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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第60話 「新しい住処」

救助隊結成から数日後、リリアたちは帝国軍本部に呼ばれていた。


「今日はなんでしょう」

ルシェが首を傾げる。

「また依頼?」


リリアが聞く。隊長は首を振った。


「依頼じゃない。住居の話だ」


全員が顔を見合わせる。


「住居?」

ミレーユが聞く。

「そうだ」


隊長は一枚の地図を広げた。帝都の一角、学校からそう遠くない場所に印がついている。


「救助隊として動く以上、緊急時にすぐ集まれる拠点が必要だ。専属の宿舎を用意した」


静かになる。


「全員、ですか?」

エレノアが聞く。

「全員だ」


隊長は頷いた。


「学校の生徒も、商人科の生徒も、工房勤めの職人も、それぞれ生活拠点が別だった。それでは、深夜の緊急招集に間に合わない」


先日の崖崩れの一件を思い出しているのか、隊長の声は真剣だった。


「一つ屋根の下、というわけだ」


「ちなみに」


隊長が付け加える。


「装備整備を考慮して、敷地内に小さな工房も併設してある」


その言葉に、ティアの目つきが変わった。


「あの、家賃とかは」

ルシェが真っ先に尋ねた。商人らしい質問だった。


「心配いらない。これは救助隊の活動拠点として、帝国が運営費で用意するものだ。個人への支給ではなく、任務のための施設という扱いになる」


隊長がきっぱりと説明する。


「つまり、全員無料ということだ」


その一言に、ルシェの顔がぱっと明るくなった。


「なるほど、経費ですね!」

「経費という言い方が正しいかは分からんが」


隊長は苦笑しながらも、それ以上は訂正しなかった。


---


その日の午後、さっそく新居へ向かった。帝都の一角に建つ、二階建ての大きな屋敷だった。元々は貴族の別邸だったらしく、内装も立派だった。裏手には、確かに炉と作業台を備えた小さな工房が建っている。


「広い」

リリアが目を輝かせる。

「広いですわね」


エレノアも感心している。


玄関を入ると、そこには既に荷物が運び込まれていた。各自の部屋割りは、一階の広間に貼り出された図面で確認する形になっていた。


「部屋、選べるんですか?」

ユナが聞く。

「一応、空いてる部屋なら好きに選んでいい」


案内の兵士が言う。全員が図面に群がった。


---


まず動いたのはミレーユだった。


「私は一階の、あの角部屋にするわ。何かあった時、すぐ動けるように」


冷静な判断だった。誰も異論はなかった。


セリナは、迷わず訓練場に近い部屋を選んだ。


「朝、素振りしやすい場所がいい」

「相変わらずね」

フィアナが笑う。


エレノアは、日当たりの良い二階の部屋を選んだ。


「せめて部屋くらいは、きちんとした場所がいいですわ」

貴族らしいこだわりだった。誰も否定しなかった。


ノアは、一番奥の静かな部屋を選んだ。


「静か」

「それだけ?」

ミレーユが聞く。

「それだけ」


短いやり取りだった。ノアらしい選び方だった。


カレンは、部屋よりも先に、屋敷の隅にある空き部屋を指差した。


「ここ、研究室にしていいですか」

「別に構わないが」

案内の兵士が戸惑いながら答える。

「ありがとうございます!」


即決だった。研究第一だった。


ルシェは、物資の搬入経路を確認しながら部屋を選んだ。


「ここなら、荷物の出し入れが楽ですね」


商人らしい実利的な選び方だった。


ユナは、まだ迷っていた。


「どこがいいかな……」

「先輩の近くがいいんじゃない?」

フィアナがからかうように言う。

「そ、そんなことは!でも私は最後に選びますので皆さん先に選んでください」


慌てて否定しながらも、結局リリアが部屋を選んだ後、隣を選んでいた。分かりやすかった。


---


そして、リリアである。


「私、ここ」


適当に指差した部屋は、たまたま日当たりも良く、食堂にも近い、なかなかの好立地だった。


「なんでいつも一番いい部屋を勘で当てるの」

ミレーユが呆れたように言う。

「運がいい」


自信満々だった。


---


そこへ、ティアが荷物を担いで到着した。裏手の工房を、既に一通り見て回ってきたらしい。


「炉の状態、悪くないな」

満足そうに呟く。

「気に入った?」

リリアが聞く。

「上等だ。前の工房より道具も揃ってる」


部屋割りに関しては、迷わず工房に近い一階の部屋を選んだ。


「何かあれば、すぐ工房に行ける方がいい」


合理的な選び方だった。工具箱を下ろしながら、既に頭の中では作業の段取りを組み立てているようだった。


---


最後に、部屋割りの図面を見ながら、ミレーユが首を傾げた。


「あら、一部屋余ってる」

「私の部屋がないんだけど」


聞き覚えのある声。振り返ると、ルナが窓枠に腰掛けていた。いつの間に入ってきたのか、誰も気付いていなかった。


「ルナ、いつからそこに」

「さっきから」

「気配なさすぎでしょう」


フィアナが呆れる。ルナは笑いながら、余った部屋を指差した。


「ここ、もらうね」

「神様も部屋いるの?」

セリナが聞く。

「寝るし、荷物も置きたい」


意外と生活感のある理由だった。


---


夕方、全員の荷物が収まった頃、玄関ホールに集合した。新しい住処を見渡しながら、それぞれが思い思いの感想を漏らす。


「賑やかになりそうですわね」

エレノアが微笑む。

「賑やかすぎるくらいだ」

セリナが苦笑した。


「今日から、ここが私たちの家か」

ミレーユが呟く。


その言葉に、リリアがぱっと顔を上げた。


「家」

「そう、家よ」

「みんなの家」


嬉しそうに繰り返す。それは、ノアが以前口にした言葉と、少し重なるものだった。


「また一つ増えましたわね」

エレノアが小さく笑う。

「家族みたいなもんだな」


工房の方角をちらりと見ながら、ティアも頷いた。


夕日が新しい屋敷を赤く染める。十人と一柱、それぞれの部屋を持つ、賑やかな共同生活が、今日から始まろうとしていた。


「早速、今夜のご飯なんですけど」


リリアが真剣な顔で言う。


「もう決まってるの?」

ミレーユが呆れながら聞く。


「うん。私が作る」


その一言に、全員が顔を見合わせ、そして笑った。新しい家での、最初の夜が始まろうとしていた。

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