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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第53話 「十人目、正式加入」

翌日の夕方、帝都冒険者育成学校、談話室。いつもの場所だった。だが、今日は少し違う。


昨日の訓練場での騒ぎのあと、談話室にはいつものメンバーが揃っていた。ルシェは商人科の授業終わりに、そのまま様子を見に立ち寄っていた。


「今日も差し入れです」


小さな包みを机に置きながら言う。


「毎日律儀ね」

ミレーユが苦笑する。


ティアも、工房の仕事が一段落したところで顔を出していた。


「ユナの正式加入だって聞いたからな」

「わざわざ来てくれたんですか」

「暇じゃないが、これくらいは」


そう言いながらも、席に着く様子を見ると、まんざらでもなさそうだった。


---


「というわけで!」


ユナが立ち上がる。元気だった。昨日と変わらない。


「正式にお世話になります!」


深々と頭を下げる。拍手が起きた。ルシェが拍手。エレノアも拍手。ティアも拍手。フィアナも。


「よろしく」

ノアがぽつりと言った。短い一言だったが、ユナはその声にも、しっかりと頭を下げ返した。


「よろしくお願いします!」

ユナが言う。

「よろしく」

セリナが頷く。

「よろしくですわ」


エレノアも笑う。和やかな空気だった。


---


その時、ぴこん。静かな音。ユナが固まった。


「あれ?」


全員知っていた。来た。確実に。ユナの前へ文字が浮かぶ。


【ユニークスキル:夜型】


沈黙。


「え?」


数秒後、


「えぇぇぇぇぇ!?」


談話室に悲鳴が響く。盛大だった。


ミレーユが肩を叩く。


「落ち着いて」

「落ち着けません!」


当然だった。


「なんですかこれ!?」


ルシェが優しく説明する。


「夜型です」

「見れば分かります!」


元気だった。カレンが頷く。とても真面目な顔で。


「私もそうでした」

「カレンさんも?」

「はい」

「なんでそんな落ち着いてるんですか!?」

「もう、だいぶ前に諦めました」


説得力があった。


---


ユナはリリアを見る。リリアはお茶を飲んでいた。平和そうだった。


「先輩」

「なに?」

「これ何ですか?」


リリアは考える。五秒、十秒。そして、


「夜型?」


説明になっていなかった。ミレーユが頭を抱え、フィアナがため息をつき、エレノアが苦笑する。いつもの光景だった。


ユナだけが新鮮な反応をしている。


「なんで共有されるんですか!?」


ルナが手を挙げた。


「仲間だから!」


即答だった。


「意味が分かりません!」


当然だった。被害者の会、また一人増加。これで全員揃った。カレン、ユナ、新旧被害者が並ぶ。少し面白かった。


---


その時、リリアが立ち上がる。


「もう一回数える」


全員を見る。嫌な予感はしなかった。今回は。


リリアは指を折る。ミレーユ、セリナ、エレノア、ティア、フィアナ、ルシェ、ノア、カレン、ユナ、そしてルナ


しばらく数える。珍しく真面目だった。そして、


「やっぱり十人だ」


昨日確認したばかりの数字を、もう一度、噛みしめるように呟く。


「達成した!」


その言葉で、みんな気付く。リリアが帝都へ来た理由。仲間を集める理由。最初の夢。全部、ここにあった。


「おめでとう」

ミレーユが言った。

「ありがとう」


リリアが笑う。それは、いつもより少しだけ眩しかった。


---


しばらくして、お祝いのお菓子が並んだ。ルシェが用意した。珍しく太っ腹だった。


「経費です」

「便利な言葉ね」


フィアナが言う。全員で笑った。賑やかな時間が流れる。


---


その時だった。ミレーユがぽつりと言う。


「そういえば」

「なに?」

リリアが聞く。

「みんなの夢は聞いたわよね」


静かになる。セリナは強くなりたい。エレノアは領地を良くしたい。ティアは良い武器を作りたい。フィアナは帝国と同盟国を繋げたい。ルシェは大商人。ノアは居場所。カレンは世界の仕組みを知ること。ユナは立派な冒険者。みんな夢を持っている。


「リリアは?」


静かになる。全員の視線が集まった。


リリアは首を傾げる。


「可愛い子十人!」


即答だった。全員笑う。


「それはもう達成したでしょ」

フィアナが言う。


「あ」


間抜けな声だった。今気付いたらしい。


「本当だ」


達成していた。


---


しばらく考える。珍しく。本当に珍しく。静かだった。


窓の外を見る。夕日が帝都を赤く染めている。みんなの笑い声が聞こえる。セリナがティアと話している。ルシェがユナへ何か説明している。カレンは紙に何かを書いている。エレノアは穏やかに微笑んでいる。フィアナは呆れた顔で笑っている。ミレーユはいつものようにため息をついている。ノアは、そんな光景を静かに眺めながら、小さく呟いた。


「賑やかだ」

「嫌?」

リリアが聞く。

「嫌じゃない」


短いやり取りだったが、ノアらしい答えだった。いつもの景色だった。


リリアは小さく呟く。


「強くなりたい」


静かになる。今度は、誰も笑わなかった。


セリナが少し驚いた顔をする。


「珍しいな」

「そう?」

「お前なら可愛い子百人とか言うと思った」


フィアナが言う。少しだけ笑いが起きる。リリアも笑った。


---


そして続ける。


「強くなりたい」


今度ははっきりと。


「みんなを守れるくらい」


談話室が静かになる。ルシェが目を丸くする。ユナも。カレンも。みんな聞いている。


リリアは少し考えながら続けた。


「弱いの嫌だから」


ぽつりと言う。


「友達が泣くのも嫌」


静かな声だった。


「怪我するのも」

「苦しそうなのも」

「いなくなるのも」


夕日が差し込む。誰も喋らない。リリアはみんなを見る。そして、笑った。いつもの笑顔で。


「だから守れるくらい強くなりたい」


短い言葉だった。だけど、それがリリアの本音だった。回復水を作る理由。危険な依頼へ行く理由。仲間を増やした理由。助けを求める人を放っておけない理由。全部そこに繋がっていた。


---


ミレーユは少し目を伏せ、そして笑った。


「リリアらしいわね」

「そう?」

「ええ」


セリナも頷く。


「良い夢だ」


ティアは腕を組む。


「守る奴がいるなら、今より更に強い武器を作る意味がある」

「おお」


リリアは感心した。


「格好いい」


ティアは少し照れた。


フィアナは苦笑する。


「国を救うとか言わないのね」

「大変そう」


即答だった。全員吹き出した。それもリリアだった。


ルナだけは静かに見ている。神様とは思えないくらい穏やかな顔だった。そして、優しく笑う。


「きっと叶うよ」


神様らしい言葉だった。珍しく。リリアは頷く。


「うん」


---


迷いはなかった。夢は達成した。可愛い子十人も集まった。でも、終わりじゃない。もっと強くなる。もっと助ける。もっと笑う。みんなと一緒に。そのために、リリアは前を向く。夕日が十人を照らしていた。


こうして仲間は揃った。夢も見つけた。


そして、まだ誰も知らない大きな出来事。それでも、リリアは笑う。仲間と一緒なら、きっと大丈夫だと思えた。

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