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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第3章 帝都成長編

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第26話 「若手交流大会、そして新しい制服」

帝都へ来て一か月。リリアたちは少しずつ帝都での生活に慣れていた。迷子を除いて。


「迷った」


朝だった。


「登校中よね?」

「うん」

「どうして?」

「帝都だから」


万能の言い訳だった。エリス教官は深いため息をつく。最近の日課だった。


---


「今日は若手交流大会です」


教室がざわつく。リリアも少し反応した。大会。故郷でも出たことがある。帝都へ来るきっかけにもなった。


「今回は帝都校だけではありません」


エリス教官が続ける。


「周辺都市の学校も参加します」


ざわつきが大きくなる。規模が違った。地方大会より遥かに大きい。観客も多い。関係者も多い。成績次第で将来が変わる者もいる。


「緊張する?」

ミレーユが聞いた。

「しない」


リリアは答える。少し考える。


「でも勝ちたい」


珍しく真面目だった。セリナが頷く。


「私もだ」


---


翌日、会場は巨大だった。円形の訓練場。観客席。貴族席。来賓席。人が多い。非常に多い。


「酔いそう」

リリアが言った。

「今さら?」


フィアナが呆れる。


---


開会式が始まる。帝都校。地方校。同盟国の学校。様々な生徒が集まっていた。その中には、明らかに強そうな者もいる。セリナが剣を握る。ミレーユも緊張している。エレノアは静かだった。リリアだけは、屋台を見ていた。


「終わったら食べたい」

「集中しなさい」


フィアナに怒られた。


---


最初の試合はセリナだった。相手は帝都南校の剣士。開始。剣がぶつかる。速い。かなり速い。観客も静かになる。だが、セリナの方が上だった。一瞬の隙。剣が相手の手を打つ。武器が落ちる。勝負あり。歓声が上がる。


「おお!」


リリアが立ち上がる。


「座って」


ミレーユが言った。


---


次はフィアナだった。魔法戦。風属性。相手も強い。接戦だった。だが、最後はフィアナが押し切った。勝利。


「やった!」


本人も嬉しそうだった。リリアも拍手する。


「友達すごい」

「友達なんだ」


フィアナが少し笑う。


---


そして午後、リリアの番が来た。会場中央へ向かう。相手は大柄な少年だった。剣士。見るからに強い。観客席もざわつく。


リリアは短剣を構える。ティアがくれた短剣だった。開始。少年が突っ込む。速い。力も強い。だが、リリアはさらに速かった。


進化した直感が、体を先に動かす。地面を蹴る。一気に間合いを詰める。観客席がどよめく。


「速い!」


誰かが叫んだ。少年も驚く。目で追えない。右、左、横、後ろ。翻弄される。


だが相手も優秀だった。慌てない。冷静に待つ。そして、大剣を振るう。広範囲攻撃。リリアは避ける。転んだ。まただった。避けたのか、転んだのか、本人も分からない。だが結果的には避けていた。


そして、相手の足元へ滑り込む。少年がバランスを崩す。その瞬間、短剣を首元へ向けた。終了。勝負あり。


静かになる。しばらく静かだった。その後、歓声が上がる。大きな歓声だった。リリアは驚く。こんなに大勢に見られる経験はない。少し照れた。少しだけ。


---


試合終了後、エリス教官が近付いてくる。


「よくやりました」

「勝った」

「勝ったわね」


リリアが笑う。純粋だった。嬉しそうだった。


大会は夕方まで続いた。結果、帝都校は好成績。セリナも、フィアナも、リリアも評価された。


そして、観客席の一角、大会を見つめる人物がいた。老紳士だった。高価な服。鋭い目。ただの観客には見えない。手元の資料を見る。


『リリア・フォルネス』

『特殊治癒水魔法』

『レベル21到達』


今日の試合内容も書き加える。静かに笑った。


「面白い」


小さな声だった。誰も聞いていない。もちろん、リリアも知らない。帝都へ来てから、自分を見ている人間が、少しずつ増え始めていることを。


---


大会の興奮も冷めやらぬまま、放課後。校門で待っていたのはエリス教官だった。いつもの淡々とした表情に戻っていた。


「リリア・フォルネス、皆さんに話があります」


リリアたちが揃うのを待ち、エリスは一通の書状を取り出した。


「先日の護衛依頼、複数回にわたる森林実習への協力。皆さんの行動を踏まえて、学校側に一つの申請が通りました」


「申請?」

「ノア、という名前に、心当たりがありますね」


その一言に、リリアの顔がぱっと明るくなった。


「まさか」

「特別推薦です。実技での貢献度、狩人としての技量、いずれも規定を満たしていると判断されました」


エリスは、手元の書状をリリアたちに見せる。そこには確かに、ノアの名前があった。


「これは、皆さんの評価が優秀だったから通った話ではありません。ノア自身の実力が認められた結果です。ただ」


一拍置いて、続ける。


「実習のたびに、きちんと連携し、成果を積み重ねてきた記録がなければ、そもそも検討の俎上にも載らなかったでしょう。誰か一人の手柄ではない、ということです」


珍しく、長い言葉だった。ミレーユが小さく頷く。


「エリス先生、それって間接的に褒めてます?」

「事実を述べています」


いつも通りの答え方だった。


---


数日後、校門前に、見慣れた銀色の髪があった。


「ノア!」


リリアが真っ先に駆け寄る。ノアは、いつもの森装束ではなく、真新しい帝都校の制服に袖を通していた。少し落ち着かない様子だった。


「変な感じ」

「似合ってる」

「そう?」


照れくさそうに視線を逸らす。だが、悪い気はしていないようだった。


「じいちゃんは?」

「集落のみんなが見てくれてる。心配ない、って」


短い言葉だったが、そこには安堵が滲んでいた。祖父を一人にせずに済んだこと、それでも自分の足で新しい場所へ踏み出せたこと。両方が、ノアの中で確かな形になっていた。


「これから、よろしく」


ノアが、珍しく自分から頭を下げる。全員が笑顔になった。


「よろしく」

「よろしくですわ」

「よろしくお願いします!」


ルシェも駆けつけ、輪に加わる。フィアナも、ミレーユも、セリナも、エレノアも、当たり前のようにノアを迎え入れていた。


こうして、森の射手ノアは、正式に帝都校の一員となった。もう、木の上から見下ろすだけの存在ではない。今日から、リリアたちと同じ地面を、同じ歩幅で歩いていくことになる。


本人は帰り道で、


「屋台行こう」


それしか考えていなかった。もちろん、その隣には、少し戸惑いながらもついてくるノアの姿があった。

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