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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第4章 神のイタズラ編

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第32話 「自称 神様」

眩しかった。ただ、白い光だけが広がっていた。


「うぅ……」


最初に声を出したのはルシェだった。次にミレーユ。フィアナ。エレノア。セリナ。ノア。順番に目を覚ます。リリアもゆっくり起き上がった。


「終わった?」

「何も終わってないと思う」


ミレーユが言う。全員同意だった。


---


辺りを見回す。遺跡。広間。銀色の小箱。そのままだった。だが、何かがおかしい。


「静かだな」

セリナが言った。


確かにそうだった。研究者たちが騒いでいない。軍人も動いていない。全員固まっている。まるで時間が止まったみたいだった。


「え?」


ルシェが近付く。研究者の前で手を振る。反応なし。完全に止まっていた。


「怖いです!」


心の底からの声だった。ノアも警戒するように、周囲の気配を探っていた。


「動いてるのは、私たちだけ」

「みたいだね」


---


その時、ぱちぱち。小さな拍手が聞こえた。全員が振り返る。そこに、少女がいた。知らない少女だった。銀色の髪。金色の瞳。年齢はリリアたちと同じくらい。真っ白な服。裸足。そして、圧倒的な存在感。誰も言葉が出ない。少女だけが楽しそうに笑っていた。


「はじめまして」


少女が言う。綺麗な声だった。


「そして久しぶり」


意味が分からなかった。


「誰?」

リリアが聞く。


少女は少し考える。そして答えた。


「神様」


静かになる。


「神様?」

「うん」

「本物?」

「たぶん」


その返事でいいのだろうか。本人が言うな。


---


フィアナが額を押さえる。エレノアも混乱している。ミレーユは完全に固まっていた。ルシェは現実逃避を始めていた。セリナとノアだけが、まだ冷静に距離を保っていた。


「証明できるか?」


セリナが言う。少女が笑う。


「できるよ」


ぱちん。指を鳴らす。次の瞬間、セリナの頭に花が咲いた。


「……」

「……」

「……」


本当に咲いた。綺麗な黄色い花だった。


「取れない」

セリナが言った。


取れなかった。根付いていた。なぜか。


リリアは大喜びだった。


「可愛い」

「嬉しくない」


即答だった。少女は楽しそうに笑う。


「信じた?」


全員少し信じてしまった。嫌でも。常識が通じなかった。


---


少女は広間を歩く。くるりと回る。機嫌が良さそうだった。


「退屈だったんだよね」


独り言のような声。


「ずっと寝てたから」


何年だろう。何十年だろう。誰にも分からない。


「君が起こしてくれた」


少女がリリアを見る。金色の瞳が細くなる。


「ありがとう」


リリアは少し照れた。


「どういたしまして?」


疑問形だった。


---


その後、少女はみんなの周りを歩く。ミレーユを見る。


「真面目」


ミレーユが固まる。フィアナを見る。


「負けず嫌い」


フィアナも固まる。エレノアを見る。


「努力家」


エレノアが少し驚く。ルシェを見る。


「働き者」


ルシェが照れる。セリナを見る。


「かっこいい」


セリナの頭の花が少し揺れた。ノアの前で足を止める。じっと見つめる。


「弓、うまいね」


短い一言だった。だが、ノアは驚いたように目を見開いた。


「見てたの?」

「見てたよ、ずっと」


その言葉の重みに、ノアは少し言葉を失った。祖父以外に、こんな風に技量を見られていたとは思っていなかった。


最後に、リリアを見る。しばらく見る。長かった。


「変」

「よく言われる」


即答だった。少女が吹き出す。楽しそうだった。本当に。


---


その時だった。広間が揺れる。一度。二度。三度。地震ではない。何か違う。


少女が首を傾げた。


「あ」


嫌な予感がした。全員が同じことを思った。


「あ、じゃない」

ミレーユが言う。


少女は笑顔だった。そして言った。


「ちょっと失敗した」


静かになる。非常に嫌な言葉だった。


「何を?」

セリナが聞く。

「封印」


少女が答える。軽かった。とても軽かった。言い方が。


「封印?」

「うん」

「この遺跡の?」

「そう」


さらに笑顔になる。


「たぶん半分くらい壊れた」


ルシェが座り込んだ。


「終わったぁ……」


気持ちは分かる。かなり。少女は全く気にしていなかった。むしろ、楽しそうだった。


「大丈夫大丈夫」

「大丈夫じゃなさそうなんだけど」


フィアナが言う。正論だった。


少女は少し考える。それから、満面の笑みで言った。


「まあ何とかなるよ!」


信用できなかった。誰一人。


---


しかし、その時すでに、遺跡の遥か地下では、長い眠りについていた何かが静かに目覚め始めていた。神様の言う「失敗」が、帝国中を巻き込む大事件の始まりになるとは、この時はまだ、誰も知らなかった。


そして、神を名乗る少女と、リリアの奇妙な縁が、ここから本格的に始まろうとしていた。


少女は笑う。とても無邪気に。そして一言。


「そうだ」


全員が嫌な予感を覚える。


「君たちの名前、もう一回教えて?」


どうやら、神様は、かなり自由な性格らしかった。

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