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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第1章 学園入学編

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第3話 「小さな水滴」

入学から一週間、リリアは元気だった。

非常に元気だった。

「ミレーユ!」

「なに?」

「友達!」

「知ってる」

毎日確認している。なぜか確認している。教室へ入り、いつもの席、いつもの隣、いつものミレーユを見つけると、リリアは満足そうに笑った。


「今日も可愛い」

「ありがとう」


最近は慣れ始めていた。

慣れてはいけない気もした。

その日の授業は魔法だった。生徒たちが訓練場へ集められる。担当教師はアリア、ランク3魔法の使い手である。


「今日は魔法適性を確認します」


生徒たちがざわついた。冒険者にとって魔法は重要だ。使える者、使えない者で、この先の人生が変わってくる。


「まずは水属性」


順番に前へ出る。水球を出す者、小さな流れを作る者、様々だった。ミレーユも成功する。小さな水球が浮かび、


「すごい!」


リリアが拍手すると、ミレーユは少し照れた。


「次、リリア・フォルネス」


呼ばれて、リリアが前へ出る。教師が頷いた。


「やってみて」

「うん」


両手を出し、集中する。そして——

ぽたっ。水滴。終了。


「……」

「……」

「……」


静かだった。一滴だった。本当に一滴だった。

リリアが教師を見る。


「終わった」

「そうね」


教師も困っていた。後ろから笑い声が聞こえる。


「水滴だって」

「雨の真似か?」

「すごーい」


全然すごくなかった。リリアは首をかしげる。


「成功したよ?」

「成功はしてるわ」


教師が答えた。難しい顔だった。

その時、後ろで小さな悲鳴が上がった。


「いたっ!」


転んだ生徒がいた。手のひらを擦りむいている。小さな傷だ、大したことはない、そのはずだった。リリアが近付く。


「大丈夫?」

「う、うん」

「治るよ」


ぽたっ。

水滴を落とす。数秒、誰も口を開かなかった。傷を見ている生徒も、周りで見ていた生徒も、教師でさえも、何かを待つように黙っていた。

そして、傷が薄くなった。


「えっ?」


生徒が固まる。教師も固まる。周囲も固まる。リリアだけが、いつも通りだった。


「ほら」

「え?」

「治った」

「え?」

「だから治った」


説明になっていなかった。教師が駆け寄る。


「もう一回」

「うん」


ぽたっ。また傷が薄くなる。

「……」

教師は黙ったまま、三回、四回、五回と確かめさせた。傷は、完全に治っていた。

周囲がざわつく。


「治癒魔法?」

「でも水だぞ?」

「回復したよな?」


生徒たちが騒ぎ始める中、ミレーユも驚いていた。


「リリア」

「なに?」

「それすごいんじゃない?」

「そう?」

「そうだと思う」


本人だけピンと来ていなかった。

その日の放課後、教師室でアリア先生は頭を抱えていた。


「治癒付き水属性……?」


聞いたことがない。前例もない。そこへリリアが顔を出す。


「先生ー」

「どうしたの!?」

「帰る」

「そう」


普通だった。


「あと質問」

「なに?」

「肩こり治せる?」

「まず怪我を治しなさい」


用途がおかしかった。

帰り道、リリアは上機嫌だった。


「お腹空いた」

「今日の感想それ?」


ミレーユが呆れる。


「魔法すごかったよ」

「そうかな」

「絶対そう」

「じゃあ肩こりも」

「肩こりから離れて」


真面目な話にならないまま、夕暮れ、二人は校門で別れる。


「また明日」

「うん」

「可愛いね」

「それもまた明日でいいから」


ミレーユは笑った。


その頃、学校の教師室では。


「報告書を書くべきか」

「書いた方がいい」

「帝国に?」

「帝国に」


重要な話し合いが、静かに行われていた。

リリアはまだ知らない。自分の水魔法が、帝国中を騒がせる種になることを。本人の関心は、晩ご飯がシチューかどうかだった。

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