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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第49話 「カレンの研究」

十三歳の誕生日を終えてから、しばらく経った。そろそろ、また一つ歳を重ねる季節が近付いている頃だった。帝都冒険者育成学校、放課後。


「暇ね」

ミレーユが言った。

「暇だな」


セリナも頷く。


「暇ですわ」


エレノアも同意した。最近は平和だった。被害者の会も平和。封印も静か。ルナも静か。珍しかった。


---


その時だった。ばぁん! 談話室の扉が勢いよく開く。全員が振り返る。知らない少女が立っていた。白い髪。青い瞳。眼鏡。そして、大量の紙を抱えていた。


「見つけました!」


大声だった。全員が固まる。


「誰?」

リリアが聞く。


少女は真っ直ぐリリアを見る。


「あなたです!」

「私」

「あなたです!」


二回目だった。勢いが凄い。


ミレーユが立ち上がる。


「落ち着いて」

「落ち着いています!」


全然そう見えなかった。


---


少女は机に紙を広げる。大量だった。数十枚。いや、百枚近い。


「まずはこちらを見てください!」


誰も見たくなかった。何となく。


「何?」

リリアが聞く。


少女の目が輝く。待ってましたと言わんばかりだった。


「回復水です!」


静かになる。


「回復水?」

「そうです!」


少女は頷いた。


「あなたの回復水です!」


とても興奮している。


「分析しました!」


紙をめくる。


「成分調査しました!」


さらにめくる。


「再現しようとしました!」


さらにめくる。


「失敗しました!」


堂々としていた。失敗したのに。


「おお」


リリアが感心する。感心するところだろうか。ミレーユは頭を抱えた。


---


その時、フィアナが聞く。


「名前は?」


少女が固まる。数秒。そして、


「カレン・ホワイトです」


忘れていたらしい。自己紹介を。


「理論魔法学科です!」


やはり勢いが凄い。カレンは深呼吸し、そして、リリアを見る。真剣だった。


「質問があります」

「なに?」

「回復水はなぜ作れるんですか?」


リリアは考える。五秒、十秒、十五秒。そして、


「分からない」


カレンが固まった。


「え?」

「分からない」


二回目だった。


「でも作れる」


カレンはさらに固まる。まるで石像だった。


「理論は?」

「知らない」

「原理は?」

「知らない」

「魔力操作は?」

「知らない」

「そんな馬鹿な!」


悲鳴だった。研究者の悲鳴を、初めて聞いた。


ルナが吹き出す。


「あはは!」


面白かったらしい。


---


その後、カレンは居座った。当然のように。


「帰らないの?」

ルシェが聞く。

「帰ります」


帰る気はあるらしい。しかし三時間後、まだいた。


「帰らないの?」


今度はフィアナ。


「もう少しです」


三時間前も聞いた。同じ答えだった。


机の上には、回復水、紙、計算式、何か分からない図。カレンは幸せそうだった。


「研究好きなんだな」

セリナが言う。

「大好きです!」


即答だった。迷いゼロ。


---


エレノアが少し笑う。


「夢はありますの?」


カレンが顔を上げる。そして、真っ直ぐ答えた。


「世界の仕組みを知ることです」


静かになる。


「全部?」

ティアが聞く。

「全部です!」


かなり本気だった。


「今日、ノアがいれば喜んで聞いてたかもしれませんわね」

エレノアが言う。

「森のこと、詳しいから」

「今日は実習で外です」

ミレーユが補足した。


---


夕方近くになっても、カレンの熱意は衰えなかった。紙の山はさらに増え、机の上は計算式と図で埋め尽くされている。


「そろそろ、私たちも夕食の時間なんだけど」

ミレーユが遠慮がちに切り出す。

「あ、すみません、つい」


カレンは慌てて紙をまとめ始めた。


「また来てもいいですか?」

「もちろん」

リリアが即答する。

「本当ですか!?」


カレンの目が輝いた。


「また色々聞かせてください!」

「うん」


紙束を抱えたまま、カレンは何度も頭を下げながら談話室を出ていった。


「元気な子ね」

フィアナが笑う。

「悪い子じゃなさそうだ」

セリナも頷いた。


「絶対、また来ますよ、あの子」

ルシェが言う。

「そう思う?」

「研究、あんなに楽しそうだったので」


リリアも頷いた。


「また会える?」

「たぶん、すぐに」


その日、理論派魔法使いカレン・ホワイトは、大量の紙と、賑やかな出会いの余韻だけを残して去っていった。その足取りは、来た時よりも、いくらか軽そうだった。

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