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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第35話 「神様の居候生活」

翌朝、帝都冒険者育成学校、女子寮の一室。静かな朝だった。


本来なら。


「おはよう!」


元気な声が響く。続いて、どんっ。何かが落ちた音。さらに、がしゃん。何かが倒れた音。最後に、


「痛い!」


知らない悲鳴。


---


ミレーユが目を開けた。天井が見える。見慣れた天井だった。問題はそこではない。


「何してるの?」


起き上がる。視線の先、ルナが床に転がっていた。毛布に器用に巻き付かれている。


「起きた」

「見れば分かる」


ミレーユはため息をついた。そうだった。今この部屋には、神様がいる。昨日から。嫌でも思い出した。


「リリア起きて」

「むぅ……」


ベッドを見る。まだ寝ていた。平和そのものだった。


「朝よ」

「あと五分」


いつもの返事だった。ルナが興味深そうに見ている。


「人間って朝弱いの?」

「リリアだけよ、たぶん」


そう言いながらも、ミレーユは自信なさそうだった。


---


食堂。朝食の時間。今日はいつも以上に視線を感じた。当然だった。見知らぬ美少女がいる。しかも制服ではない。しかも教師でもない。


ルナは平然としていた。


「これ美味しい」


パンを食べている。


「それも美味しい」


スープも飲む。


「これも」


デザートも食べる。かなりの量だった。


「神様ってそんなに食べるの?」

フィアナが聞く。

「久しぶりだから」


ルナが答える。


「千年分」


誰も計算したくなかった。


ノアは黙ったままパンを食べていたが、小さく首を横に振っていた。


---


その時、食堂へエリス教官が入ってきた。疲れた顔だった。昨日よりも、少し疲れが濃くなっていた。


「みんな食べたら会議室へ」

「何かあったんですか?」

エレノアが聞く。


エリス教官は頷く。


「帝城から連絡が来たわ」


静かになる。帝城。つまり皇帝側である。国家案件だった。


---


会議室。そこには軍の隊長もいた。研究者たちもいる。昨日のメンバーだった。大きな地図が広げられている。帝国全域。その地図の五か所に印が付いていた。赤い印だった。


「封印地点です」


研究者が説明する。全員が前を見る。今回はリリアも、一応、聞いている。


「昨日の調査結果により」

「封印が五つ存在することが判明しました」


地図を指差す。帝都近郊。北方山岳地帯。西部平原。南部峡谷。そして東の海岸地帯。全部で五つ。帝国中に散らばっていた。


「広いね」

リリアが言う。

「そこじゃない」


ミレーユが言った。


---


研究者は続ける。


「問題は」


少し間を置く。


「他の封印も反応を始めていることです」


空気が重くなる。予想通りだった。最悪な意味で。


隊長が言う。


「現在、各地へ調査隊を派遣中だ」


帝国軍も本格的に動いているらしい。国家総動員だった。


---


ルナは地図を見ていた。真面目な顔だった。珍しい表情だった。


「思ったより早いなぁ」


ぽつりと呟く。全員が見る。


「何が?」

セリナが聞く。


ルナは少し考える。そして答えた。


「目覚めるの」


不吉な言い方だった。


「何が目覚めるんですか?」

ルシェが聞く。


ルナは首を振った。


「まだ分からない」


まただった。神様なのに知らない。いや、神様だから知らないのかもしれない。もはや誰も突っ込まない。


---


会議終了後、七人とルナは中庭へ移動する。さすがに少し疲れた。情報量が多い。帝国規模。神様。封印。神器。十一歳の子供には重い話だった。そのはずだった。


「お昼何かな」


リリアだけは通常運転だった。フィアナが笑う。


「本当に変わらないわね」

「大事」

「何が?」

「ご飯」


即答だった。


---


その時、ルナが突然立ち上がる。何か思いついた顔だった。嫌な予感しかしない。


「そうだ」


全員が警戒する。最近学習した。ルナの思いつきは危険信号である。


「お礼してなかった」


静かになる。


「お礼?」

ミレーユが聞く。

「うん」


ルナは笑顔だった。満面の笑みだった。


「起こしてくれたお礼」


リリアを指差す。そして、みんなも。


「だから祝福あげる!」


沈黙。風が吹く。鳥が鳴く。誰も喋らない。


---


最初に動いたのはルシェだった。


「祝福?」

「うん!」


ルナが頷く。とても楽しそうに。フィアナが嫌そうな顔をする。セリナも警戒している。ミレーユに至っては頭を抱えた。


「嫌な予感しかしないんだけど」

「大丈夫!」


全く安心できなかった。


---


ルナは両手を広げる。自信満々だった。


「明日やろう!」

「今日じゃないの?」

リリアが聞く。

「準備いる」


それだけ言う。そして、にやりと笑った。神様らしい、少し悪戯っぽい笑顔だった。


「きっと面白いよ」


その言葉に、全員が同じことを思った。絶対にろくでもない。間違いなく。


そして翌日、神様の祝福が、リリアたちの運命を大きく変えることになる。まだ誰も知らなかった。


---


その日の夕方、会議やら祝福の予告やらで慌ただしかった一日の締めくくりに、寮の食堂へ息を切らせて駆け込んできた者がいた。ルシェだった。


「聞いてください!」

「また?」


ミレーユが身構える。最近、この前置きの後に平穏な話が来たことがない。


「ティアさんたち、明後日には帝都に到着するそうです!」


その一言に、リリアが弾かれたように顔を上げた。


「ティア来る!?」

「はい! 師匠のドワーフさんと一緒に、荷物もまとめて出発したって、父から連絡が」


封印の話も、神様の祝福の話も、一瞬でどこかへ飛んでいったような顔だった。


「会える!」

「本当に、いつもそこだけは切り替え早いよね」


フィアナが呆れながらも、少し笑っていた。ノアも、まだ会ったことのない鍛冶師の名前に、興味深そうに耳を傾けている。


「ティアって、どんな人?」

「鍛冶師。すごい腕」

「あと可愛い」


いつもの評価だった。


「明後日か。楽しみが増えたわね」

ミレーユが言う。


帝国中を揺るがす大事件の真っただ中にいながら、リリアの頭の中は、封印のことよりも、明後日の再会のことでいっぱいだった。相変わらずだった。

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