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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第57話 「聖女様」

翌朝、避難村は慌ただしかった。だが、昨日とは違う。明るい。明らかに人々の表情が良くなっている。その理由は一つ、リリアだった。


「聖女様!」


朝一番で呼ばれた。リリアは振り返る。


「誰?」


自分だとは思っていない。当然だった。


「リリアさんですよ!」


住民達は笑顔だ。子供達も集まってくる。


「聖女様!」

「回復のお姉ちゃん!」

「ありがとう!」


大人気だった。リリアは困る。


「違うよ」


否定する。しかし、


「なんて謙虚なんだ」


住民達は感動する。逆効果だった。


---


少し離れた場所で、ミレーユ達が見守っている。


「悪化してない?」

フィアナが聞く。

「悪化してる」


セリナが答える。満場一致だった。


エレノアは、少し困った顔で村人たちを見ていた。


「訂正して差し上げた方がよろしいのでは」

「無駄だと思うわ」


ミレーユが力なく答える。


---


昼頃、住民達から食事を振る舞われる。豪華だった。避難所とは思えないほど。


「おいしい」


リリアは幸せそうだった。その様子を見た住民が言う。


「質素な食事でも喜んでくださる」

「素晴らしい人格だ」

「さすが聖女様」


リリアは気付いていない。


「何言ってるの?」


本気だった。


---


その頃、カレンは頭を抱えていた。


「なんで英雄扱いなんですか」

「助けたからじゃない?」


ルシェが言う。


「それだけなら理解できます」


カレンは手帳を開き、真剣な顔で続けた。


「でも聖女は違います。聖女というのは、神格化された、崇拝の対象を指す言葉です。リリアさんがしたのは、あくまで魔法による治療と、みんなで協力した衛生改善です。功績と信仰を混同するのは、記録として不正確です」


理路整然としていたが、誰もそこまで求めていなかった。


「言いたいことは分かるけど、村の人は気にしないと思うわよ」

「不正確なままにしておくのは、気持ちが悪いんです」


研究者らしい潔癖さだった。


---


その頃、ティアとノアは、村の外れで昨日組み立てた浴槽の補修をしていた。


「昨日の今日で、もう傷んでるな」

ティアが板の継ぎ目を確認する。

「使う人、多かったから」


ノアが手伝いながら答える。二人とも、村の中で騒がれている「聖女」の話は、あまり耳に入っていないようだった。


「リリア、なんか呼ばれてたな」

「聖女、って」

「似合わないな」

「うん」


短いやり取りで、意見は一致していた。


---


夕方、さらに事件が起きる。帝国軍の一隊が村へ到着したのだ。隊長は診療所を見回り、改善した状況を確認する。そして、リリアへ向かって敬礼した。


「感謝する」


静かになる。村人達も見る。兵士達も見る。リリアだけが分からない。


「なにが?」


隊長は少し笑った。


「多くの命を救った」

「そう?」

「そうだ」


短い会話だった。だが、周囲の人々には十分だった。拍手が起こる。歓声も上がる。リリアは困惑する。


---


その時、ルナが後ろから現れた。


「人気者だね」


楽しそうだった。


「違う」


リリアは否定する。ルナは笑う。


「そうかな?」


そして、少しだけ真面目な顔になる。


「助けたんだから褒められていいんだよ」


珍しい言葉だった。リリアは少し考える。それから、笑った。


「じゃあよかった」


単純だった。でも、それで十分だった。


---


夜、村には久しぶりに明るい声が響いていた。子供達は笑い、大人達も笑う。その中心には、いつの間にかリリアがいた。


本人だけが、なぜそうなったのか分かっていなかったけれど。

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