第4話 「初めての選択」
「レベル上がった!」
朝、校門前でリリアが叫んだ。
「おめでとう」
ミレーユが拍手する。
「レベル11!」
「早いね」
「すごい!」
「それはすごい」
実際すごかった。十歳でレベル11。クラスの中でもかなり早い成長だった。
リリアは満面の笑みである。
「私強い!」
「昨日も言ってたよね」
「今日は本当に強い!」
理屈は分からなかった。本人も。
「先生に言おう!」
リリアは走り出す。
「あ、待って!」
ミレーユも慌てて追いかけた。
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職員室。アリア先生が書類を整理していた。
「先生!」
「どうしたの?」
「レベル上がった!」
「へえ」
「11!」
アリア先生が固まった。
「レベル11?」
「うん!」
「本当に?」
「本当!」
元気だった。
「確認するから少し待ちなさい」
先生が能力確認用の水晶を取り出す。リリアが手を乗せる。水晶が淡く光った。
【Lv11】
表示される。間違いなかった。アリア先生が小さく息を吐く。
「ついに来たのね」
「なにが?」
リリアは首を傾げた。先生は少し笑う。
「最初の才能開花よ」
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静かになる。ミレーユも興味深そうに聞いている。
この世界では、レベル11に到達した者だけが経験する現象がある。それはユニークスキル。誰もが同じものを持つわけではない。戦士も、魔法使いも、商人も、農民も、人によって現れる力が違う。まさに個人だけの特別な能力だった。
「おお」
リリアは感心した。よく分かっていないけれど、なんだか凄そうだった。
その瞬間、リリアの目の前に光が現れる。文字が浮かんだ。
【ユニークスキル選定中】
「なんか出た」
「出るわよ」
アリア先生は平然としていた。初めて見るリリアだけが騒いでいる。
「ミレーユも出るの?」
「レベル11になったらね」
「おお」
リリアは少し羨ましそうだった。
数秒後、文字が切り替わる。
【取得スキル】
【直感】
静かになる。
「直感?」
リリアが読む。
「直感ね」
先生も読む。
「強い?」
「分からない」
即答だった。
「分からないの?」
「ユニークスキルだから」
正直だった。ユニークスキルは珍しい。能力がはっきり分かるものもあれば、使ってみるまで分からないものもある。
リリアはしばらく悩む。十秒、二十秒、三十秒。そして、
「便利そう!」
結論が出た。早かった。
「どうして?」
ミレーユが聞く。
「名前が便利そう」
「そんな理由?」
そんな理由だった。
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帰り道、リリアは上機嫌だった。
「私すごい」
「そうかもね」
「天才?」
「調子に乗るの早くない?」
ミレーユが笑う。リリアも笑った。
二人は市場通りを抜けていく。露店が並び、人が行き交う賑やかな道だった。その時、リリアの足がふと止まった。
「どうしたの?」
「なんか」
言葉にならない感覚だった。理由はない。ただ、右の路地が気になった。
「行ってみる」
「え、待って」
ミレーユが止める間もなく、リリアは路地へ入っていく。奥に小さな空き地があった。そこに、男の子がしゃがみ込んでいる。転んで、膝を擦りむいていた。声も出さず、じっと痛みを堪えていた。
「大丈夫?」
リリアが駆け寄る。男の子が驚いた顔で見上げた。
「見えない場所にいたのに、なんで来たの?」
「なんとなく」
自分でも説明できなかった。ミレーユが追いついて、その光景を見て少し考える。
「もしかして」
「なに?」
「さっきの、直感じゃない?」
リリアが目を丸くした。
「そうなの?」
「分からないけど。人が困ってるのを、なんとなく感じ取ったのかも」
先生の言葉を思い出す。使ってみるまで分からない能力。もしかしたら、もう使っていたのかもしれなかった。
「治れ」
ぽたり。水滴が落ちる。傷が少しだけ薄くなる。男の子が目を丸くした。
「すごい!」
「えへへ」
リリアが笑う。ミレーユはその様子を見ていた。さっきまで自分のレベルの話をしていたのに、困っている人を見ると、すぐ助けに行く。それを「直感」と呼ぶのだとしたら、リリアにはもとから備わっていたものなのかもしれない。そんな気がした。
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夜、食卓。父と母へ報告している。
「レベル11になった!」
「ほう」
父が頷く。
「ユニークスキルも貰った!」
「何だった?」
「直感!」
静かになる。父も母も考える。
「どんな能力だ?」
「分からない」
「そうか」
「でも、たぶん人助けに使える」
いつもと少し違う答えだった。父が少し驚いた顔をする。
「そう思うのか」
「今日、使った気がする」
「そうか」
父は微笑んだ。母も嬉しそうに笑う。
「おめでとう」
「うん!」
リリアは嬉しそうだった。まだ直感がどんな能力なのか、はっきりとは分からない。それでも、今日という日で、少しだけその輪郭が見えた気がした。
食後、部屋に戻る前、リリアはもう一度呟いた。
「可愛い子、増えるといいな」
結局、そちらも忘れていなかった。残念なクォーターエルフである。相変わらずだった。




