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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第1章 学園入学編

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第2話 「可愛い子1人目」

「行ってきます!」


朝。リリアは勢いよく家を飛び出した。今日は冒険者見習い学校の入学式である。


「走るな!」


後ろから父の声が飛んでくる。


「遅刻する!」

「まだ一時間早い!」

「じゃあ余裕!」


意味が分からなかった。


村の道を全力で走る。朝日が眩しい。風が気持ち良い。リリアは笑った。学校。友達。新しい生活。知らないことばかりだった。少しだけ楽しみだった。


そして、


「可愛い子いるかな」


やっぱりそこだった。


---


学校は村の中心部に建てられていた。石造りの立派な校舎。広い訓練場。大勢の子供達。リリアは校門の前で固まった。


「多い……」


想像以上だった。何十人もいる。みんな制服を着ている。緊張している子もいる。親と一緒に来ている子もいる。リリアだけ一人だった。正確には、父の付き添いが断られた。主に顔が怖いからである。


---


教室へ入る。席表を見る。窓際。


「いい席!」


荷物を置く。椅子へ座る。そこで気付いた。隣の席、女の子だった。栗色の髪。優しそうな緑色の瞳。制服もきちんと着ている。真面目そう。そして、可愛い。かなり可愛い。リリア基準である。その時点で信用してはいけない。


少女が軽く頭を下げた。


「はじめまして」


声まで可愛かった。リリアの目が輝く。


「はじめまして!」

「ミレーユ・アスターです」

「リリア・フォルネス!」


元気よく答える。ミレーユは少し安心したようだった。話しやすそうな相手。そう思ったらしい。残念である。


---


「よろしくね」

「うん!」

「リリアさんはどこから来たの?」

「村!」

「そうなんだ」

「ミレーユは?」

「向こうの街から」


普通の会話だった。ここまでは。


リリアはじっとミレーユを見る。ミレーユが少し困った顔をする。


「あの……?」

「可愛いね」

「えっ」

「すごく可愛い」

「えっ?」

「友達になろう」

「話が早い!?」


初対面だった。まだ一分も経っていない。


---


ミレーユは慌てる。


「えっと、その……」

「嫌?」


少し不安そうな顔。意外だった。ミレーユは思わず笑う。


「嫌じゃないよ」


リリアの表情が明るくなる。


「やった」


本当に嬉しそうだった。その顔を見て、ミレーユも少し笑う。


---


教師が教室へ入ってくる。全員が席へ着く。入学式が始まった。教師は将来の話をした。冒険者の話。魔法の話。努力の話。みんな真面目に聞いている。一人だけ違った。


リリアは紙に何か書いていた。ミレーユが覗く。そこには大きく書かれていた。


【可愛い子リスト】


「何してるの!?」


思わず声が出た。教師が止まる。教室が静まる。全員がこちらを見る。ミレーユが固まった。


リリアは普通に答える。


「可愛い子を探してる」

「今じゃないよね!?」

「大事だよ?」

「大事じゃない!」


初日だった。すでに疲れていた。


教師は咳払いをする。


「続けるぞ」


授業は再開された。ミレーユは机に突っ伏した。リリアは慰める。


「大丈夫」

「何が?」

「ミレーユは一位だから」

「何の!?」


---


昼休み、二人は一緒に昼食を食べていた。当然のように隣だった。もう友達扱いである。


「お弁当美味しそう」

「ありがとう」

「交換する?」

「少しだけね」


ミレーユは苦笑する。優しい。リリアは思った。優しい。可愛い。優しい。可愛い。重要なので二回思った。


---


放課後、校門の前。夕日が差し込んでいる。リリアが言った。


「ミレーユ」

「なに?」

「友達一人できた」


ミレーユは笑う。


「そうだね」


リリアも笑った。少しだけ考える。十人いたら楽しそうだ。みんなでご飯を食べて。みんなで笑って。困った時は助け合う。そんな感じ。なんとなくだけれど。悪くないと思った。


「目標まであと九人」

「目標?」

「可愛い子十人」

「何それ」


ミレーユは笑った。呆れながら。でも少し楽しそうに。


---


この日、リリア・フォルネスは最初の友達と出会った。後に最も長い付き合いになる少女。そしてミレーユ・アスターはまだ知らない。自分がこれから何年も、この残念なクォーターエルフに振り回され続けることを。


もちろんリリアも知らなかった。ただ一つだけ確かなことがある。可愛い子一人目は、無事に見つかったのである。

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