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可愛い子を十人集めたいだけだったのに、なぜか帝国を救うことになりました  作者: ごまだんご
第2章 新人冒険者編

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第20話 「旅立ちの朝」

旅立ちの日は快晴だった。雲一つない青空。窓から見える朝日が眩しい。リリアは珍しく早起きしていた。いや、正確には、興奮して眠れなかった。


「起きてる?」

母が部屋を覗く。

「起きてる」

「珍しいわね」

「失礼だなぁ」


いつもの返事だった。それでも少しだけ緊張していた。今日は帝都へ向かう日。十一年間過ごした故郷を離れる日。いよいよその時が来た。


---


荷物は昨夜のうちにまとめてある。服。生活用品。ティアが仕立ててくれた短剣。そして、ミレーユから以前貰った栞。大切な物ばかりだった。


階段を降りる。朝食の香りがする。父も母もすでに席についていた。最後の朝食だった。少なくとも当分の間は。


「いただきます」


いつも通り食べる。シチューだった。リリアの好物だった。母は分かっていたらしい。


「美味しい?」

「うん」

「それは良かった」


母が微笑む。父は黙って食べている。珍しかった。いつもなら何か言う。だが今日は静かだった。


---


朝食が終わる。そのまま三人で玄関へ向かう。外はもう明るい。空気も暖かい。


父が言う。

「帝都は広い」

「うん」

「変な奴も多い」

「私より?」

「たぶん少ない」


母が吹き出した。リリアも笑う。少しだけ緊張が和らぐ。


父は続ける。

「困ったら頼れ」

「うん」

「無理はするな」

「たぶんする」

「だろうな」


父はため息をつく。よく分かっていた。娘のことを。


母がお守りを差し出す。


「これ持っていきなさい」


小さな袋だった。昔、母が冒険者だった頃に使っていた物らしい。


「ありがとう」

「帰ってくる場所はあるからね」


優しい声だった。リリアは頷く。


「うん」


それ以上言葉は出なかった。


---


村の入口へ向かう。そこにはすでに大勢の人が集まっていた。診療所の先生。薬草畑のおじさん。市場のおばさん。近所の子供たち。見知った顔ばかりだった。


「帝都でも頑張れ!」

「また帰って来い!」

「有名人になるなよ!」


好き放題言っている。リリアは少し困った。こんなに集まるとは思わなかった。


---


その時だった。


「リリア!」


聞き慣れた声。振り返る。ミレーユだった。荷物を背負っている。その隣にはセリナ。同じく大きな荷物。エレノアも、いつもより控えめな旅装だった。三人とも、これから同じ馬車に乗り込む身支度だった。


「間に合いました!」


ルシェが走ってくる。息を切らせている。荷物は持っていない。今日はここまでの見送りだけだった。


全員揃う。自然と笑顔になる。


「友達」

リリアが言う。

「知ってる」


ミレーユが即答する。最近の定番だった。


「わたくしたち、これから一緒ですわね」

エレノアが言う。

「一緒だ」


セリナも頷く。


「ルシェは?」

リリアが聞く。

「今日はここまでです。でも」


ルシェは拳を握った。


「すぐに合流しますので!約束、忘れないでください」

「忘れない」


即答だった。ルシェは嬉しそうに笑った。


---


馬車が到着する。帝都行き。見たこともないほど立派だった。


「大きい」

リリアが呟く。

「帝都はもっと大きいよ」


ミレーユが笑う。少しだけ楽しみになった。


セリナ、エレノア、ミレーユが先に乗り込む。リリアも続く。窓際の席に座り、外を見た。父。母。ルシェ。村のみんな。見送りの顔が並んでいる。手を振っている。リリアも振り返す。


「行ってきます!」


大きな声だった。


---


馬車がゆっくり動き出す。少しずつ、故郷が遠ざかる。家が小さくなる。村が小さくなる。見慣れた景色が後ろへ流れていく。少しだけ寂しい。でも、それ以上に楽しみだった。


しばらく誰も話さない。車輪の音だけが響く。座席には、リリア、ミレーユ、セリナ、エレノアの四人が並んでいた。


やがてミレーユが聞く。

「緊張してる?」

「少し」


正直に答えた。ミレーユは少し驚いた。


「珍しいね」

「私だって緊張する」

「そうなんだ」

「帝都だし」


それは本音だった。強い人もいるだろう。凄い魔法使いもいるだろう。知らないことだらけだ。少し怖い。


---


でもその時、リリアが笑う。


「でも楽しみ」


やっぱりそうだった。ミレーユも笑う。


「私も」


セリナも頷く。エレノアも微笑む。みんな同じだった。不安もある。でも前を向いている。それで十分だった。


---


馬車は進む。新しい出会いへ。新しい冒険へ。新しい仲間へ。そして、帝都へ。


リリア・フォルネスたちの物語は、ここからさらに大きく動き始める。まだ誰も知らない。帝国を救う少女たちの旅が、今、始まったばかりだということを。

20話、いかがだったでしょうか。故郷を出る朝の何気ないやり取りの中に、家族の不器用な優しさが滲んでいたらいいなと思いながら書きました。友達と一緒に新しい場所へ向かえる、そんな安心感もリリアの強さの一つかもしれません。

気に入っていただけましたら、ブックマークをいただけると励みになります。次章は帝都成長編に入ります、よろしければ引き続きお付き合いください!

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