情は単純だった。崖崩れ。山道が崩落。複数の住民が取り残されている。昼を待てば間に合わない可能性が高い。


「急ぐぞ」

セリナが言う。


全員頷く。そして、現場へ到着した。


---


状況は想像以上だった。巨大な土砂。崩れた木々。兵士達が救助を続けている。だが進まない。暗い。危険。時間も足りない。


松明の明かりだけでは、崩落の全体像すら掴めなかった。


「暗すぎるな」

セリナが呟く。


その時、エレノアが両手を掲げた。


「わたくしにお任せくださいませ」


指先に光が集まる。ふわりと浮かび上がった光球が、いくつも夜空へ放たれた。まるで小さな月がいくつも灯ったように、崩落現場全体が明るく照らし出される。


「これは……」


兵士達が息を呑んだ。松明とは比較にならない明るさだった。土砂の広がり方、崩れた木々の位置、危険な亀裂の走り方まで、はっきりと見て取れる。


「ありがとうございます、これなら」


隊長も安堵の表情を見せた。


「まだ増やせますわ」


エレノアが更に光球を放つ。作業する兵士達の足元まで、隅々まで光が届くようになった。


---


隊長が駆け寄ってくる。


「最悪だ」


珍しく焦っている。


「奥に子供達がいる」


静かになる。カレンが崩落の状況を、明るくなった視界を頼りに素早く見渡し、地形を指差した。


「土砂の流れ方から見て、あちらの窪地に人が流されている可能性が高いです。まず、そこを優先すべきかと」


分析担当としての初仕事だった。エレノアの光がなければ、これほど早い判断はできなかったかもしれない。隊長がすぐに部下へ指示を飛ばす。


リリアが前を見る。そして、


「夜型使う?」


全員が固まった。一瞬だけ。ミレーユが顔をしかめる。朝六時。嫌な記憶が蘇る。しかし、今は緊急事態だった。


「使うしかないわね」


全員が頷く。


---


次の瞬間、夜型発動。世界が変わる。身体が軽い。視界が広い。感覚が鋭い。何度経験しても異常だった。


「行く!」


リリアが飛び出す。風魔法。一気に加速。土砂の上を駆け抜ける。速い。あまりに速い。エレノアの光に照らされた道を、迷いなく駆けていく。


ユナが呆然とする。


「先輩速すぎません!?」

「今さら?」


カレンが言う。慣れてきていた。少しだけ。


セリナとノアは、周辺の警戒に当たった。


「二次崩落、あるかもしれない」

ノアが小さく言う。

「注意しておく」


セリナが頷き、明るく照らされた斜面へ視線を配る。光があるおかげで、わずかな地面の動きも見逃さずに済んだ。ティアは土砂撤去を手伝う。ルシェは物資配布。


エレノアとフィアナは避難者誘導にあたっていた。光球を維持しながらの誘導は、エレノアにとって決して楽ではなかったが、弱音は一切出さなかった。


「怖がらなくて大丈夫ですわ。順番にお連れしますから」

エレノアが子供を抱きかかえながら声をかける。

「あと少しよ」


フィアナも並んで、避難者たちを安全な場所へ誘導していく。全員が動く。救助隊らしく。必死に。


---


数時間後、最後の取り残された家族を発見する。無事だった。子供もいる。母親もいる。兵士達が安堵する。


「助かった」


本当に。あと少し遅ければ危なかった。救助完了。全員ほっと息を吐く。


エレノアも、ようやく光球を静かに消した。額には、うっすらと汗が滲んでいた。足元が、少しふらついている。


「お疲れ様、エレノア」

ミレーユが労う。

「これくらい、大したことありませんわ」


そう言いながらも、顔色は明らかに優れなかった。


その様子に気付いたリリアが、すっと隣に来た。


「疲れた?」

「少しだけですわ」


強がりだったが、リリアには分かっていた。手のひらを差し出し、集中する。ぽたっと落ちたのは、透明ではなく、薄い緑色をした水だった。


「これ、飲んで」

「これは?」

「魔力の水。回復水とはちょっと違う」


エレノアは少し驚きながらも、素直に受け取って口をつけた。ほのかに甘い味が、喉を通っていく。


「……あら」


数秒後、体の奥から、じんわりと力が戻ってくる感覚があった。指先の重さが消え、足元のふらつきも治まっていく。


「楽になりましたわ」

「よかった」


リリアがほっとした顔で笑う。


「回復水も色々作れるんだな」

セリナが感心したように言う。

「傷だけじゃなくて、魔力も」

ミレーユも頷いた。


エレノアは、まだ半分ほど残った緑色の水を見つめながら、小さく笑った。


「また一つ、あなたの新しい特技が増えましたわね」

「使い分け、得意になった」


誇らしげな答えだった。


---


その時、東の空が少し明るくなっていた。ミレーユが時計を見る。嫌な予感がした。


「リリア」

「なに?」

「今何時?」


リリアも時計を見る。そして、


「五時五十分」


沈黙。全員の顔色が変わる。一斉に。


カレンが叫ぶ。


「帰りましょう!」

「急いで!」


ユナも叫ぶ。セリナも真顔。フィアナも真顔。被害者の会、緊急行動開始。


隊長だけが意味不明そうだった。


「どうした?」

「説明している時間がありません!」


ミレーユが叫んだ。そして、全員で新しい拠点へ向かって走り出す。後ろではルナが大笑いしていた。


「あはははは!」


平和な深夜救助は終わった。次に待っているのは、午前六時。もっと恐ろしい戦いだった。

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