第59話 「救助隊結成」
帝都へ戻って三日後。リリアたちは再び帝国軍本部へ呼ばれていた。
「嫌な予感がする」
フィアナが言う。
「分かる」
ミレーユも頷いた。最近呼ばれる時は、ろくなことがない。リリアだけは違った。
「お菓子あるかな」
緊張感がなかった。
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会議室へ入る。そこには以前会った隊長もいた。そして、すでに何人かの軍人が待機している。今回はユナも呼ばれていた。まだ慣れない様子で、少し緊張した面持ちだった。
「よく来てくれた」
隊長が言った。
「どうも」
リリアは手を振る。軽い調子だった。隊長は苦笑する。どうやら慣れてきたらしい。
「今回呼んだのはお礼を言うためだ」
静かになる。
「橋の防衛」
「避難支援」
「回復水による医療支援」
「どれも期待以上だった」
みんな少し照れる。ルシェだけは報酬の話かと期待していた。少し残念そうだった。
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「そこで提案がある」
隊長が地図を広げる。帝国各地に赤い印。かなり多い。
「現状、人手が足りない」
「各地で支援が必要だ」
その言葉に、全員真面目な顔になる。
「君たちに専属救助隊として協力してほしい」
沈黙。予想していなかった。
「救助隊?」
ユナが聞く。
「そうだ」
「討伐隊ではない」
「支援と救助を優先する」
フィアナが頷く。今の自分たちには合っている。
ミレーユが聞く。
「私たちにできるんですか?」
隊長は即答した。
「もうやっている」
誰も言い返せなかった。橋を守った。人を助けた。避難活動も行った。確かに、もう救助隊のようなものだった。
「それと」
隊長がユナへ視線を向ける。
「今回から、君にも正式に加わってもらう」
ユナが目を丸くした。
「私もですか」
「これまでの働きぶりを見ていた。補助役として、十分やっていけるはずだ」
言われて、ユナは一瞬言葉を失った。それから、勢いよく頭を下げる。
「頑張ります!」
隣でリリアが微笑ましそうに見ていた。
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その後、役割分担が説明される。
セリナ。前衛警護担当。
ノア。索敵担当。
ティア。装備整備。
ルシェ。補給と物資管理。
フィアナ。連絡調整。
エレノア。各地の貴族対応。
カレン。状況分析。
ユナ。補助全般。
ミレーユ。全体のまとめ役。
「装備整備、任せてくれ」
ティアが腕を組んで頷く。
「壊れた物は、その場で直せる範囲で直す」
「貴族対応でしたら、慣れておりますわ」
エレノアも自信ありげに言う。
「話し方一つで、話がまとまることも多いですもの」
「ふむ」
ノアが短く頷いた。それだけだった。だが、その一言で十分に納得している様子が伝わった。
カレンは手帳に何やら書き込みながら言う。
「状況分析、任せてください。被害の傾向を数値化して、事前に優先順位をつけられるようにします」
理屈っぽい言い方だったが、頼もしさもあった。
そして、「リリア」隊長が言う。
「回復担当だ」
リリアは少し考えた。
「分かった」
珍しく素直だった。
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「あの」
ミレーユが手を挙げる。
「もう一人、いるんですけど」
隊長が首を傾げる。全員の視線が、いつの間にか部屋の隅で書類を眺めていたルナへ向かった。
「私?」
「あなたも一緒に来るんでしょう」
「うん、暇だから」
隊長は少し戸惑った顔をしたが、すぐに頷いた。
「では、神には、全体の助言役をお願いしたい」
「助言役かぁ」
ルナは気の抜けた返事をした。だが、まんざらでもなさそうだった。
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会議が終わる。帰り道。
「救助隊か」
セリナが呟く。
「なんだか実感ないですね」
ユナが言う。
「私もです」
ルシェも同意した。
その時、「みんな助かる?」リリアが聞く。
ミレーユが見る。リリアは真面目だった。珍しく。
「少しでも多くは助かると思う」
その答えに、リリアは笑った。
「じゃあ頑張る」
単純だった。だが、それがリリアだった。
こうして十人の少女達は、帝国公認の救助隊として動き出すことになった。そのことが、やがて帝国の未来を変えるとは、まだ誰も知らなかった。




