第40話 「大体リリアのせい」
夜型取得から一週間後。帝都冒険者育成学校、女子寮の談話室。今日も被害者の会が開かれていた。定例会議である。誰も望んでいないが。
会長。ミレーユ。
副会長。セリナ。
書記。フィアナ。
会計。ルシェ。
相談役。エレノア。
無言担当。ノア。
名誉会員(欠席がち)。ティア。
「ティアは?」
リリアが聞いた。
「工房の仕事があるからって。伝言だけ預かってる」
ミレーユが紙切れを見せる。そこには、雑な字で「無事を祈る」とだけ書かれていた。
「薄情」
「向こうも被害者だから、仕方ないでしょ」
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「なんでまだ続いてるの?」
リリアが聞いた。
「必要だからよ」
ミレーユが即答する。確かに必要だった。
「なんで?」
「分からないの?」
「うん」
本当に分からないらしい。全員が天を仰いだ。原因が原因を理解していない。かなりの重症だった。
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ミレーユは机の上の紙を指差した。そこには会議記録がある。
第一回。夜型阻止作戦。失敗。
第二回。説得会議。失敗。
第三回。夜型取得。失敗。
第四回。朝6時対策。失敗。
「全部失敗してる」
リリアが言った。
「誰のせいだと思う?」
セリナが聞く。リリアは少し考える。かなり真面目に。十分ほど、長い沈黙だった。
そして、「ルナ?」
「違う!」
全員の声が揃った。ルナは笑っていた。
「あははは!」
楽しそうだった。他人事だからである。実際他人事だった。神様だから。
「じゃあミレーユ?」
「何でよ!」
「会議してるし」
意味が分からなかった。フィアナが頭を抱える。
「本当に天然よね」
「褒め言葉?」
「違う!」
即答だった。
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その時、談話室の扉が開く。エリス教官だった。疲れた顔をしている。最近ずっとだった。少し可哀想だった。
「みんな揃ってるわね」
「どうしたんですか?」
エレノアが聞く。エリス教官は椅子へ座る。そして、深いため息をついた。
「隊長から伝言よ」
静かになる。帝国軍。つまり国家案件だった。最近多い。
「封印の調査が続いているわ」
空気が少し変わる。笑い話ではない。あの遺跡。ルナが目覚めた場所。そして、何かが目覚めようとしている場所。
「他の封印も?」
フィアナが聞く。
「反応が出てるらしいわ」
静かになる。リリアも珍しく真面目だった。ルナを見る。ルナも窓の外を見ていた。少しだけ。珍しく。神様らしい顔だった。
「面倒そう?」
リリアが聞く。
ルナは笑う。
「たぶん」
やっぱりだった。そこは変わらない。
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セリナが腕を組む。
「結局何が出てくるんだ」
「分からない」
ルナが答える。
「でも」
少しだけ、表情が真面目になる。
「強いと思う」
静かになる。今までで一番神様らしい答えだった。だからこそ、少し怖かった。
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その空気を壊したのは、当然、リリアだった。
ぐぅぅぅぅ。大きな音。お腹だった。全員が振り向く。
「お昼だ」
リリアが立ち上がる。
「さっき食べたでしょ!」
ミレーユが叫ぶ。
「三時間前」
「十分よ!」
「別腹」
「便利ね!」
フィアナが吹き出した。エレノアも笑う。ルシェも肩を震わせる。ノアも少しだけ笑った。セリナは呆れている。エリス教官まで苦笑していた。
ルナに至っては大爆笑だった。
「あははははは!」
神様らしからぬ笑い方だった。でも、少しだけ安心する。
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封印、謎の存在、国家規模の問題。考えることは沢山ある。それでも今はまだ、こうして笑っていられる。
ミレーユは思う。神器を押したのも。夜型を選んだのも。被害者の会ができた原因も。ほとんど全部、リリアだった。本当に。ほとんど全部。
「結論」
フィアナが言う。
「なに?」
リリアが聞く。
フィアナはみんなを見る。そして、言った。
「大体リリアのせいね」
静かになる。数秒後、
「そうね」
ミレーユ。
「そうだな」
セリナ。
「そうですわね」
エレノア。
「そうですね」
ルシェ。
ノアも頷く。満場一致だった。
「ひどい」
リリアだけ不満そうだった。
ルナは笑う。とても楽しそうに。
「うん」
そして、神様までもが頷いた。
「大体リリアのせい」
「ルナまで!?」
談話室に笑い声が響く。問題は何も解決していない。封印は残っている。神様は居候中である。夜型も消えない。それでも、リリアたちは前へ進む。仲間と一緒に。笑いながら。




