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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第41話 「それぞれの夢」

季節はもう二度巡っていた。あの遺跡での事件から、そして夜型の一件から、随分と時間が経っている。リリアたちも、少しずつ大人びてきていた。もっとも、中身はあまり変わっていなかったが。


女子寮の談話室。珍しく静かだった。


依頼もない。授業も終わった。夜型の実験もない。研究者も来ない。平和だった。


「暇ね」

ミレーユが言う。

「暇だな」

セリナも頷く。

「暇ですわね」


エレノアも紅茶を飲みながら言った。本当に暇だった。


「暇」

リリアも言う。


全員が見る。


「依頼でも行く?」

フィアナが聞く。

「面倒」

「暇なんでしょ?」

「うん」


意味が分からなかった。


---


その時、ベッドに寝転がっていたルナが言う。


「じゃあ夢の話しよう」

「夢?」


ルシェが首を傾げた。


「うん」


ルナは天井を見たまま続ける。


「みんな将来やりたいことあるでしょ?」


静かになる。改めて聞かれると少し恥ずかしい。


「あ、ティアは今日も工房ですわね」

エレノアが辺りを見回して言う。

「呼んでおけばよかったです」

ルシェが少し残念そうに言った。


「じゃあティアの分は今度、直接聞きに行きましょう」

ミレーユがそう言うと、全員が頷いた。


---


最初に答えたのはセリナだった。


「私は強くなる」


即答だった。


「どのくらい?」

リリアが聞く。

「誰にも負けないくらい」


迷いはなかった。セリナらしかった。フィアナが笑う。


「本当に剣しかないのね」

「悪いか?」

「いいと思う」


少しだけ、嬉しそうだった。


---


次はエレノア。


「私は領地を発展させたいですわ」


優雅に答える。


「お嬢様っぽい」

ルシェが言う。

「お嬢様ですもの」


正論だった。誰も反論できない。


---


次はフィアナ。少し考える。珍しかった。


「私は」


静かになる。


「帝国と同盟国が仲良くなってほしいかな」


真面目な夢だった。フィアナらしかった。


「難しそう」

リリアが言う。

「そうね」


フィアナも苦笑する。でも、諦める気はないらしい。


---


次はルシェだった。


「私は大商人になります!」


立ち上がる。元気いっぱいだった。


「いっぱい稼ぎます!」

「おお」

リリアが感心する。

「いっぱいご飯食べられる?」

「食べられます!」

「いいね!」


話が噛み合っているようで、噛み合っていなかった。


---


その次、全員の視線がノアへ向く。ノアは少し考えた。かなり長い沈黙だった。


そして、「居場所」小さく答える。静かになる。


「自分の居場所が欲しい」


短い言葉だった。だが、とても重かった。ノアらしい願いだった。


---


その時、リリアが首を傾げる。


「あるよ?」


ノアが見る。みんなも見る。リリアは当然のように言った。


「ここ」


談話室を指差す。そして、


「みんな」


静かになる。ノアも固まる。ミレーユも。フィアナも。少しだけ驚いていた。リリアは本気だった。冗談ではない。


「だから大丈夫」


笑う。いつもの笑顔だった。しばらくして、ノアが小さく笑った。本当に小さく。珍しかった。


---


その空気を変えたのは、当然、リリアだった。


「次!」


元気だった。


「リリアは?」

ミレーユが聞く。


全員が見る。答えは知っている。ほぼ確実に。


リリアは立ち上がった。胸を張る。


「可愛い子十人!」


知っていた。全員。


「まだ言うのね」

フィアナが呆れる。

「大事」


即答だった。


「今何人?」

セリナが聞く。


リリアは数え始める。ミレーユ、セリナ、エレノア、ティア、フィアナ、ルシェ、ノア。そして、自分。指を折る。


「八人」


合っていた。珍しく。


「あと二人!」


元気だった。


ミレーユがため息をつく。


「ちゃんと数えられたのね」

「失礼」


リリアは不満そうだった。


---


その時、ルナが笑う。


「あはは」


静かな笑いだった。


「叶うといいね」


珍しく神様らしい言葉だった。


「叶うよ」


リリアが答える。即答だった。迷いはない。その真っ直ぐさに、誰も何も言えなかった。


---


夕日が窓から差し込む。帝都の空は赤かった。平和な時間だった。だが、世界は少しずつ動いている。封印。同盟国。そして、まだ出会っていない二人の仲間。未来にはきっと色々なことが待っている。


それでも、今はまだ夢を語る時間だった。


「あと二人!」

リリアがもう一度言う。


「だから先に依頼を頑張りなさい」

ミレーユが言った。

「両方頑張る」


欲張りだった。


そういえば、とミレーユが思い出したように言う。


「もうすぐ、セリナの誕生日じゃなかった?」

「ああ、そうだな」


セリナが頷く。


「今年で十三か」

「私も、もうすぐです」

エレノアも小さく手を挙げた。


「今年は何かやりますの?」

「やりましょうよ!」

ルシェが目を輝かせる。


「ティアの誕生日も、確かこの後だったはずです」


思いがけず、誕生日の話題で盛り上がり始める。こうして、それぞれの夢を胸に、十人への道は、少しずつ前へ進んでいくのだった。そして、これから続く小さなお祝いの日々も、また一つずつ、始まろうとしていた。

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