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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第3章 帝都成長編

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第21話 「帝都、そして再会」

これまでのあらすじ


リリア・フォルネスは、可愛い女の子が大好きな少し変わった少女だった。冒険者育成学校へ入学した彼女は、常識人のミレーユ、努力家の剣士セリナ、貴族令嬢エレノアたちと出会い、多くの経験を積み重ねていく。やがて新人冒険者として依頼をこなしながら成長し、回復水を生み出す希少な才能でも注目を集めるようになった。


やがて新人大会が開催され、リリアたちは見事な活躍を見せる。その結果、リリア、ミレーユ、セリナ、エレノアの四人は帝都への推薦候補に選ばれた。帝都は多くの強者が集う帝国の中心地。新たな成長の舞台である。


一方で商人志望のルシェは推薦対象ではなかった。しかし彼女は「いつか商人として帝都へ行く」と夢を語り、リリアも「向こうで会えるね」と笑った。旅立ちの日、ルシェは四人を見送りながら「すぐに合流しますので!」と約束する。そしてリリアたちは故郷を後にし、帝都へ向かったのだった。

帝都は大きかった。本当に大きかった。


馬車の窓から巨大な城壁が見えた瞬間、リリアは思わず立ち上がった。


「大きい!」

「座って」


ミレーユが即座に肩を押さえる。


「でも大きい!」

「見れば分かる」


セリナも頷いていた。実際、故郷の街とは比べ物にならなかった。高い城壁、行き交う馬車、城門を通る大勢の人々。その全てが圧倒的だった。


挿絵(By みてみん)


「これが帝都ですわ」

エレノアが微笑む。

「大きい」

「知ってますわ」


本日三回目だった。


やがて馬車は帝都冒険者育成学校へ到着する。校舎もまた巨大だった。


「大きい」

「四回目」


ミレーユが数えていた。


「まだ四回しか言ってないんだ」

「それに驚いたわよ」


---


到着した推薦組は職員の案内で手続きを進める。身分確認、寮の登録、冒険者科の説明、授業内容の案内。かなり時間がかかった。


その一連の案内をしてくれたのが、帝都冒険者育成学校の教官、エリスだった。年齢は二十代半ばくらい、きっちりと結い上げた髪に、隙のない立ち姿。話し方も穏やかだが、どこか有無を言わせない響きがあった。


「本日から、皆さんの指導を担当します。エリスです」


四人が並んで頭を下げる。エリスは名簿に目を通しながら、一人ずつ名前を確認していく。


「セリナ・クレスト、エレノア・ローゼンベルク、ミレーユ・アスター」


淡々と読み上げていたが、最後の一人で、わずかに手が止まった。


「リリア・フォルネス」


顔を上げ、リリアをじっと見る。


「回復水の噂は、こちらにも届いています」


リリアは少し身構えた。


「褒めてる?」

「評価は、これから見せてもらいます」


きっぱりとした言い方だった。ミレーユが小声で耳打ちする。


「厳しそうな先生」

「厳しそう」


リリアも同意した。二人の意見が珍しく一致していた。


その間も、リリアは落ち着きなく、きょろきょろしている。


「迷子になりそう」

「まだ校舎の中だから大丈夫」

「外に出たら?」

「危ないわね」

「危ないですわね」

「危ないな」


三人とも即答だった。エリスはその様子を見て、小さくため息をついていた。前途を、少しだけ案じているようだった。


---


その日の午後、荷物を寮へ運び終えた四人は校内を見て回っていた。敷地だけでも広い。訓練場、図書館、食堂、商店。何でも揃っている。


「ここだけで生活できるね」

「できると思う」


セリナも頷いた。


その時だった。


「リリアさん!」


聞き覚えのある声が響いた。リリアが振り返る。誰だろう。少し考える。金色の髪、元気そうな笑顔、大きな荷物。見覚えはある。あるのだが。


「……ルシェ?」

「疑問形なんですか!?」


元気なツッコミが飛んできた。間違いなかった。ルシェだった。


「本当に来た!」

「約束しましたから!」


ルシェは胸を張る。ミレーユが呆れる。


「むしろ来ないと思ってたの?」

「ちょっと」

「思ってたんですね!?」


ルシェがショックを受けていた。


---


改めて全員が集まる。エレノアが尋ねる。


「どうやって来られたのです?」

「商人科です!」


ルシェは満面の笑みだった。


「実は新人大会の少し前から、商人科の入学試験を受けてたんです」


その言葉に、リリアが目を丸くする。


「先に受けてたの?」

「はい。結果待ちだったので黙ってました」


実のところ、試験の準備は簡単なものではなかった。帝都商人科は狭き門で、実技だけでなく筆記試験もある。値付けの理論、輸送コストの計算、他国との取引に関する基礎知識。あの日、食堂で数字だらけの紙を広げていたのは、依頼の相談だけではなかった。裏では、これらの勉強も並行して進めていたのだった。


「昨日、合格通知が届いたんです!」


そう言って一枚の書類を見せた。確かに合格証明だった。


ルシェは少し照れながら続ける。


「推薦ではありませんけど」

「凄いじゃない」


ミレーユが言う。セリナも頷いた。


「努力した結果だな」

「ありがとうございます!」


嬉しそうだった。故郷で商売の勉強を続けながら、空いた時間に試験勉強も続けていたらしい。父の店を手伝う昼間、そして夜は帳簿と参考書を並べて机に向かう日々。誰かに褒められるためではなく、ただ自分の夢のために積み重ねてきた時間だった。帝都で商人になる。その夢へ向かう、確かな第一歩だった。


「今日着いたの?」

リリアが尋ねる。

「朝です!」

「早い」

「急ぎましたから!」


どうやら合格通知を受け取った翌日には、もう荷物をまとめて出発したらしい。長い道のりを、ほとんど休まずに駆け抜けてきたという。本当に、すぐに追いかけてきたことになる。


リリアは少し感心した。


「行動力ある」

「リリアさんには言われたくありません!」


それもそうだった。


「商人科って、どんなことするの?」

「取引の実習とか、値付けの授業とか、あとは実際に露店を出す実技もあるんです」


ルシェの声には、隠しきれない高揚感があった。


「帝都には、いろんな国の商品が集まってくるんです。今までとは、規模がまるで違う」

「難しそう」

「難しいです。でも、だからこそやりがいがあります」


その目は、以前、木彫りの小鳥を売った日と同じ輝きをしていた。地味だと笑われた夢が、今、確かな一歩を踏み出していた。


ルシェの寮も同じ学園区内にあるらしい。完全に別れるわけではない。むしろ以前より会いやすいくらいだった。


「よかった」

リリアが笑う。

「何がです?」

「友達がいた」


その言葉にルシェも笑った。


「最初からいましたよ」

「そうだった」

「忘れてました?」

「少し」

「忘れてましたね!?」


また叫ばれた。ミレーユが深く頷く。


「忘れてたわね」

「忘れてたな」

「忘れてましたわね」


全員一致だった。


---


夕暮れ、五人は並んで校舎の外へ出た。帝都の街並みが赤く染まっている。遠くには王城、賑やかな大通り。冒険者たち、商人たち。故郷では見られない光景ばかりだった。


「帝都だぁ」


リリアがしみじみ呟く。


「今さら?」

「実感した」

「遅いです」


リリアは街を眺めながら思う。ここには強い人がいる。凄い人もいる。まだ出会っていない仲間もいるだろう。知らないこともたくさんある。厳しそうな教官もいる。でも、不思議と不安はなかった。隣には仲間がいるからだ。


「楽しみ」


いつもの言葉だった。ミレーユも笑う。


「そういうと思った」


セリナ、エレノア、ルシェも頷く。


こうして五人の帝都での生活が始まった。それぞれが選んだ道を、それぞれのやり方で歩き出す。まだ誰も知らない日々が、目の前に広がっていた。

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